第21話 | |
![]() |
女銃鹿「夜銃・・・死なないで下さい」 |
![]() |
この戦い俺の勝ちだ。 |
![]() |
? |
【森の高台】 ここは愛知県の北部にある森の高台。 森の高台には、プラスチック爆弾で破壊された展望台の残骸が散らばっている。 |
|
![]() |
俺の勝ちだってどういう意味だよ? あんたは満身創痍(まんしんそうい) 俺たちは無傷なんだぞ。 |
![]() |
死ぬまでが戦いだ。 |
![]() |
・・・・。 |
![]() |
俺を殺さないのなら何度でも挑むぞ。 |
![]() |
構いません。 何度でも受けてたちます。 |
![]() |
何度でも受けてたちますか… 奇襲が成功してたまたま勝ったお前たちが、俺の攻撃を何度でもしのげるのか? |
![]() |
そ・・それは・・・ |
そういうと…大文字に倒れていた夜銃はヒザを手で押しながら、ゆっくりと立ち上がった。 |
![]() |
この大怪我で立ち上がるのかよ。 |
夜銃は立っているのがやっとの状態だった。 ヤジロベーのようにフラフラと全身をゆらし… 転倒しないように必死でバランスをとっている。 |
![]() |
最後のチャンスだ… ここで俺を殺さなければ、お前らは死ぬぞ。 |
![]() |
女銃鹿! とどめをさしてくれ! こいつは戦争なんだ! やらなきゃやられる! |
![]() |
い…いやだ! 私は死刑になるような 重罪人しか殺さない! |
死刑にならないような人間を殺すなんて、それこそ悪魔だ。 |
![]() |
なるほど… |
![]() |
女銃鹿! 銃を貸せ! |
![]() |
や…やめなさい! 三号君! |
女銃鹿の手に握られている銃をうばうために、三号が女銃鹿に飛びかかった。 三号が女銃鹿の左手に握られている拳銃を両手でつかむ。 |
![]() |
離れなさい! 三号君! |
![]() |
相手が回復される前に殺らなければ、俺達が殺されるんだ。 女銃鹿がとどめを刺さないなら俺がさす。 |
![]() |
三号君! 短絡的な行動はやめなさい! |
女銃鹿と三号が銃の奪い合いをはじめた。 女銃鹿は銃を奪おうとする三号の腹部にヒザ蹴りをくらわす。 足を何度も何度も踏みつける。 |
![]() |
今の俺には効かないって… それよりもすぐにあいつを殺そう。 そうしないと女銃鹿が傷つく事になる。 |
![]() |
まだそんなことを! |
![]() |
なるほど… 仲間を守るためなら迷わず人を殺す。 それが三号の正義か。 |
![]() |
てめぇ…! 女銃鹿に危害をくわえたらただじゃおかねぇ!! |
女銃鹿と銃を奪い合いながら三号が吠えた。 |
![]() |
絶対に渡しません! |
![]() |
(時間稼ぎにはもってこいの茶番だな。 いいぞ…ほんの少しだが回復してきた) |
夜銃の肉体に刻まれた傷が、目に見える速度で回復していく。 |
![]() |
グノーシャは傷の治りが早いんだ。 もたもたしてると… |
![]() |
だったらこんなところで仲間割れをしてないで、さきに夜銃を拘束しましょう。 |
![]() |
くっ…… 分かった一時休戦な。 |
![]() |
もう遅い。 |
![]() |
!! |
![]() |
!! |
夜銃は三号と女銃鹿に向かって微笑む |
![]() |
∞機動。 |
そして「∞機動」を使って高速で森の高台を離脱した。 夜銃は一切の音もたてずに… まるで映写機に映し出された映像が突然消えるように… 音もなく姿を消した。 |
![]() |
くっ…逃げられた! |
