94話(Bパート) | |
2019年8月1日 Aパートからの続き。 ほんと、もうそろそろ終わりそう。 終わったらどうしよう? |
女銃鹿、おまえの選択を見せてもらうぞ。 | |
大げさな。 すぐに終わらせますよ。 |
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女銃鹿がツカツカと前進する。 |
・・・・・・。 | |
ここは間(はさま) 標高200mのゴミ山の頂上。 「現在位置」 |
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んん~? ここに何があるのかな? |
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この世界は力が使いにくくて、よく分からないかも~。 |
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ターゲットが目の前で倒れてますよ。 |
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・・・・・・。 | |
ゴミ山の頂上で、みんなやる男が倒れていた。 「みんなやる男」 |
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のの! パパを支配した犯罪オジちゃんなの! |
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って! 黒雲はみんな逃げたんじゃないのかな? |
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こいつは完全な黒雲ではない。 黒雲になりきれなかったグノーシャだ。 |
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おそらく人間でもある。 |
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モブっぽいのに、けっこう設定が盛ってあるキャラなんだねぇ。 |
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・・・・・・。 |
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お父様、銃はありますか? |
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ある。 パス。 |
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なゐの神衣は、背負いカゴに火ばさみをつっこみ、中からニューナンブm60を取り出す。 そして女銃鹿に投げ渡した。 |
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(パシッ!) | |
女銃鹿が振り向きもせずに銃を受け取る。 |
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・・・・・・。 | |
一応確認。 みんなやる男をここで処刑したらどうなりますか? |
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みんなやる男の存在だけが消えるだろうな。 | |
みんなやる男の娘は、みんなやる男の記憶を失った状態で生き残る。 「みんなやる男の娘」 |
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そうですか、ならば迷う理由はありませんね。 |
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ちょっ!お姉ちゃん! これ以上の殺生になんの意味があるのかな? |
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このままほっといてもハッピーエンドになると思うよ。 |
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駄目です。 処刑します。 |
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彼によって多くの人々が苦しんで死にましたしね。 |
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それはお姉ちゃんの本心かな~? 本当に処刑するつもりならもっと早く処刑できた筈(はず)だよね? |
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ええ。本当はスイングバイ加速射撃で処刑するつもりでした。 | |
だが、あの時は緊張で手が震えて撃てなかった。 それだけの話です。 |
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(僕の影響もありましたよ) | |
女銃鹿の目についた冤罪(えんざい)スレイヤーが小さくつぶやく。 |
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・・・・・・。 | |
今は処刑をやめる理由がない。 |
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その・・・ようだね。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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(ぬぬぬ、こうなったらお姉ちゃんを止める術(すべ)は無いようだねぇ) | |
私は死刑をするたびに傷つくお姉ちゃんを見るのが嫌だけど ここで止めたらお姉ちゃんに嫌われるから止められないの。 メスは家族関係を破壊しないために戦略的な撤退をする。 |
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(僕はこの時を・・・) |
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ゴソゴソ・・・ (←ポケットからメモ帳と鉛筆を取り出す) |
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起きろ! みんなやる男! |
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処刑の時間だ! 女銃鹿がみんなやる男の腹を蹴ってひっくり返す。 |
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がっ! げほっ! |
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ああ・・・・ げぽっ! みんなやる男は激しく胃液を吐いて、目を覚ました。 |
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ジャキッ! | |
・・・・・・。 | |
女銃鹿は、目を覚ましたみんなやる男に銃口をつきつける! |
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え? 女銃鹿さん? 俺は負けたのか? |
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ああ! 負けたとも! |
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そして! あなたのせいで多くの人が死に、多くの被害者遺族が悲しんだ! その罪は万死に値します! |
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くっ! こんなにアッサリ負けたのか・・・ |
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ううう・・・ みんなやる男は涙をこらえながら、咽び泣く(むせびなく) 娘への愛。 自分への絶望。 犯した罪の後悔! さまざまな感情がそこにはあった。 |
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反論はありますか! | |
おれは! 娘と俺のカタキが取りたかったんだ! |
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こうするしか無かったんだ! |
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悲惨な目にあい、化け物に取り憑かれた事実は同情に値します。 | |
しかし! それらを考慮しても、あなたの犯した罪は酷(ひど)すぎる! 特に、100人以上の人間を解体しながら犯(おか)した罪は絶対に許されません! |
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処刑します! | |
女銃鹿は拳銃の銃口を、みんなやる男のデコにくっつけ 拳銃のトリガーに指をかけた。 |
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ああ・・・ | |
即死刑なのかぁ・・・ |
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お姉ちゃんがゼロ距離射程。 |
