第22話 | |
羽山アキラ「あんたは結局のところ、復讐にとり憑かれ復讐に殺される。そういう人生だったんだ」 |
羽山さん気をつけて下さい。 夜銃はこの森のどこかにいます。 |
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手負いの夜銃はこの近辺なんですね? |
【東京と山梨の県境にある森】 |
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ここは東京と山梨の県境にある森の中。 東京にいた羽山アキラは… 愛知県の女銃鹿から連絡を受け、一人で夜銃が逃げ込んだ森の捜索をしていた。 羽山アキラは女銃鹿と携帯電話で通話しながら、森の中を足早で突き進む。 |
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(この武器で夜銃を……殺す) | |
羽山アキラは、aek-999・通称「アナグマ」と呼ばれるサプレッサーがついた珍しい機関銃を抱えている。 |
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【aek-999「アナグマ」】 |
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回復され…る前に警察の手で、夜銃を……捕縛して……下さい。 | |
女銃鹿? 大丈夫ですか? かなり疲れているようですよ? |
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スイングバイ加速射撃を使用した女銃鹿はかなり疲弊(ひへい)していた。 電話越しでも女銃鹿の疲労が伝わってくる。 |
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大丈夫です。 急いで下さい。 |
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女銃鹿は携帯電話で羽山アキラに口頭で指示を送る。 この森では場所の条件が悪いのか、携帯電話のGPSが使用できないようだ。 |
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止まって下さい。 この茂みの先に夜銃がいます。 気をつけて…… |
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羽山あきらは茂みの前で立ち止まった。 |
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女銃鹿ごくろうさまです。 この先は警察の仕事です。 ゆっくり休んで下さい。 |
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そうさせてもらいます。 私も限界です。 後で報告をお願いします。 |
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そういうと女銃鹿は携帯の通話をきった。 |
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(女銃鹿ごめん……夜銃は警察の手に渡す前に俺が始末するよ) | |
羽山アキラは女銃鹿に心の中で謝った。 そして茂みの奥へと足を踏み入れた。 |
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【茂みの奥】 |
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!? | |
・・・・・。 | |
茂みの奥に入ると…… 木にもたれて座っている夜銃の姿があった。 夜銃は両足がなく。 全身がやけどで黒ずんでいた。 両腕には被弾した跡が残っている。 並の人間なら死んでもおかしくない状態だが、かろうじて生きているようだ。 |
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目をつぶっている? 寝ているのか? |
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夜銃は座ったまま静かに目を閉じていた。 |
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おきろ! | |
羽山あきらは機関銃「アナグマ」を抱えるようにかまえ、銃口を夜銃に向けた。 夜銃がゆっくりと目を開ける。 |
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……? そうか俺は眠っていたのか? |
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俺の勝ちだな。 | |
誰かと思えば復讐鬼刑事か? よくここが分かったな? |
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俺には頼れる仲間がいる。 | |
羽山アキラは勝ち誇った顔で、アナグマの銃口を夜銃に近づけた。 |
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どうやら年貢の納め時らしいな。 体がまったく動かん。 |
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そうだ俺が殺してやる。 あんたは結局のところ復讐にとり憑かれ復讐に殺される。 そういう人生だったんだ。 |
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おまえがいうかね? | |
ああ……まさに俺が言うなだ。 |
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まぁいい…… 死ぬ前にお前の仲間が誰なのか教えてくれ。 |
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・・・・・・・・。 |
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女銃鹿。 | |
これは驚いたな。 正義の復讐で処刑するおまえと、廃止された処刑制度の代わりに処刑をしている女銃鹿とでは考え方が違うように見えるが? |
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・・・・・。 | |
答えろ。 | |
確かに俺と女銃鹿とでは処刑する理由が違う・・・ | |
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謝る前に女銃鹿との関係をきったほうがいいな。 | |
何? | |
あの女は遅かれ早かれ勝手に自滅する。 あまりにも隙が多すぎる。 |
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女銃鹿を悪くいうな! |
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おまえにとっては女銃鹿は便利な道具かもしれないが…… 便利な道具だと思って過信をしているといつか痛い目にあうぞ。 |
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そういう風に… | |
? | |
良い人たちを上から目線で分析して……不幸にして…… | |
羽山アキラが怒りでうち震え…… 唇を歯型がつくまでかみしめた。 そして…… アナグマの銃口を、夜銃の頭部に全力でぶつけた。 |
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(この程度の会話で怒りのスイッチが入るとはな……怒りをかなり溜め込んでいるな) |