女銃鹿が悔(くや)しがろうとした その時・・・ 三号が吼(ほ)えた。 |
![]() |
女銃鹿! 夜銃から目を離すな! |
![]() |
は…はい! |
女銃鹿は高速移動する夜銃を「∞視点」で必死になって目で追った。 夜銃はふらつきながら… 転倒しそうになりながら… 秒速3万キロメートルの速度で走りつづける。 |
![]() |
女銃鹿、三号。 すぐに殺してやる。 |
夜銃は国道一号線まで移動し… 一号線を経由して「愛知県」から「大阪府」まで瞬時に走り抜けた。 そこから山陽道を経由して一気に加速。 「大阪府」から九州の「福岡県」まで移動した。 |
![]() |
夜銃が九州の「福岡県」に到着しました。 |
![]() |
はやっ! 1秒かかってないのか? |
夜銃は「福岡県」で大きく跳躍。 夜銃は高さ100mの放物線を描きながら飛び上がる。 そして九州の最南端にある「鹿児島県」の佐多岬灯台で着地した。 |
![]() |
水上歩行! |
夜銃は佐多岬灯台から海面に着水する。 そして「キリスト・トカゲ」のように、足を大げさに動かして水面を走り出した。 |
![]() |
(や……夜銃が……水面を歩いた!?) |
![]() |
? |
夜銃は瞬く間に沖縄を越え、日本の領海から外に出る。 そして… 夜銃は「台湾」の領海に入った。 |
![]() |
夜銃はいま台湾にいます。 |
![]() |
お、おい… 冗談だろ。 |
![]() |
到着。 |
前傾姿勢で走り続けた夜銃は… 「台湾」の北にある「台北(たいぺい)」の「野柳(やりゅう)風景特定区」で足を止めた。 |
【台北 野柳風景特定区】 |
夜銃は台湾から、女銃鹿がいる日本を凝視した。 |
![]() |
はぁはぁ……うっ……ぐむ。 ここまで距離をはかれば十分だ。 |
夜銃は肺出血で呼吸困難になりながらも、呼吸を必死にととのえた。 |
![]() |
しゅーーーっ。 しゅーーーっ。 |
息を整えながら夜銃は日本刀を両手で持ち中段に構えた。 女銃鹿や三号から受けた傷はほとんど回復していない。 刀を持つ手はふるえ。 刀の切っ先が「地震でゆれるコップ」のようにカタカタと揺れる。 |
![]() |
三号君、気をつけて下さい。 夜銃が台湾で刀を構えました。 |
![]() |
まだ、殺る気なのかよ。 一端逃げて傷を回復させてから戦うかと思ったぜ。 |
夜銃は・・・ 大きき息を吸う。 大きき息を吸う。 そして大きく息を吐いた。 夜銃の手のふるえがピタリと止まる。 |
![]() |
2000kmからの左片手一本突きを使うことになるとはな。 この一撃で女銃鹿も売れ杉三号も粉みじんに消し飛ぶだろう。 |
![]() |
この距離から必殺の一撃を繰り出すのですね。 |
![]() |
もっとやばい攻撃がくるのか? だったら女銃鹿だけでも逃げてくれ! |
![]() |
三号君・・・。 |
![]() |
俺なら大丈夫だ! どんだけ丈夫なら気が済むんですかってまた言わしてやんよ。 |
![]() |
三号君は夜銃を甘く見すぎです。 こんどは三号君の肉体を破壊するつもりで攻撃してきますよ。 |
![]() |
うっ…… |
![]() |
・・・・・・ |
分かっている筈です。 三号君と私が助かるためには、殺られるまえに倒すしかない。 |
![]() |
と……とにかく女銃鹿だけでも助かる方法を探さないとな! |
![]() |
三号君。 |
![]() |
え? |
女銃鹿がまっすぐと三号の目を見つめる。 決心したような・・・ 悲しそうな・・・ そんな表情で女銃鹿は三号を見つめた。 |
![]() |
