第36話 | |
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60G「死刑を執行すれば人が1人死ぬ。人を殺した重圧で鬱になる死刑執行人もいるそうだ」 |
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男銃鹿(おじゅうか)! 電話に出て下さい! |
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・・・・・。 つながりませんね。 |
【ビルの屋上】 深夜8時。 ここは愛知県にあるビルの屋上。 男銃鹿に激怒した女銃鹿(めじゅうか)は男銃鹿に何度も電話した。 |
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男銃鹿ぁ! |
しかし電話がつながらない。 女銃鹿は憤怒し、携帯電話に怒鳴りつけた。 |
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男銃鹿の件はとりあえず後回しにしましょう。 |
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くっ。 |
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それよりも…… |
島乃守(しまのまもり)の話に戻りましょう。 島乃守の情報を洗い直したので報告します。 「島乃守(しまのまもり)」
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分かりました。 確定した情報を教えてください。 |
羽山あきらは女銃鹿に捜査資料のコピーを渡し、説明した。 |
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凶器のライフルから検出された指紋と、島乃守の指紋が一致しています。 |
「凶器のライフルから検出された、指紋と島乃守の指紋が一致」 ![]() 島の生存者が島乃守の犯行を目撃。 島乃守自身も犯行を認めています。 |
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悪魔に取り憑かれたように人を殺したと… |
島乃守は自白しています。 |
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ここまでは前回も聞きました。 真っクロクロな犯人です。 |
気になる点はありますか? |
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島乃守が殺したと言われる人数が気になります。 |
島乃守は300人も殺していません。 |
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? |
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島乃守と言えば、300人の島民を虐殺した犯人で有名です。 |
しかし… 島で見つかった死体は252人 行方不明者は48人 |
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行方不明者は48人? 行方不明者はどうなったのですか? |
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分かりません。 |
島乃守以外にも犯行に関わってる人物がいて… 行方不明者の48人を誘拐したかもしれません。 |
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共犯者がいるかもしれませんね。 |
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証拠がないので断言はできません。 |
ただ… 島乃守が最低でも34人を殺したのは間違いないです。 本人の自白… 使われた凶器… 目撃者の証言… その3つが一致しています。 |
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最低でも34人も殺した極悪人で間違いないようですね。 |
女銃鹿は、羽山あきらから受け取った資料を注意深く確認しながらうなずいた。 |
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被害者の親族も島乃守の処刑を望んでいます。 |
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これだけ情報が揃えば十分です。 |
島乃守を… 処刑します |
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さっそく処刑の計画を立てましょう。 |
カタン… ガタ… バタン… |
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? |
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? |
突然… 複数の音が一度に発生した。 階段を上がる音。 扉をあける音。 扉をしめる音。 その全てが同時に発生した。 |
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なにが起きた? |
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よう女銃鹿。 |
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60G!? |
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あらわれ方が人間と違う! グノーシャか? |
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女銃鹿元気か? |
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何の要件ですか? |
今はゲームの話や下ネタにかまう暇はありませんよ。 |
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そういう話をしにきたわけじゃねーよ。 |
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マジですか!? |
60Gはゲームの話と下ネタしか話さないと思ってました |
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失礼な奴だ…… |
ゲーム以外にもアニメの話とかニコニコ動画の話もいけるわ。 2ちゃんまとめサイトの話もできるわ。 |
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見かけはゴツイけどオタクさんなんですね。 |
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60Gは見た目はヤクザですが、中身はキモオタです。 |
この前も秋葉原のゲーム屋で店員が使用してるオッパイマウスパットのオッパイをもみながら…… 店員と2時間ぐらいレトロゲームの話をしてました。 「秋葉原」 |
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プライベートの話はやめろ! |
俺が汚れキャラだと誤解される! |
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汚れキャラという自覚がない! |
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ははは…… 悪い人ではないようですね。 |
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やばい、一般人っぽい兄ちゃんが軽く引いてるぞ。 |
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それでなんのようですか? ゲームを遊ぶ約束なら後にして下さい。 |
・・・・ ・・ |
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いや… |
マジな要件だ。 |
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? |
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単刀直入に言う。 |
島乃守の処刑は…やめろ。 |
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ぴくっ・・・ |
60Gの提案を聞いた女銃鹿の目が、攻撃色に変わった。 |
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お断りします。 島乃守は処刑します。 |
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おまえのためだ! やめろ! |
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どういうことですか? |
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理由は言えない。 |
島乃守の処刑はやめろ。 |
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理由は言えない? なんの冗談ですか? |
60Gは女銃鹿の目をまっすぐ見据えた。 その目には迷いはない。 |
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なぁ女銃鹿。 |
このまま処刑を続けたら、お前はどこかでオオポカをかますぞ。 |
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余計なお世話です。 |
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女銃鹿が処刑をすると言った時……俺は反対しなかった。 |
女銃鹿は真面目な正義ちゃんだから悪い奴を倒したいんだなー。 ぐらいにしか考えてなかった。 |
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・・・・・。 |
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でもな、最近の女銃鹿を見てたら考えが変わった。 |
