誰かが損するね | |
2022年1月25日 ウェッポンマスタリー先生「正しさだけでは人の世は埋まらない」 |
(ウェッポンマスタリー先生は・・・) | |
(メス=ドレイと書かれた墓石の前で考える) |
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14の私に敗れた父はこう言った。 | |
お前はこの世で最も強いから 弱いモノを守れと |
最も正しい言葉・・・ だが正しさだけでは人の世は埋まらない。 正しくとも、帳尻が合わなければ反(かえ)って多くの人間が不幸になる。 |
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それでも、それでもだ! | |
風は強く、引き裂くような冷たい風が吹き荒れていた。 |
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ん? どうしたんですかマスター? |
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急に黙って。 |
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ああ、すまんすまん。 じゃあ続きをはじめようか。 |
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ここは平原。 パーティは三つ編みちゃんを尋問していた。 「三つ編みちゃん」 「現在位置」 |
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まぁ、メス=ドレイの話は分かったが・・・ けっきょく三つ編みちゃんがどんなポジションのキャラか分からねーんだよな。 |
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まずは三つ編みちゃんに 全裸のワンワンプレイをしてメンタル拷問してみるか。 |
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悪意しかない! |
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つか三つ編みちゃんって元農奴で、農兵団が嫌いなキャラなんじゃないのー? | |
たぶんあんまり重要キャラじゃないと思うよー。 |
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(鋭すぎる) |
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そんな時だった。 | |
オニヤンマの羽音を100倍ぐらいにしたような、聞き慣れた羽音が近づいてきた。 ─=≡Σ((⊂ ≧ω≦)⊃ ブブブ! ドラゴンフライの羽音! ドラゴンフライの声! |
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メスッチちてーへんだー! てーへんだー! ⊂( >△< )⊃ |
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1匹のドラゴンフライが矢のような速度でメスの尾骨に直撃する! |
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ゲハン! ☆⌒v⌒ミヽ(。◇゚)ノ ゴロゴロ! |
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(o_□_)o チーン! |
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超てーへんだー! 農兵団が城に攻めてきおったぞー! |
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なのん! |
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ああ、敵のリーダーはウエッポンマスタリー先生ですかねぇー? |
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もうドンパチやってる? |
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イヤ、まだ睨(にら)みあってるだけだ。 ⊂(#`-_ゝ-)⊃ |
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農兵団はメスっちを出せの一点バリよぉ。 |
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農兵団の目的はなんだよ? |
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情報不足すぎて分かんねーなー? ⊂(●´^`●) ⊃ |
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とにかく城に戻った方がいいと思うぞ。 |
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では馬に乗って戻るの! |
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ぶひひーーーん! |
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ではパーティは馬に飛び乗り むっちゃ早い速度で平原を走ります。 |
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はいやーはいやー(棒ゼリフ) | |
パーティを乗せた馬は落ち葉を踏み散らかしながら、風のように走るっ! ・・・・ ・・ |
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でもって、3日後。 パーティはメスッチ城に帰還します。 |
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移動処理はやーい。 |
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あと時間が経過したから食料も減らすんだぞ! マスターが忘れてても自主的にやるように! |
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「現在位置」 |
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食料ないでしゅ。 | |
ゆえにセールちゃんとカキリンが道中でクリエイトフードの魔法を使った事にするよ。 (↑口頭だけの大雑把処理) |
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城はどんな感じになってるわけ? |
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城の南では農民兵500人と見慣れないモンスターが40体います。 | |
かなり殺伐とした雰囲気ですね。 敵から離れてても肌がゾワっとします。 |
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見慣れないモンスターってナニ? | |
ウッド・ジャガーノート。 | |
モンスターマニュアルにのってるモンスターで、木の小屋にローラーと羊頭の飾りがついた謎モンスターですぞ。 「ウッド・ジャガーノート」 |
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わお! ルール見たけど、色々イタズラができそうなモンスターだね! |
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1匹欲しいかも! |
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あんましルールブックで確認されるとネタばれになるから程々にしよーぜー。 |
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とにかく向こうはメスに会いたがってるんですよね? |
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ウン! コ穴に入らずんば虎児を得ず! |