・・・。 |
![]() |
どうした? 女銃鹿? |
![]() |
もし・・・ |
![]() |
もし? |
![]() |
もし私が夜銃を殺したら… 私は警察に自首します。 その時は三号君が妹を守ってください。 |
![]() |
どうしたんだ? 急に? |
![]() |
私は夜銃をいますぐ倒すことができます。 |
![]() |
マジで? そんなすごい攻撃ができるの? |
![]() |
ただ威力が強い攻撃なので… 夜銃を殺してしまう可能性があります。 |
![]() |
・・・・・。 夜銃を殺したら警察に自首するのか? |
![]() |
夜銃はおそらく死刑になるような罪は犯していません。 |
死刑にならない人間を殺したら…それは殺人罪です。 死刑執行人でも警察にいかねばなりません。 |
![]() |
夜銃が俺達の知らない所で人を殺しまくってて、死刑になるような罪を犯してたらどうするんだよ? |
女銃鹿は三号の唇に人差し指を突き立てて、三号の口をふさいだ。 |
![]() |
不確定な情報で死刑なんてできません。 |
![]() |
うっ・・・・。 |
![]() |
私は野獣ではありません。 |
女銃鹿は悲しそうな・・・ それでいて覚悟をきめたような目でそう答えた。 |
【台北 野柳風景特定区】 |
「台湾」の北にある「台北(たいぺい)」の「野柳(やりゅう)風景特定区」で夜銃は中段の構えをとりながら・・・ ひとりつぶやいた。 |
![]() |
父上から女銃鹿が元死刑囚を処刑をしていると聞いた時は同志になれると期待したものだ。 |
だが、期待ハズレもいいところだ。 |
![]() |
女銃鹿… なぜカタキ討ちを否定する。 |
被害者遺族が加害者との真剣勝負を望むのなら、機会を与えればいいではないか。 戦いで白黒つけるのが、一番簡単で分かりやすい方法だとなぜ分からない。 |
![]() |
被害者遺族が危険な戦いに参加する必要はありません。 何度言えば分かるのですか? |
「日本」にいる女銃鹿が、夜銃のいる「台湾」を見ながらつぶやいた。 |
![]() |
独り言? 誰と話してるんだ? |
![]() |
「∞視点」で台湾にいる夜銃の唇を見て、唇の動きで言葉を読み取りました。 |
![]() |
読唇術か? 「∞視点」と合わせて使うと遠くからでも会話ができるな。 |
![]() |
夜銃も「∞視点」で私の唇から言葉を読み取ったようです。 |
【愛知&台北】 |
![]() |
被害者遺族が絶対に勝つような形でカタキ討ちをさせるのなら… カタキ討ちを支持するのか? |
![]() |
それも駄目です。 被害者遺族がカタキを殺せば、被害者遺族が殺人罪で捕まってしまいます。 |
![]() |
被害者遺族の殺人罪? 元死刑囚を殺しているお前が、殺人罪を気にするのか? |
![]() |
わたしは死刑執行人です。 罪はありません。 |
![]() |
ずいぶんと手前勝手な考えだな。 |
![]() |
はたしてそうでしょうか。 |
![]() |
まぁ……いい。 障害になるのなら殺すのみ。 |
![]() |
止めます。 |
![]() |
どうやって止める? |
![]() |
止めます。 |
女銃鹿と夜銃の瞳が攻撃色に変わっていく・・・ |
![]() |
・・・・。 |
![]() |
・・・・。 |
![]() |
(一触即発だな) |
![]() |
……行きます。 |
日本にいる女銃鹿と、台湾にいる夜銃が大きく息を吸う。 そして同時に吠えた。 |
![]() |
つぶして通る! |
![]() |
押して引かせる! |
