第20話 | |
女銃鹿「凄い作戦を思いつきました。名づけて自爆しないテロ!」 三号「なんですかそれ?」 |
夜銃が警視庁の外に出るのを確認。 今から攻撃を開始します。 |
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おう。 |
女銃鹿は愛知県の北部にある森の展望台から、警視庁を監視していた。 |
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【森の展望台】 |
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女銃鹿の両手には、2丁のニューナンブm60が握られていた。 |
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これから「大闘争」が始まります。 音無自由のようなヌルイ闘争ではありません。 |
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大闘争っって、グノーシャ同士の大規模な戦闘の事だよな。 | |
最初の攻撃で決着がつかなければ、近接戦闘になります。 その時は「例の作戦」でいきますが、大丈夫ですか? |
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大丈夫だけどよ…… ほんと無茶苦茶な作戦だよな。 |
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女銃鹿と三号は「なんらかの作戦」を事前に準備したようだ。 三号にとって、その作戦は不本意なものだった。 |
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三号君でなければできない作戦です。 うまくいけば夜銃になにもさせないまま撃退できます。 |
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女銃鹿は6つのホルスターを装着する。 腰にヒップホルスターを2つ 脇の下にショルダーホルスターを2つ 足首にアンクルホルスターを2つ 合計6つのホルスターを装着した。 6つのホルスター全てにニューナンブm60が収納されている。 |
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防御と奇襲は俺が担当。 | |
攻撃とけん制は私が担当。 | |
女銃鹿が両手を突き出し、二丁のニューナンブm60を構えた。 三号は女銃鹿の周囲の空気が、一瞬だけ凍てついたように感じた。 |
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ごく・・・。 |
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イ゛エァア゛ァァァ! | |
女銃鹿は剣道家に似た奇声をあげる。 奇声と共にl2丁の拳銃に装填された10発の銃弾をすべてを打ち尽くした。 |
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【国道一号線】 |
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羽山アキラに別れを告げた夜銃は、警視庁の外に出ていた。 |
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他のグノーシャからの攻撃にそなえるために、本拠地の静岡に戻るか。 | |
夜銃は「∞機動」を使い、国道一号線を経由し、東京都と神奈川の県境まで小走りで移動した。 夜銃が「∞機動」を使用した時の最高速度は秒速30万キロメートル。 人間の目ではほとんど補足できない速度だ。 |
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(本拠地に戻って、ゼロからカタキ討ちのやり方を練り直す必要がある) | |
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!? | |
(まず三発の銃弾で夜銃に恐怖心を植えつけます) | |
斜め上空から3発の銃弾が夜銃を襲う。 3発の銃弾は、空気抵抗による摩擦熱で燃焼していた。 燃焼した銃弾は… 銃弾ではなく「光弾」のように見えた。 |
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おおおぉぉおお!! | |
夜銃は素早く刀を抜き、3発の銃弾を刀で叩き落とした。 地面に叩き落とされた銃弾は、アスファルトをとかしながらアスファルトにのめりむ。 |
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なんだ・・これは? 銃撃なのか? |
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夜銃の顔から冷や汗と脂汗が同時に吹き出る。 |
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(次に銃弾の破片で夜銃の体勢を崩します) | |
5発の銃弾が夜銃の頭上を通過した。 夜銃の頭上を通過した銃弾は「案内標識」に命中。 案内標識に命中した銃弾は、粉々に砕け散った。 |
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【案内標識】 |
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案内標識に命中し、砕け散った銃弾の破片が夜銃にふりそそぐ。 |
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ぐぉ…… | |
夜銃は大きく飛び込み前転をして、ふりそそいできた銃弾の破片を必死に避けた。 しかし避け切れない。 ふりそそいできた銃弾の破片が、夜銃の全身に大量の切り傷を刻み付ける。 |
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ぬぁあぁあぁぁ! | |
(体勢が崩れたところで、夜銃の武器を奪います) | |
2発の銃弾が夜銃の刀に襲いかかる。 夜銃は立て続けに起きた女銃鹿の攻撃に混乱し、対応できないでいた。 2発の銃弾が「刀の切っ先」に命中する。 |
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なっ・・・。 | |