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罠の可能性があるけどサクッと行ってみるよ。 ヤバかったらクラウドキルを全ブッパしながら離脱するからね! |
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では、メス達は馬を走らせ、城の南に移動します。 |
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メスだ! Σ( ̄Д ̄;) |
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チビッコ領主のメスが来たぞぉ! Σ( ̄Д ̄;) |
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農民兵が待ち構える敵陣・・・ | |
農民兵は全員ボロをまとっており、装備も農具だけだ。 彼らは1レベルの冒険者よりも弱いだろう。 |
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つまりクソ弱い軍隊だな。 | |
攻撃してきたらクラウドキルで殲滅(せんめつ)しまくってやるわ。 |
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(; ̄□)_/ジャキッ! |
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(; ̄□)_/ジャキッ! | |
農民達が農具の鋤(すき)を一斉に構えてメス達に切っ先を向ける。 構え方が素人臭く、腰も引けている。 |
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とにかく敵陣の中に入るわよ。 |
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では、敵陣の先端。 | |
そこでウェッポンマスタリー先生が椅子に座って待ち構えている。 威風堂々と座るしぐさは達人の振る舞い。 座ってるだけでも巨竜のような圧力があふれ出ていた。 「ウェッポンマスタリー先生」 「現在位置」 |
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はん、今回のボスキャラ登場か。 ヤベーのはこいつ一人だけなんだろーな。 |
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向こうは弱い元農奴の味方なんですよね? なんか倒したくないキャラですよぉ。 |
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でも、向こうが何考えてるかハッキリ分からない部分も多い。 | |
とにかく話しをしよう。 |
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だねぇ。 ウェッポンマスタリー先生の前まで移動して、馬から下りるよ。 |
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ズベッ(ノ_ _)ノ やぁ、ウェッポンマスタリー先生お久しぶりなの。 |
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ああ、久しいな。 メス=ブルーファントム。 |
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相変わらずルサンチマンがいっさいない幼子のようだ。 どれほど強ければそうなるのだ? |
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ルサチ○、チン・・・? |
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そういうとウェッポンマスタリー先生は手を軽くあげて部下に合図をする。 |
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≡3 サッ! | |
≡3 サッ! | |
合図を聞いた農民兵は場を離れ、場はパーティとウェッポンマスタリー先生だけになった。 「現在位置」 |
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これはサシで話すって事かな? |
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そうだ。 |
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あのさ。 いきなりでなんだけど |
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私達がメス=ドレイを殺したことを憎んでる? 「メス達はクラウドキルの魔法でメス=ドレイという元農奴を殺したの」 |
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もちろん憎んでいるとも。 本音を言うなら今すぐお前達を皆殺しにしたい。 |
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ウェッポンマスタリー先生の静かに怒っていた。 先生の全身から「人を切り裂きそうな鋭いオーラ」があふれてるようにも見える。 |
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こっわ! これだからガチローフルはイヤだわ! |
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ぶっちゃけウェッポンマスタリー先生とは戦いたくないんですけどねー! |
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そして切り替え。 | |
ウェッポンマスタリー先生が殺意を引っ込めて静かに語る。 |
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とはいえ、先に城を攻めたのは農兵団だ。 | |
大戦争女王の命令で城を奪い返したお前たちをどうこう言ってもしょうがあるまい。 |
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わお! 対応が大人! |
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つまり報復戦争はしないと? |
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そうだ。 報復よりも重要なのは |
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・・・・・・。 | |
この争いをどう終わらせるかだ。 | |
なるべく少ない被害で事を終わらせたい。 |
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ガーン! 今回のボスキャラは超常識人ですよー! |
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これはマジで戦いにくい! シネ=シネが敵なら今すぐ首チョッキンできるのに、この敵はツライ! |
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(-ω-)ノ☆ナンデヤネンッ! |
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ウェッポンマスタリー先生の目的は分かったわ。 | |
でも、その前に色々聞きたい事があるのよね。 そもそもメス=ドレイ達はなんで城を攻めたのよ? |
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農兵団の中にいる過激派がな | |
大戦争女王を追い出して 元農奴だけの国をつくろうとメス=ドレイ達ををそそのかしたのだ。 |
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つまり農民の独立戦争! |
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ああ、超過激派の一揆衆はそーいうこと考えやすーい。 | |