女銃鹿と夜銃が一瞬で臨戦態勢にはいった。 |
![]() |
くらえぇえぇぇぇぇ!! |
カチン! 突然、夜銃の背中から撃針が弾薬を叩く音が聞こえた。 |
![]() |
・・・・? |
夜銃の背中に「見えない何か」が叩きつけられる! 夜銃は「見えない何か」に押し出され、弾丸のように真っ直ぐ飛翔した。 |
![]() |
2000kmからの… |
夜銃が中段の構えを変化させる。 両手で持っていた刀を左手一本で持ち。 飛び込むような体勢で左手を突き出し…… 前方を刀で突いた。 |
![]() |
左片手一本突き! |
夜銃は左手を突き出した姿勢のまま 秒速30万キロの速度で女銃鹿に特攻した。 |
【森の高台】 |
![]() |
まるで弾丸ですね。 弾丸のグノーシャとはよく言ったものです。 |
![]() |
攻撃してきたのか? |
![]() |
ええ… 止めます。 |
女銃鹿が右手を上に向け… 右手に所持していたニューナンブm60を天に向けた。 銃口は「月」に向けられている。 |
【青空に浮かぶ月】 |
![]() |
三号君。 |
![]() |
おう。 |
![]() |
もし、いきおいあまって夜銃を殺したら私は警察に自首します。 |
![]() |
また、その話かよ。 分かった。 そうなったら妹ちゃんは俺が守る。 |
![]() |
ありがとう。 |
女銃鹿の目から少しだけ涙がこぼれ落ちる。 三号は女銃鹿が涙をこぼした事に気がつかなかった。 |
![]() |
絶対にうまくやれよ。 |
![]() |
いきます。 |
ニューナンブm60に装填された1発の弾丸が・・・ 突然強烈な光を発した。 閃光手榴弾から発せられるような、膨大な光量の光が周囲を包み込む |
![]() |
(なんだ! この強烈な光は!) |
![]() |
スイングバイ加速射撃! |
銃内部のハンマーが、強烈な光を発する弾丸を叩いた。 ・・・ ・・ ・ 撃 発 ! 突然、女銃鹿の右手がはじけた。 |
![]() |
!! |
その瞬間… 強烈な光を発する弾丸が天空に舞い上がる。 弾丸は、弾丸というより照明弾のようだった。 光速で舞い上がる照明弾。 |
![]() |
ぐぎっ・・・! |
弾丸が吐き出された衝撃で… 鉄塊でできたニューナンブm60はバラバラに砕け散る。 弾丸が吐き出された衝撃で… 女銃鹿の手の骨が砕け散る。 「親指」と「人差し指」と「中指」が本来曲がるべき方向の逆側に折れ曲がった。 |
![]() |
なんて無茶な… もっと自分を大事にしろよ! 無茶して自分を傷つけるなよ! |
![]() |
無茶言わないで下さいよ。 |
絶対光速を越えたスピードで瞬く間に月の周回軌道に到達した! ・・ |
|
![]() |
ぉぉぉおお! |
夜銃は左手を突き出した姿勢のまま、一直線で海面を翔ける。 台湾の領海から外にでた夜銃は瞬く間に東シナ海を通過。 九州の宮崎に到達した。 |
|
![]() |
背筋が寒くなってきた。 なんだこの寒気は? |
![]() |
男銃鹿(おじゅうか)…あなたの予想どおり「スイングバイ加速射撃」を使うことになりました。 |
【2年前……愛知県の北部にある森】 |
|
女銃鹿は2年前の出来事を思い出していた。 2年前…… 女銃鹿は男銃鹿と名乗る少年と、森の中で射撃訓練をしていた。 |
|
![]() |
スイングバイ加速射撃ってなんですか? |
![]() |
簡単に言えば「月の引力」と「月が回転する力」を利用して、弾丸を加速させる射撃術のことだ。 |
![]() |
具体的にはどうするのですか? |
![]() |