銃が命中した衝撃で、夜銃は刀を手から離してしまう。 夜銃の手から離れた刀が、竹トンボのように回転しながら10メートル後方まで飛んでいった。 |
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詰みです! | |
女銃鹿の撃った10発の銃弾のうち、最後の1発が夜銃に襲いかかる。 最後の1発は、他のどの銃弾よりも摩擦熱で燃焼していた。 燃焼した銃弾は… 銃弾ではなく「光弾」のように見えた。 否! 燃焼し・・・ 光を発しながら突き進む銃弾は 光の線に見えた。 |
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こんなところで終われるものか!! | |
夜銃はとっさに両手を合わせ1発の銃弾を受け止めた。 両手を合わせた姿は、必死に祈りを捧げる修行僧のようだった。 |
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銃弾を真剣白刃どりのように受け止めた? |
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オォオオオォォオオ! | |
夜銃の手のヒラが激しく燃焼する。 夜銃の手から、焼肉が焼けた時と同じ臭いが発生する。 |
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ヌゥン!! | |
夜銃の掛け声と同時に、1発の銃弾は前に進むのをやめた。 |
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銃弾がとめられた…… | |
お・わぁ・れ・るぅ・ものかぁあ! | |
夜銃は刀を素早く拾いあげた。 刀を握りしめた夜銃の手は、火傷と裂傷で血まみれだった。 |
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弾道から位置を把握したぞ! 謎の狙撃手よ! |
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夜銃は女銃鹿のいる方向を、野獣と悪鬼が混じりあったような目で睨み付けた。 |
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三号君やばいです。 防御してください! |
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詰みって言ったよね? 俺たちが詰んだって事なのかな? |
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夜銃は刀を握り締め、中段の構えをとる。 そして一歩前に足を踏み込んだ。 |
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踏み込み突き! | |
夜銃が一歩前に足を踏み込んだ瞬間・・・ 夜銃の体が、弾丸のようにはじけ弾丸のように直進した。 |
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!? | |
夜銃は中段の構えを維持した状態で前のめりに走る。 国道一号線を経由して、東京都から愛知県まで瞬く間に走り抜け・・・ そこから女銃鹿のいる愛知県の北部にあるる、森の展望台に向かって直進した。 |
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(この早さで突かれたら、三号君の頑健さでも防げない!) | |
っらえーーー! | |
夜銃はさらに加速して、刀を前方に突き立てた。 夜銃の姿は黒い稲妻のように見えた。 夜銃のとおった道が摩擦熱で黒く焼け焦げる。 |
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女銃鹿は俺が守る!! | |
まってください! この攻撃はやばいです。 三号君でもくらえば体がバラバラになります! |
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夜銃が女銃鹿がいる森の展望台にたどり着くまで…… 残り800m 残り500m 残り200m |
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【森の展望台】 |
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三号君!! かきゅうてき速やかに回避して下さい!! |
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・・・・・。 | |
売れ杉三号は両腕を「×の字」に組んで防御体勢に入る。 |
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三号君!! | |
おぉぉぉおぉ!! | |
女銃鹿と三号の目の前に、刀を前に突き出した夜銃が現れる。 |
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さんごうくん! よけてー! |
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∞防御! | |
夜銃の斬突と三号が激しく激突した。 激突した時に発生した衝撃波で、周囲の木々が落ち葉を散らしながら激しく揺れる。 木の上にとまっていた数匹のカラスが、衝撃波の直撃を喰らい遠くに吹き飛ばされた。 ・・ ・ 衝撃波で展望台の柱に大量のヒビがはいる。 |
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さん・ご・・ぅ・・く・・ | |
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へっ……なんてこたぁないな。 攻撃を受けきったぜ。 |
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何者だお前は? | |
売れ杉三号は、夜銃の斬突を完全に防御した。 売れ杉三号の「×の字」に組んだ腕に、刀が浅く突き刺さっている。 傷の深さは2mm |
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これだけの攻撃をくらって…… 軽傷? |
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惚れなおした? | |
