第37話 | |
60G「女銃鹿に島乃守の情報は伝えない。だが女銃鹿に島乃守は殺させない。 |
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どういうことだよ! クソオヤジ! |
女銃鹿が60Gの攻撃で気絶する2日前・・・ ここは新宿にあるビルのオフィス。 そのオフィスの一室で60Gは怒り狂っていた。 「新宿にあるビル」 「オフィスの一室」 |
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女銃鹿(めじゅうか)が島乃守(しまのまもり)を処刑しようとしている。 |
それだけだ。 「島乃守(しまのまもり)」 60Gの目の前で目つきの鋭い男が仕事をしていた。 目つきの鋭い男は机の上で書類に判を押している。 |
島乃守は無実の罪で刑務所に服役中だったな。 |
目つきが鋭い男の名前はなゐの神衣。 彼は全てのグノーシャを管理する総管理者というポジションにいた。 「なゐの神衣(ないのかむい)」 |
島乃守は女銃鹿が人間だった時の父親だろうが! |
女銃鹿に親殺しをやらせるのかよ! |
女銃鹿の自由意思で殺す。 それだけだ。 |
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そもそもなんで島乃守が無実の罪で刑務所にいるんだよ! |
島乃守をなぜ救わなかった? |
島乃守を救うには、グノーシャの存在を警察に伝えなければならない。 |
そんなリスクをおかしてまで救う義理はない。 |
ぐっ…… | |
それにお前も島乃守の存在を無視していたのではないのか? |
救ってないのはお前も同じだ。 |
ぐぬぬぬぬぬっ。 | |
60Gの負け。 お父様に口先で勝つのは無理ー。 |
蜻蛉斬り(とんぼきり)が、後ろにあるソファーの上であぐらをかいて座っている。 彼女は大学ノートに、TRPGのシナリオで使うダンジョンを書いていた。 「蜻蛉斬り(とんぼきり)」 |
とにかく、女銃鹿に島乃守の正体を教えるからな! | |
・・・・・。 | |
・・・・・。 |
・・・・ ・・ |
なんだよ? なんで黙る? |
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教えたら、女銃鹿は島乃守を殺さない。 |
一件落着だ。 |
なんの発展性もない。 | |
はぁ? |
意味が分かんねーよ。 |
このまま人間のようにノンビリ死刑をしても、女銃鹿は成長しないな。 |
喪失体験を味わってもらい成長したほうが良い。 |
だから意味が分かんねーよ。 | |
気が変わった。 | |
??? | |
・・・・・。 |
・・・・ |
60G |
女銃鹿に島乃守の情報を伝えるな。 |
伝えなかったら、女銃鹿が島乃守を処刑するだろうが! |
60Gは速攻で怒り狂い。 なゐの神衣の胸ぐらをつかんだ。 なゐの神衣は表情を変えない。 |
女銃鹿は島乃守を処刑するだろうな。 | |
どんだけ外道なんだよ。 女銃鹿に親殺しをやらせるつもりか? |
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女銃鹿には処刑と言うモノの本質を早く学んでほしい。 |
そして人間が届かなかった場所を目指して欲しい。 そのために親殺しという経験をさせるのも1つの手だ。 |
だから意味がわからないと…… 何度いえば…… |
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女銃鹿に島乃守の情報を伝えるな。 それだけだ。 |
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ふざけるな! クソオヤジ! |
60Gはさらに激怒。 |
・・・・・。 |
60Gが激怒した瞬間… 60Gの体から、衝撃波が発生した。 |
(どこから衝撃波が発生した? この力は知らない) |
衝撃波はデスクの上にあった書類を吹き飛ばし、全ての窓ガラスを破壊した。 綺麗に整頓された部屋は一瞬にして、暴徒に荒らされたような状態に変化した。 |
見損なったわ! まじで見損なったわ! |
完全に犯罪者じゃねーか! 痩男(やせおとこ)を非難できねーよ! 「痩男(やせおとこ)」 |
犯罪者ではない。 |
私は日本をかえるための戦(いくさ)をしているだけだ。 戦に死はつきものだ。 |
なお悪いわ! 人の不幸をなんだと思っている! |
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言うものだな…… |
なゐの神衣も60Gの胸ぐらをつかんだ。 60Gもなゐの神衣も相手の胸ぐらをつかんだ状態になる。 |
な……なんだよ? | |
同意を求めるつまりはない。 非難したければ非難しろ。 |
人間ならば非難して当然だ。 |
だが… 女銃鹿に島乃守の情報を伝えたら殺す。 |
突然、ビル全体が脅えるようにカタカタと揺れた。 「地震が発生」 東京で震度3の地震が発生。 地震は瞬く間に広がり… 日本全土で震度3の地震が発生した。 |
な… |
60Gの肉体にも地震が発生した。 60Gの肉がブルブルと強制的にゆれた。 |
(お父様の感情が揺れるのは久しぶり…) |
日本全土で発生した震度3の地震はさらに広がる! アジア! 北米! 欧州! 世界をおおい尽くす! ついに… 地球全体が縦に…ゆれた! 「地球全体が縦にゆれた」 |
お父様。 もれてるもれてる。 |
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少し熱くなりすぎたか。 不便な体だ。 |
