第10話 | |
2011/01/09 音無自由「このまま女銃鹿を野放しにしたら女銃鹿は元死刑囚を殺し続けるだろうね。それだけは阻止しないと・・・。」 |
単刀直入に言うよ。 元死刑囚を殺すのを止めてくれないかな? |
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お断りします。 |
【秋葉原】 |
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俺の名は売れ杉三号。 ここは秋葉原。 女銃鹿が誰かと携帯電話で話をしている。 俺は状況が把握できていない。 一体何が起こってるんだ? |
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色々考えたんだよ・・・。 どうすれば人を死刑の恐ろしさを女銃鹿に伝えられるか。 |
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伝えられる? | |
こんな話はどうかな? むかしどんな人間でも殺せる「死刑」という名の魔法を使う魔法使いがいました。 |
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「死刑」の威力は絶大で・・・ その魔法をかけられた人間はこの世に生まれてこなかった事となり、完全に消滅しました。 魔法使いは「死刑」の魔法で世の中をよくしようと考え、悪い人間を次々と「死刑」の 魔法で消滅させました。 ある日、魔法使いは間違って悪くない人を「死刑」の魔法で消滅させてしまいました。 |
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・・・・・。 | |
魔法使いは考えました・・・ | |
間違いで死ぬ人間がいてもかまわない。 これからも悪人を「死刑」にしよう。 こうして魔法使いは、何千、何万もの人間を「死刑」の魔法で消滅させ続けました。 |
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・・・。 | |
そのうち誰もが魔法使いを恐れ・・・ 誰も魔法使いに逆らわなくなりました。 |
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気づけば魔法使いは怖い王様になっていました。 誰も逆らえない怖い王様に・・・ 人々は怖い王様に怯え、不幸な日々をすごしました。 |
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恐ろしい「お話」ですね。 | |
そうだよ。 とても恐ろしい話だよ。 |
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魔法使いのように間違って、悪人以外を死刑にしてしまう危険性は確かにあります。 |
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分かってくれたんだね。 |
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だからこそ死刑執行には細心の注意を払わなければならなりません。 |
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なっ!? |
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死刑にされるべき者は大罪を犯した犯罪者だけです! |
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分かっていない! 女銃鹿は私の話を理解できてないよ! |
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理解しているかしてないかの問題ではありません。 | |
あなたとは、見ようとしている世界が違いすぎる。 |
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あなたがもし・・・ 私と同じ世界を見ていたのなら。 |
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あなたがもし・・・ 私と同じように「あの犯罪被害者」に出会っていたのなら。 どんな答えを出したのだろう。 |
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話し合いは無理なのかな。 | |
無理でしょうね。 | |
女銃鹿はそう言うと、携帯の電源を一方的に切った |
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【大阪 梅田のビル郡】 |
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ここは大阪の中心部梅田。 梅田にある高層ビルの屋上で、一人の少女が空を見上げていた。 少女の名は音無 自由(おとなし じゆう) サプレッサー(減音器)のグノーシャだ。 |
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言葉ではどうにもならないんだよ ・・・・ね。 |
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少女は左右の太ももにつけたホルスターから、2丁の拳銃を抜いた。 左手には「スミス&ウェッソンM360J」 通称「SAKURA」と呼ばれる全長160mmの拳銃が握られている。 右手には「スミス&ウェッソンM500」 全長381mmの超大型拳銃が握られている。 |
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だったら二度とトリガーを引けないようにしないと・・・。 | |
女銃鹿を放っておけば元死刑囚を殺し続ける。 話し合いは何度も試したが通用しない。 だったら実力で阻止するしかない。 |
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目的は女銃鹿の人差し指破壊。 | |
音無自由は左手に持ったスミス&ウェッソンM360Jを東に向けた。 |
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携帯を切った女銃鹿は全速力で走り出した。 チーターから全力で逃げる鹿のようにとび跳ねながら、凄まじい速度で移動している。 売れ杉三号は必死になって女銃鹿を追いかける。 |
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な・・・何が起きたんだ? 事情を説明しろよ? |
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お断りします。 それよりもここは不利です。 |
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不利? 何かと戦うのか? |
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人通りが多すぎて、どこで銃を使用しても大騒ぎになります。 しかも警察官が巡回している。 |
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敵の狙いは私に銃を撃たせるまえに勝つことです。 | |
そう言うと女銃鹿はクルリと旋回して、ボクサーのような構えをとる。 |
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? | |
無駄です!! あなたの38口径弾では私に効きません! |