最初から惚れてません! どんだけ丈夫なら気がすむんですか? |
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それが聞きたかった。 | |
・・・・・。 | |
夜銃が刀を引いて…… 女銃鹿と売れ杉三号を凝視した。 |
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女銃鹿と…… 新入りのグノーシャか。 新入り名前は? |
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売れ杉三号! | |
売れ杉三号か…… 覚えやすい名だ。 |
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うん…… 名付け親は女銃鹿の妹ちゃん。 |
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女銃鹿と三号に問う。 なぜ俺を攻撃した。 |
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夜銃が刀を前に突き立てて問いかけた。 |
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カタキ討ちの斡旋(あっせん)をやめさせるために攻撃しました。 | |
カタキ討ちは不支持か? 処刑女。 |
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あなたのやりかたは犯罪の被害者遺族にとってあまりにもリスクが大きすぎる。 人道的に見過ごすことはできない。 |
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処刑女が人道を語るとは考えてもいなかったぞ。 おまえの処刑は人道的に許されることなのか? |
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私は被害者遺族が、元死刑囚の処刑を望んだから処刑しているのです。 人道的に間違いだとは思いません |
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俺は被害者遺族がカタキ討ちを望んだから、カタキ討ちを手配した。 人道的に間違いではないな。 |
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女銃鹿は小さくため息をつき…… 夜銃の顔をまっすぐ見つめる。 |
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私はカタキ討ちに敗北した 木村権造さんの知り合いから…… 木村権造さんの話を聞きました。 |
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ほう……? | |
木村さんは復讐に取り憑かれ、復讐に殺されたのだと思います。 | |
そうだ。 木村さんは自ら復讐を望み、復讐の業火で己を焼いたのだ。 |
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そんな生き方をして木村さんは・・・ | |
幸せだったのですか? |
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くくっ・・。 | |
何がおかしい? | |
女銃鹿の話を「あの復讐鬼刑事」が聞いたらどう思うのだろうな。 | |
復讐鬼刑事? | |
木村さんが幸せか不幸かどちらかと問われれば…… 不幸だった。 |
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だったら……なぜ! | |
不幸だったが…… 木村さんは勇者のように誇り高く戦ったのだ。 |
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・・・・。 | |
夜銃「木村さんが幸せか不幸かどちらかと問われれば…不幸だった」 だがな… 木村さんが勇者か臆病者かどちらかと問われれば… 勇者だったのだ。 |
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そういう基準で世界をみているのですね? | |
そうだ。 | |
あなたとは根本的な部分で意見があいません。 | |
そのようだな。 | |
女銃鹿と夜銃の周囲の空気が殺気で満たされる。 女銃鹿は…… 手に持っていた弾丸を撃ちきったニューナンブm60を地面に投げ捨て…… 腰のホルスターから弾丸が装填されている、二丁のニューナンブm60をとりだした。 |
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(戦闘再開か……) | |
女銃鹿と夜銃が無言のまま相手の様子を伺う。 夜銃が中段の構えをとる。 |
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三号君! 作戦通りいきますよ! |
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おう! | |
女銃鹿の合図と同時に、三号が夜銃に特攻する。 |
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固い奴からか。 | |
三号は拳をふりあげながら走り、勢いをつけて夜銃に拳をふりおろす。 夜銃は上体を少しそらして三号の拳を簡単に避けた。 そして・・・ 超至近距離から、日本刀で三号の眉間に突きを喰らわした。 |
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いて・・・ 急所は反則だろ! |
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三号の眉間に少し傷がつき、血が少し流れる。 |
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驚異的な固さだが……素人だな。 それでどうやって俺に手傷を負わせるのだ? |
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夜銃は片腕で三号の首を素早くつかみ、首をしめながらゆっくりと上に持ち上げた。 三号の2mという巨体がゆっくりと浮かぶ。 |
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ぐお…! あぁあああ! |