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おまえだけは許さない! おまえの存在が人を不幸にする。 |
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(そろそろ殺されそうだな。 どうやら俺はここまで…… 願わくば俺が動画投稿サイトに流した動画をみて、俺の意志を引き継ぐモノが現れますように) |
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羽山アキラが目に涙をいっぱいためて、夜銃に問いかけた。 |
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最期に言い残すことは無いか? | |
おまえに言い残すことなどない。 |
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殺 |
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ううっ! | |
羽山アキラは憎しみを込めて「アナグマ」の引き金を引いた。 機関銃「アナグマ」が空薬莢を飛ばしながら、夜銃の頭部を鉛弾でえぐりつづける。 血霧が噴出し… 鉛弾が顔の肉を削り粉砕する。 |
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おおおおおお!! | |
夜銃の頭部が破壊され… 頭部からガラス片が飛び散った。 飛び散ったガラス片が羽山あきらの頬(ほほ)をえぐり… 羽山アキラの頬から血が流れる。 |
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はぁ……はぁ…… | |
我に返った羽山あきらが銃撃を止めて、夜銃の姿を凝視した。 夜銃の肉体は穴まみれになり。 ピクリとも動かない。 夜銃は事切れていた。 |
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殺した…… 木村さんのカタキをとった。 |
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羽山あきらは「アナグマ」を地面にゆっくりと置き。 ポケットに入れておいたハンカチで 頬の傷をおさえた。 |
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死体を隠さなきゃ。 | |
そして…… 幽鬼にとり憑かれた亡者のようにさまよいながら、死体の隠し場所を捜した。 |
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【新宿の高層ビル】 |
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同時刻。 新宿の一等地にある高層ビル。 高層ビルの屋上で2人の人物が「∞視点」を使用して… 羽山アキラの動向を見守っていた。 |
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羽山アキラが夜銃の死体を穴掘って埋めてる。 | |
「蜻蛉斬り(とんぼきり)」という名の少女が「いちごポッキー」を食べながら答えた。 蜻蛉斬りはイチゴポッキーを10本たばにして10本づつ食している。 |
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羽山アキラが夜銃の身柄を警察に引き渡そうとしたら、殺すつもりだったが…… 杞憂で済んだな。 |
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「なゐの神衣」という名の政治家が1本の「いちごポッキー」を上品に食べながら答えた。 |
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羽山アキラも警察官。 | |
警察官は国家権力の番犬だ。 羽山アキラはどちらかというと野良犬だな。 |
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うん。 | |
羽山アキラが夜銃を隠蔽してくれたおかげで、グノーシャの情報が警察に渡らずに済んだ。 |
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これからも好き勝手できる。 | |
問題は女銃鹿だな。 もし女銃鹿が間違いを犯して、警察に自首するような事体になったら… |
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殺すしかない。 |
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その時は任せた。 | |
うん。 | |
現在、グノーシャの数は297人。 そのうち106人が女銃鹿や夜銃のように違法な活動をしている。 |
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・・・・・。 | |
グノーシャにはできるだけ自由に行動させたい。 警察などにグノーシャの活動を邪魔させてはならない。 |
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うん。 うん。 |
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誰であろうとグノーシャによる「強制的日本改造計画」の邪魔はさせない。 |
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なゐの神衣は手に持っていたイチゴポッキーを、手で握り締めて粉々に砕き・・・ ビルの屋上から投げ捨てた。 |
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邪魔する者は砕いて捨てる。 |
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(イチゴポッキーは犠牲になったのだ。) | |
女銃鹿は引き続き注視する必要がある。 | |
なゐの神衣は「∞視点」で女銃鹿を凝視した。 女銃鹿は売れ杉三号におんぶされながら眠っている。 女銃鹿の寝顔を見れば… スイングバイ加速射撃という、危険な銃撃をした人物とは誰も思わないだろう。 よだれをたらし、誰よりも平和そうな顔で眠っていた。 ・・・・ ・・ ・ |
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注視する必要があるグノーシャがもう一人。 | |
三号君か? | |
本当にプレイステーション3のグノーシャ? | |
三号君の頭に入っているのは……プレイステーション3のパーツだな。 | |
防御に特化しすぎ。 遊び心が無い。 |
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確かに玩具のグノーシャにしては性格が大人しいな。 | |
仲間を守ることを最重視する思考。 防具のグノーシャに近い。 |
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気になる。 | |
正体不明のグノーシャか……私は逆にワクワクしてきたよ。 彼が日本にどんな影響を与えるのか楽しみじゃないか。 |
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・・・・。 | |
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