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女銃鹿の目の前で弾丸の雨が降り注ぐ。 女銃鹿に降り注いだ弾丸の数は 計15発 女銃鹿は降り注いだ14発の弾丸を、右手に装備した防刃手袋で受け止める。 しかし残り1発の弾丸は受けそこねた! 残り1発の弾丸が女銃鹿の顔面めがけて直進する! 女銃鹿は残りの1発を前歯で受け止め・・・ 真後ろに跳躍!! 後方宙返りをして見事な着地をした。 |
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後方宙返りで弾丸の勢いを殺した! | |
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銃を女銃鹿に向けて撃った音無自由は、女銃鹿の動きをジッと観察している。 |
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女銃鹿ならそれぐらいの芸当簡単だよね。 でもここまでは計画通り・・・。 女銃鹿に私が38口径弾しか所持してないという認識を与えた。 |
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音無自由は右手に握られているスミス&ウェッソンM500を構えた。 銃の愛好家なら誰でも知っている。 市販されている拳銃の中では 「世界最強の威力を誇る拳銃」 音無自由はスミス&ウェッソンM500の引き金を引いた。 音無自由の右手に強烈な振動が伝わってくる。 |
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スミス&ウェッソンM500の口から50口径のマグナム弾が吐き出された。 |
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これで終わる!! | |
本来ならここでスミス&ウェッソンM500から強烈な発射音が発生するが・・・ 完全な無音!! 「∞消音」という銃に関係する全ての音をかき消す能力が発動しているため・・・ 銃に関する一切の音が発生しない。 絶対静音の悪魔が高速で女銃鹿に襲いかかる! |
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何度攻撃してこようが無駄です!! | |
弾丸は秒速100kmの速度で放物線をえがいて飛んでいく。 弾丸が三重県の上空を越える。 弾丸が愛知県の上空を越える。 弾丸が静岡県の上空を越える。 弾丸が山梨県の上空を越える。 |
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いけーーーーっ!! | |
女銃鹿まであと1Km 女銃鹿まであと500m |
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効きません!! | |
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!? | |
女銃鹿は撃たれた右手を確認した。 防刃グローブはズタズタになって使い物にならなくなっている。 右手は血まみれ・・・ 「部位欠損」や「骨折」はまぬがれたが。激痛でしばらく動かせそうにない。 |
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な・・・なんですか・・・ この衝撃は・・・。 |
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く・・・不覚。 | |
勝った!! | |
勝利を確信した音無自由は・・・ スミス&ウェッソンM500の引き金を二度引く。 スミス&ウェッソンM500が二回火を吹いた。 |
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女銃鹿の人差し指破壊・・・完了。 | |
音無自由は勝利を確信した。 はなたれた二発の弾丸が女銃鹿に向かって飛来する。 弾丸が女銃鹿の人差し指を破壊するまで・・・ 残り100km 残り50km 残り1km |
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女銃鹿ぁ!! | |
え? | |
女銃鹿の前に一人の男が立ちふさがった。 音無自由はこの男を知らない。 男の名は売れ杉三号。 職業は居候ニート。 仕事はゲームの素材集め。 まだ自分の能力が分からない生まれたてのグノーシャだった。 |
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え? | |
三号の腹部に音無自由のはなった2発のマグナム弾が直撃する。 |
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ぐぽぉ!! | |
三号の腹部に激痛が走る。 人生最痛の衝撃!! だが・・・生きている。 腹部にデカイアザが2つできただけだ。 |
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大丈夫か? 女銃鹿? |
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それはこちらのセリフです。 どんだけ丈夫なら気がすむんですか? |
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女銃鹿は減らず口が余裕で叩けるぐらい元気なようだ。 |
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あのよ・・・ | |
事情は説明しませんよ。 | |
事情は説明しなくていいわ。 |
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え? | |
おまえさゲームの先行体験会を楽しみにしてたよな? | |
は? | |
確かに戦いが始まる前にゲームの先行体験会へ行く予定だった。 だがそれがなんだと言うのだろう? |
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これ以上、手がボロボロになったら先行体験会にいってもゲームができないだろ? |
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! | |
これ以上、手がボロボロにならないように、俺がおまえの盾になるよ。 | |
理由はそれだけですか? | |
だっておまえ・・・ 秋葉原にゲームをやりにきたんだろ? |
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は、はい。 | |
女銃鹿の顔が赤くなる。 異性として何の魅力も感じない筋肉ハゲの三号。 そんな男に女銃鹿は一瞬だけときめいてしまった。 |
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なんで顔が赤いんだ? | |
な、なんでもありませんから! 一瞬の気の迷いですから気にしないで下さい!! |
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三号は首をかしげ… 「一瞬の気の迷い」の意味を問いただそうとした。 その刹那。 三号の背中に三発のマグナム弾が突き刺さる! |
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がぁぁぁぁ!! | |
人生最痛の衝撃。 売れ杉三号はたまらず膝を付く。 油断した・・・。 戦いはまだまだ続いている。 |
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三号君!! 反撃の準備が整うまで力を借りますよ! |
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おう・・・まかせてOK。 | |
女銃鹿と三号は反撃の準備を整えるために、人通りの少ない路地に向かって走り出した。 |
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