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丈夫だから殺されないと思うのなら、大きな間違いだ。 一瞬で窒息死させてやる。 |
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三号は苦痛で顔を歪ませながら…… ・・・ ・・ ・ ニヤリと笑った。 |
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勝った。 | |
三号は奥歯を強く噛んだ。 奥歯からパチンという、電源のオンオフスイッチを押したときと同じ音が聞こえる。 |
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? | |
突然、売れ杉三号が青色の閃光をはなち…… ・・・・ ・・ 大爆発した! |
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!! | |
三号の服の中にはC-4と呼ばれるプラスチック爆薬が1kg仕込まれていた。 C-4とは引火・振動に強く安定した威力を持つ、もっとも有名な軍用のプラスチック爆薬の一つである。 |
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喰らえ! 自爆しないテロ! |
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爆発の範囲は半径20m。 爆風圧を受け、夜銃の肉体に凶悪な圧力がかかる。 夜銃は三号の首から手を離し吹き飛ばされる。 |
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ぬがぁ!! | |
爆風圧が森の展望台を削り破壊し…瓦礫に変える。 |
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な…なんの! | |
夜銃は後方に跳躍して、爆発から逃れようとした。 しかし間に合わない。 夜銃は普通の人間なら圧死するような爆圧をくらい。 肺出血をおこし。 熱で全身が黒こげになった。 |
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がっが…がが…… 体にプラスチック爆弾をしこんでいたのか! |
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まぁな。 | |
夜銃は全身が焼けただれ、爆圧による打撃で内臓に大きなダメージを受けた。 夜銃は口から黒煙を吐き。 全身をふらつかせる。 一方、三号は上半身の服が破れ 上半身が裸の状態になっているが……肉体は無傷だった。 |
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とどめです! | |
女銃鹿が三号の背後で大きく跳躍する。 そして三号の肩を踏み台にして、更に大きく跳躍した。 その姿は、優雅に崖を飛び渡る鹿のようだった。 |
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不覚っ…… | |
女銃鹿が夜銃の6m上空から、銃の引き金を連続して引いた。 撃針が雷管を叩く 撃針が雷管を叩く 撃針が雷管を叩く 撃針が雷管を叩く ニューナンブm60が4連続で火を吹く。 4発の銃弾が、夜銃の両肩と両腿を貫いた。 |
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む・・無念。 | |
夜銃は背中からゆっくりと倒れ、瓦礫の上で大の字になった。 |
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すげーーー! 手はず通りすぎて怖いぐらいだ。 楽勝ってやつだな。 |
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どんな強い相手でも、予測できない攻撃が直撃すれば一発で沈みます。 | |
奇襲が決まれば戦力差なんて関係ないよな。 ようは敵が力を出しきる前につぶせばいいわけだ。 |
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殺せ。 | |
夜銃は大の字になりながら、吐き捨てるように答えた。 |
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お断りします。 あなたの犯した罪は、殺人教唆と器物破損、不法侵入、誘拐です。 大きな罪ですが処刑されるような罪はありません。 |
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これに懲りて考えを改めるんだな。 | |
・・・・・。 | |
カタキ討ちをやめてください。 | |
・・・・・。 | |
敗者は黙って、勝者の言うことを聞くもんだ。 | |
ふっ・・・・。 | |
? |
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はは…… くっははははは! |
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夜銃が天に向かって大声で笑い出した。 |
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そういえば初めて攻撃した時も、殺そうとはしなかったな。 | |
最初から殺すつもりはありません。 私は死刑を受けるような人間以外は殺しません。 |
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なるほど大罪を犯した重罪人でないかぎり殺さないわけだ。 残虐非道な処刑女が聞いて呆れる。 |
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てめぇ……上目線で言える状況じゃないだろ。 |
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くくっ…。 これが笑わずにいられるか! |
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何がおかしいのですか? | |
この戦い俺の勝ちだ! | |
夜銃は満面の笑みで、そう答えた。 |
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