なゐの神衣は60Gに軽くデコピンをくらわした。 60Gは2歩後ずさりして…体勢を崩し床に尻もちをついた。 |
(なんだこれ……? なんでこんなに怖いんだ?) |
60Gは全身が蒼白になりガタガタと震えた。 生まれて初めて感じる恐怖。 血液が全て冷水になったと思うほどの寒気を感じていた。 |
(こんなやりとりはグノーシャだったら大したことじゃねぇ…) |
なのに魂の奥底から怖い。 遺伝子の奥底から怖い。 |
怖いのはしょうがない。 お父様は日本人の天敵。 |
「日本人の天敵」 |
え? どういうことですか? |
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・・・・・・。 |
蜻蛉斬りは何も答えない。 60Gは震えながら、床に敷いてあったカーペットを握りしめた。 |
(蜻蛉斬りさんもクソオヤジ側のグノーシャか…) |
60Gは完全に意気消沈して黙りこくった。 |
再度言おう。 女銃鹿に島乃守の情報を伝えるな。 |
女銃鹿には様々な体験をして、より深く死刑を知ってもらいたい。 |
ああ……分かったよ。 |
60Gは拒否することができなかった。 刻み込まれた恐怖心が拒否することを許さなかった。 |
【女銃鹿の家】 4日後… 女銃鹿の家。 「女銃鹿の家」 女銃鹿は2日前にビルの屋上で、60Gに気絶させられた。 その女銃鹿は自室のベッドで寝ていた。 |
ん……? | |
目を覚ました♪ 2日ぶりに目を覚ました♪ |
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さっそくガリガリ君コーンポタージュ味でつくったオカユを食べて、元気になってもらうの。 |
女銃鹿の妹と三号は女銃鹿を看病していたようだ。 女銃鹿の枕元にはガリガリ君コーンポタージュ味と米でつくったオカユが皿に盛られている。 オカユには食べ物で遊んだ形跡が残っていた。 「三号」 「女銃鹿の妹」 |
ここは? 私の家? |
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60Gちゃんが気絶したお姉ちゃんを送り届けてくれたの♪ | |
見た目はヤクザだけど気さくな人だったなー。 |
60G「詳しいことは言えないが、俺は女銃鹿の味方だからな」 ……と言ってそのまま帰ったぜ。 |
味方? | |
ん? どうした? |
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味方ではないですよ。 |
処刑の妨害が60Gの目的です。 |
お姉ちゃんは相変わらず処刑ちゃんだねー。 |
私はお姉ちゃんの処刑には手を出さない方針だから、関係ないけどね。 |
手を出さない方針? | |
ちょいむかしは、お姉ちゃんの処刑にガンガン口出ししてたけどね。 |
お姉ちゃんの処刑に口出ししすぎると、お姉ちゃんに嫌われるからやめたの。 目先の人間関係に流されまくるよ。 |
女銃鹿は死刑のことになると怒るよな。 | |
60Gは今どこに? | |
2日前にお姉ちゃんを家に置いてから、どこかにいっちゃったよ。 |
連絡がないから分からないの。 |
!? |
女銃鹿はベッドから飛びおき、机のひきだしを開けた。 そして中からニューナンブm60という名の回転式拳銃を取り出した。 |
お……おい…… いきなり戦闘か? |
女銃鹿は窓を開いて窓の外に銃口を向けた。 |
ターゲットは島乃守がいる岩手県の終刑務所(おわりけいむしょ) |
終刑務所の屋根を銃撃します。 |
終刑務所? |
女銃鹿はニューナンブm60の引き金を引いた。 ニューナンブm60の撃鉄が振り下ろした拳のように雷管を叩いた。 |
…っらえ! |
ニューナンブm60が火を噴いた! 女銃鹿の銃撃は∞の銃撃。 愛知県で放たれた銃弾は、瞬く間に岩手県に到達! |
どうでる60G。 |
銃弾は岩手県の終刑務所に向かって直進した。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ |
女銃鹿に親殺しはさせねぇ! |
岩手県のどこかで60Gが吠えた! 終刑務所の100m手前にある山中で、何かが上昇した。 「何かが上昇した」 |
!? |
その何かとは50口径弾だった。 アンチマテリアルライフルに使われる極大のライフル弾。 「50口径弾」 |
ふん。 通常射撃か。 |
女銃鹿のはなった銃弾は50口径弾の40m手前で…… 砕けて消えた。 |
私の銃弾が砕けた? 敵の弾に接触してないのに砕けた? |
女銃鹿は何がおきたか分からずに困惑した。 |
【終刑務所の100m手前にある山中】 60Gは終刑務所の100m手前にある山道にいた。 |
迎撃完了。 |
60Gは銃を所持していない。 大量の50口径弾がはいったエコバックを肩にぶら下げていた。 |
俺の手のうちは知られてねーしな。 しばらくは確実に守りきれるだろ。 |
60Gはなゐの神衣の言葉を思い出した。 |
ちっ。 |
なゐの神衣「女銃鹿に島乃守の情報を伝えたら殺す」 |
女銃鹿に島乃守の情報は伝えない。 |
だが・・・ 女銃鹿に島乃守は殺させない! 俺が絶対に阻止する! |
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それで問題ないよな。 クソオヤジ! |
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60Gは1人で悪態をついた。 「終刑務所」 |
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