弾丸を月に向かって撃つ。 そして月を周回させて…地球にいる目標に弾丸を命中させる。 |
【スイングバイ加速射撃】 ![]() |
|
![]() |
なんですか……それ? 厨二病患者もドン引きしますよ。 |
![]() |
銃撃に月の引力や公転運動のエネルギーが加算させる必殺の一撃だ。 |
命中すればどんな敵でも一撃で葬ることができる。 |
|
![]() |
そんな過剰な攻撃が必要なんですか? |
![]() |
過剰では……ある。 どんなグノーシャーでも「スイングバイ加速射撃」をくらえば蒸発して消滅する。 |
![]() |
一生使いませんよ。 |
![]() |
いや……多分使うだろ。 |
![]() |
なぜ言い切るのです? |
![]() |
おまえは情が深すぎる。 情が深い女は不幸をしょいこむ。 |
・・・・? |
|
![]() |
なんですかそれ? 答えになってませんよ。 |
![]() |
情が深い女銃鹿は誰かのために、理不尽でくだらない戦いに首をつっこむ。 |
その時に「スイングバイ加速射撃」を使用する。 |
|
![]() |
なにろくでもない予想をしてるんですか? 絶対に使いませんからね。 |
![]() |
賭けるか? |
・・・ ・・ ・ |
|
![]() |
あれから2年・・・ 私は男銃鹿がいうように「理不尽でくだらない戦い」をしているのでしょうか。 |
女銃鹿は空ろな目で夜銃がいる方向を眺め、そうつぶやいた。 |
|
【月】 女銃鹿のはなった弾丸は今・・・ 月の周回軌道にいた。 弾丸は月の引力を利用して加速しつづける。
|
|
そして鮮やかな光跡を描きながら一気に月を周回した。 【弾丸の現在位置】 ![]() |
|
そして弾丸は、夜銃がいる地球に向かって…… 一直線に流れ落ちた。 |
|
【地球】 |
|
![]() |
(女銃鹿まで……あと200km。いいかげん移動に飽きてきた。これで全て終わらせる) |
夜銃は「∞視点」を使い女銃鹿がいる愛知県北部を見た。 女銃鹿は森の高台で両ヒザをつきながら、不安そうな顔でこちらを見ている。 |
|
![]() |
(戦意喪失…?なぜ攻撃してこない?) |
夜銃は女銃鹿が何を考えているのか理解に苦しんだ。 |
|
![]() |
(まぁいい……これから死ぬグノーシャの気持ちなど考える必要はない) |
夜銃は最後の一撃を喰らわせる為、姿勢を限界まで前ノメリにして、左手に持った刀を全力で前に突き出す。 |
|
![]() |
(終わりだ! 最後で捨て鉢になるとは見損なったぞ女銃鹿!) |
あと150kmで女銃鹿は殺す。 あと100kmで女銃鹿は殺す。 あと50kmで女銃鹿は殺す。 ・・・ ・・ ・ |
|
![]() |
夜銃…生きて。 |
【ダイアモンドの槍】 |
|
女銃鹿のはなった弾丸は大気圏に突入。 弾丸は大気と激しく衝突した。 大気との断熱圧縮で激しく 発熱燃焼。 弾丸はダイアモンドの槍のように青白く光り輝きながら大気圏を貫いた。 |
|
![]() |
・・・・? なんだこの恐怖感は? |
大気圏を突破した女銃鹿の弾丸が、夜銃の500m上空に舞い降りる。 夜銃は伊勢湾から愛知県の名古屋港に入った直後だった。 |
|
【名古屋港】 |
|
![]() |
何が起きた? なぜ俺は絶望している? |
夜銃は海面を走りながら正体不明の恐怖に絶望した。 普通の絶望感ではない。 今すぐ自殺したくなるような凶悪な絶望感。 夜銃が生まれてから2年間。 一度も味わったことのない感覚だった。 |
|
・・・ ・・ ・ |
|
![]() |
着弾。 |
ジャボッ・・・ |