そういう輩は「一揆の中で一揆おこして」内ゲバ地獄をつくるー。 |
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ふん。 彼らはよく言っていたよ。 |
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僧からも・・・ 領主からも・・・ 資本主義者からも・・・ 共産主義者からも・・・ 搾取されない! 元農奴による元農奴の為だけの幸せな国をつくろうとな。 |
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おお! 悪くないと思いますよ! |
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目的は素晴らしいだろうさ。 | |
だ・が・な! 勝算がなさすぎる! |
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え? 奴隷さんが国をつくっても勝算ないかな? |
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うん。 リアルでおきた話だと |
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ハイチってとこで黒人奴隷が自力で独立国家を誕生させたー。 けど経済的に上手くいってなーい。 |
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まーた世知辛い話かよ。 やんなるな現実ってモンスターはよ。 |
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そして農兵団は運良く城は奪った。 | |
が! あとから城を奪い返しにきたお前たちにアッサリやられたわけだ。 「メスに城を奪い返された」 |
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私達が城を攻めた時にはお前はいなかったよな? |
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ああ、私は農兵団の城攻めに反対したからな。 |
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でも、いまは農兵団にいますよね? |
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お前達があまりに無惨に城の農兵団を殺したからな。 | |
敗残した農兵団は涙ながらに私にすがるしかなかった。 おかげで今の私は農兵団のリーダーだよ。 |
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そう、ご愁傷様。 状況は全部分かったわ。 |
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じゃあウェッポンマスタリー先生はどうしたいのかな? |
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この件を少しでも穏便に終わらせたい。 | |
もと農奴達の死者を少しでも少なくし 願わくば大戦争女王からの補助金をもらい農奴達に配りたい。 |
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おおおう。 政治っぽい話になってますねぇ。 |
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うん。 領主という時点で政治家。 |
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けっきょく政治的な判断が求められる。 |
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となると、まずは元農奴が喰ってける方法を考えないとなぁ。 | |
共食いさせたらどうだ? |
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イヤイヤ。 ここは簡単な作戦でどうにかなるよ。 |
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D&D農法で食料を増産すればいいよね♪ |
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D&D農法ってなんだよ? わりとマジで初耳だぞ。 |
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お♪ また作戦を思いついたか♪ |
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まぁ、作戦ってほどでもないけどね。 | |
えっと、、、育てる作物は何にしようかな? |
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サツマイモがいい。 | |
飢饉(ききん)と言えば、サツマイモ。 昔の忍者漫画も飢饉(ききん)の場面はサツマイモでノリきった。 |
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いいじゃないですか♪ 出口が見えてきましたよー♪ |
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そうか、やはりお前たちに話して良かった。 | |
だが、まぁ上手くはいかないだろうがな。 帳尻があわない。 |
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帳尻が? |
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あわない? |
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(そら、そうよ) | |
(この状況では誰かが損をするしかないのよね) (で、誰が損する役を引き受けるって話よ?) |
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とにかく行動行動。 まずは大戦争女王にお手紙を書こー。 |
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ほう? どんな内容の手紙にするんだ? |
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じゃー、こんな手紙はどうかな~? | |
↓こんな手紙↓ 大戦争女王さんへ 大戦争女王さんの農奴禁止令でさー 路頭に迷った農奴さんが反乱おこしたんだよねー だから元農奴さん達に追加の補助金くっださいなー♪ 後は私に任せれば全て解決するの♪ |
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おお♪ いいお手紙ですね♪ |
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これでみんな幸せに終わります。 |
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(みんな幸せねぇ) | |
そんなモノは実現不可能ってとっくの昔に答えが出てるんだけどね。 (それでも平気でその理想を言う人がいっぱいイルけどさ) |
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では、今回の会議は解散♪ | |
なんかナロウ系ファンタジーのクソ長い会議をやってる気分だったよ♪ |
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こういう会議って需要あるんだろうか? 私は年寄りすぎて分からない。 |
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(私は好き) |
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よし♪ このまま問題解決に向かって爆進しましょう♪ |
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まずは教会にいた性格の悪い大司教さんを拉致監禁するからね! | |