処刑をはじめてから女銃鹿の笑顔が減ったように見える。 処刑が女銃鹿の心を傷つけているように見える。 |
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勝手に決めつけないでください。 |
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俺は女銃鹿がどんな気持ちで処刑をしているのか気になった。 |
だから…… 死刑執行人の体験談が書いてある本を、書店で探して読み漁った。 「書店」 |
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・・・・・。 |
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死刑執行人の体験談が書いてある本を読んで分かった事がある。 |
処刑ってのは、つらい仕事なんだな 処刑を執行すれば人が1人死ぬ 人を殺した重圧で鬱になる死刑執行人もいるそうだ |
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60Gに私の何が分かるのですか! |
私がどんな気持ちで処刑をしているのか分かるのですか? |
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分からねーな。 |
俺は処刑を執行した経験がないもんな。 だけど…… 女銃鹿にこのまま処刑をさせることが、女銃鹿の幸せだとは思えなくなってきた。 |
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(何度も何度も知ったような事をいいかげんにして下さい) |
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そこで提案がある。 |
やめちまえよ。 処刑を。 |
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!? |
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女銃鹿の処刑は別のグノーシャに引き継がせればいい。 |
人を殺しても何も感じない、冷酷なグノーシャを紹介してやる。 |
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(冷酷なグノーシャ……) |
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どうだ? 悪い話じゃないだ… |
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何度も何度もも知ったような事を言うな! |
女銃鹿は火がついたように怒りだした。 |
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・・・・・・。 |
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私は最初から、人を殺す苦しみも背負うつもりだ! |
人を殺すことに痛みを感じない奴に、処刑を任せられるわけが無い! |
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あの家族に出会ってからお前は変わったな。 |
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きっかけはあの家族かもしれません。 |
今は私の意志で処刑している! |
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(あの家族?) |
重い沈黙が流れた。 ・・・・ ・・ |
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交渉決裂か。 |
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もう話す要件はありません。 家に帰ってください。 |
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おまえが処刑をやめないと言うなら、百万歩ゆずって受け入れる。 |
だが! 島乃守は絶対に殺すな! 絶対に後悔するぞ! 「島乃守は殺すな!」
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後悔? |
なぜ私が後悔するのですか? |
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それが言えたら苦労しねーよ。 |
言えねーから困ってるんだ。 |
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話になりませんね。 帰って下さい。 |
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クソッ! |
60Gは胸のポケットからタバコの包み紙をとりだし… いまいましい顔で床に叩きつけた。 |
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? |
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? |
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だったら俺が島乃守を守る! |
お前に島乃守は殺させねぇ! |
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(宣戦布告!?) |
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来いよ三下グノーシャ。 無限の接近戦を見せてやる。 |
60Gは両手をポケットにいれ、ヤクザのように威圧した。 |
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大闘争をはじめるのですか? |
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お前が島乃守を狩る! 俺が島乃守を守る! それだけだ! |
∞行動! |
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!? |
女銃鹿と羽山あきらの目の前でありえない事が起きた。 突然、60人の60Gが現れて… 1秒後に1人の60Gに戻った。 「突然、60人の60Gが現れて・・・」 ![]() 「1秒後に1人の60Gに戻った」 ![]() |
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な… なんだこれは… |
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∞行動です。 |
60Gの脳に内包された60の道具が 同時に動き… 何百回も行動をします。 |
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60の道具? |
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60Gの本名は六十神(むそじかみ) |
60の付喪神(つくもがみ)が頭部に宿っているという理由でついた名前です。 |
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付喪神(つくもがみ)じゃねーよ。 |
60種類の道具が、俺の脳味噌になっているだけだ。 プレイステーション3とか… プレイステーション2とか… プレイステーションVITA… とかの欠片が入ってるぜ。 |
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ゲーム機ばっかりですね。 |
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将来的にはプレイステーション4も俺の脳味噌になるかもな♪ |
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60Gは接近戦を極めています。 |
接近戦は分が悪い。 離れた距離で戦わないと勝てない。 |
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よく分かっているな。 |
では…接近戦を極めたグノーシャの大闘争を魅せてやる。 |
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ごくっ…… |
60Gはゆっくりと両手を前に突き出し、空手家のような構えをとった。 ・・・・ ・・ |
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∞ 行 動 ! |
1秒でできる行動を600回実行! |
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・・・・・ |
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・・・・・ |
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終わりだ。 |
【ビルの地下1階駐車場】
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・・・・・。 |
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・・・・・。 |
女銃鹿と羽山あきらは車の後部座席で気を失っていた。 2人はロープで両手両足を縛られている。 |
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まっ……こんなもんだろ。 接近戦では負ける気がしねぇ…… |
60Gは∞行動を使用して、1秒でできる行動を600回実行した。 60Gは1秒の間に… 女銃鹿と羽山あきらをチョークスリーパーで気絶させ… 所持していたロープで、女銃鹿と羽山あきらを拘束。 2人を抱えて5階の屋上から、地下1階の駐車場まで階段で下り… 車に乗った。 |
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さて、家にお帰り頂こうか… |
60Gは車のキーを回して、車のエンジンをかけアクセルを踏んだ。 |
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