|
![]() |
? |
女銃鹿の弾丸が海面に着弾した。 着弾した位置は夜銃の20m後方。 加速と摩擦を繰り返し… 限界まで加熱した弾丸の熱が大量の海水を蒸発させた。 そして蒸発した海水のエネルギーが一気に拡散。 名古屋港の湾内で巨大な水蒸気爆発が発生した (※水蒸気爆発とは超高温の物質と接触した水が瞬時に気化することで発生する爆発現象のこと) |
|
![]() |
うぁぁぁっあぁぁああああ!! |
水蒸気爆発の衝撃波が夜銃に襲い掛かる。 熱を帯びた衝撃波が夜銃の両足に接触 夜銃の両足がフライパンにのせられたバターのように一瞬でとけて 消えて無くなった。 |
|
![]() |
足がぁっぁああぁぁあっ! |
![]() |
夜銃……あがいて下さい。 あなたならギリギリで生き残れる。 |
両足を失った夜銃が海面で転倒 転倒した夜銃に、水蒸気爆発が容赦なく襲い掛かる。 |
|
![]() |
ぐぁ!! |
山一つが吹き飛ぶ威力の水蒸気爆発が、夜銃の全身を砕きつづける。 背中の肉が爆風で剥がれ落ちる。 |
|
![]() |
ぐぁあぁぁあぁ!! これは水蒸気爆発? これが女銃鹿の攻撃なのか? |
![]() |
・・・・。 |
![]() |
ううっ…… 女銃鹿のために死なないでくれ。 |
夜銃の全身が水蒸気爆発の衝撃波にのまれていく。 夜銃は肉体が消滅(ロスト)する恐怖を感じた。 ここが・・・ ここが・・・ |
|
![]() |
ここが俺の死に場所であってたまるものか! |
夜銃は全生命力を振り絞って絶叫した。 |
|
![]() |
∞機動! |
夜銃は両腕を足がわりにして、全速力で水蒸気爆発から脱出した。 這いずり回るように・・・ もがくように・・・ 無我夢中で・・・ 秒速1万キロの速度で移動した。 |
|
![]() |
夜銃が危険地帯から外に出ました。 |
![]() |
夜銃は助かったのか? |
![]() |
今は生きていますが。 時間が立てばどうなるか分かりません。 |
【道路】 |
|
地上に出た夜銃は苦しみながら、両腕を足がわりに秒速1万キロの速度で移動しつづける。 手負いのトカゲのように時には転げ… 時にはのたうちながら… 前に進む。 ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ |
|
![]() |
ここは・・・ どこだ? |
【森】 |
|
夜銃がふと我に返ると、森の中にいた。 見覚えがある森。 |
|
![]() |
ここは木村さんにカタキ討ちを持ちかけた、東京と山梨県の県境にある森。 因果な土地にたどりついたものだ。 |
夜銃は自分の肉体を見てみた。 両足は腿から下が完全に無くなっている。 全身は火傷で黒ずんでいる。 左手の火傷は特に酷く瘢痕化(ケロイド化)しており赤黒く盛り上がっていた。 女銃鹿に撃たれたときについた両腕の銃痕は生々しく残っている。 |
|
![]() |
ここまで傷つけられて、よく生きていられたものだ。 |
む・・・? ・・ ・ 夜銃の視点が突然歪む。 |
|
夜銃の視点がぼやけ…… 夜銃に急激な睡魔が襲いかかる。 |
|
![]() |
これは睡魔か? ここで寝たら二度と目を覚まさないということはあるまいな? |
夜銃の全身が悲鳴をあげるように休息を要求しつづける。 夜銃は肉体の要求に従うしかなかった。 |
|
![]() |
危険だが…… 今ここで休むしかないのか…… |
夜銃は静かに目を閉じ眠りについた。 誰もいない森の中で、ウシガエルの鳴き声だけが鳴り響いていた。 |
|
次の話へ 前回の話へ TOPに戻る |