性格が悪くて使える人はバンバン使う! 手段は選ばないよ! 「↓この人を拉致監禁するの!」 |
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ちょっ! あんた何をするつもりなのよ! |
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セールちゃんやカキリンもフルタイムで使うから覚悟したほうがいいね♪ |
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なるほど。 メスの作戦はクレリックを使いまくる作戦。 |
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これは分かりやすい。 |
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だね♪ 優秀な人はいっぱい労働する運命なのーん♪ |
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それではレッツゴー! ヾ(>∇<*)oピョーン! それからメスは超真面目に領主の仕事をした。 食料を増やし・・・ 雇用を増やし・・・ 信頼度は上がらなくても、数字で成果が見えなくても働きまくった。 ここに来てメスはようやく領主らしくなる。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 「現在のメスッチ領」 それから1ヶ月後。 メス達は執務室にいた。 |
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うーっす。 | ̄△ ̄)ノ |Ю ガチャ! |
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そこに・・・ 相変わらず忠誠心0の兵士がノック無しで入る。 |
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なんですか? 大戦争女王の返事がようやく来たんですか? |
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あーそうなりますねぇ。 (´-ω-`;)ゞポリポリ |
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うむ。 読んでなの。 |
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OK 大戦争女王さまからの手紙を読み上げます。 |
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メス=ブルーファントムへ お主の提案の件じゃが ・・・・ ・・ |
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ド却下じゃな! |
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な!? | |
な!? | |
城を攻め落とした元農奴に支援金を渡したら、賠償金を渡したみたいに見られて民にナメられるわ。 | |
到底受け入れられるモノではない。 |
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まぁ、そうなるわね。 |
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そもそも私の農奴禁止令は、元農奴を死ぬほど優遇してやった政策なのだ。 | |
税を2年も免除し・・・ 支援金をだし・・・ 土地さえも無料で与えたのだ |
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でも上手くいかなくて路頭に迷う農奴もいたんだよ! |
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適者生存。 運者生存。 |
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へ? | |
(´・ω・`)どゆこと??? |
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ふん。 路頭に迷う農奴は自然に淘汰(とうた)されるだけよ。 |
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それもまた私の計画の1つでしかない。 |
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なんて無慈悲な! |
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いや、のんびり淘汰を待っていては足手まといが増えるだけか。 | |
ならば |
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足手まといになる前にデストロイ! | |
私が直々に元農奴どもを成敗してくれるわ! |
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な、な! 穏便に終わらせようとしたらデストロイ言われたの! |
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(ちょっと大戦争女王の気持ちが分かるわねぇ・・・私はそこまで過激じゃないけどさ) |
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(当然だろ、大戦争女王が正しい) |
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すぐに私のデストロイ軍団を派遣するからな! | |
メス! おまえはウェッポンマスタリー先生の首を取れ! 奴は生きながらにして弱者のゴーストに取り憑かれた魔物よ! |
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そんなことないと思うよ! 今まで大戦争オバちゃんは賢い人だと思ったけど、かなり見損なったかも! |
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うーん。 これは外交じゃどーにもならない。 |
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主君がやるというなら殺(や)る。 |
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まーいいじゃん♪ ウェッポンマスタリー先生ぶっ殺そうぜー♪ |
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冷静に考えたら奴に肩入れする義理なんかねーよ♪ つまんねー反乱に肩入れしたアホアホ戦士なんて切っちまおうぜ♪ |
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コラァァ! ダークエルフぅぅ! 貴様に人の心はあるのか!? |
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おっお! やんのか? |
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内ゲバっちゃうのか? このパーティって全員考え方が違うからそうなる運命だよな♪ |
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(私も言いたい事がある!) | |
意見が言いたい! 意見が言いたい! 意見が言いたい! |
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(でも会話の縄跳びに入れないよぉ) | |
この状況下でパーティの心はバラバラになる。 |
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ヤバい。 政治的な判断って超ムズいかも。 |
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現実の政治家さんもこんな板挟みをいっぱい味わったのかな? メスは頭を抱えて苦悩した。 |
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