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かなり慎重だな。 |
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この距離ならはずしません! | |
ゼロ距離からの! スイングバイ! |
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加 速 射 撃 ! |
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女銃鹿の弾丸が閃光手榴弾のように光り! 周囲は真っ白な白に染まる! その白は一片の汚れもなく、ただただ白い。 |
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さ・よ・な・ら・だ! | |
ひいいいいぃ! | |
俺は・・・ こんなにアッサリ・・・ 終わってしまうのか? |
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・・・・・・ ・・・・ ・・ |
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・・・・・・。 | |
まだ・・・ 情報不足では? |
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は? | |
え? |
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冤罪(えんざい)スレイヤーが勝手にしゃべってるの! |
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全てを知ってから判断しても、遅くないと思いますよ。 |
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<○>ズキキッ! | |
次の瞬間。 女銃鹿は右目に激痛を感じ、膝(ひざ)をついた。 |
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なんだ、また冤罪(えんざい)スレイヤーの誤作動か!? | |
なんでまたこんな時に!? |
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??? |
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(ようやく はじまったか) | |
あの女もとんでもない地雷をしかけたものだ。 「あの女 = ∞射程ノ女銃鹿」 弾丸のグノーシャで、作中で最強のグノーシャ(女銃鹿とは別のグノーシャ)」 |
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冤罪(えんざい)スレイヤー! あなたの目的はなんだ! |
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女銃鹿の支援です。 | |
僕が女銃鹿に、みんなやる男の全情報を提供します。 |
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は? | |
全情報って? もう、十分すぎるほど |
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∞ 調 査 ! |
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あああああああああああああ! | |
目が! 光がぁぁぁ! 女銃鹿の目から凄まじい数の光の束があふれ出る! 光の束は、あらゆる時間に拡散する! |
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??? | |
??? | |
がっ! ああああああ! |
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冤罪(えんざい)スレイヤーあああああああああああああああ! なにをおおおおおお? |
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フェイズ1 | |
拡散した光で みんなやる男の全情報を収集します。 |
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完了。 | |
フェイズ2 ただいまより、みんなやる男の全情報を女銃鹿の脳にインポートします! |
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だから! | |
なんのつもりなんだよぉ! |
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みんなやる男の全てが分かります。 | |
冤罪スレイヤーからあふれた光は情報を収集し、女銃鹿の目に戻っていく 女銃鹿の脳にみんなやる男の全情報が叩き込まれる! |
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ああああああああああああああ! |
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さて、どうなるかな? | |
なゐの神衣がメモ帳を開き、カブトムシの観察日記をつける少年のように女銃鹿を観察していた。 |
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パパ! ここまでの流れを全部仕組んだね! |
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お姉ちゃんに何かあったら許さないよ! メスが光速で刀を抜き、なゐの神衣につきつける。 が、無駄! 即座になゐの神衣はチョップで刀を叩き割る! |
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なの!? | |
黙って見ていろ。 いずれたどり着く場所だ。 |
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ここで発狂する程度のゴミなら死ねばいい。 |
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ぬううう。 やはりパパは善人じゃないね。 |
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いずれ倒す必要があるかも~。 (パパは意識が高すぎる系モンスターだよ) |
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ああああああああああ! |
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インポート完了。 | |
フェイズ3 ただいまより、もっとも重要なみんなやる男の記憶を脳内で再生します。 優しい現実をもっと見てください。 |
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はがっ・・・ (胃液を吐く) |
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女銃鹿の脳内でみんなやる男の記憶が再生された。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 2年前の出来事。 ・・・・ ・・ 滝のような雨がふる とある崖(がけ)の下。 |
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ぐ・・・うう・・・ 内蔵をやられたか・・・ |
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みんなやる男は仕事中に30mの崖(がけ)から落ち 全身打撲による骨折、内臓破裂の大怪我を負っていた。 |
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・・・・・・。 | |
おい父ちゃん! 救助ヘリを呼んだぞ! |
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それまで、頑張ってくれ! みんなエエ子がみんなやる男の手を握っている。 |
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これは駄目かもしれん。 | |
俺にもしものことがあれば、死亡保険で4000万円は入ると思う。 しばらくはそれで母ちゃんと暮らしてくれ。 |
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何言ってるんだよ! 生きろよ! |
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みんなエエ子が泣きまくる。 |
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そう言われても・・・ これ以上は・・・ |
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だ、大丈夫だから! |
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うう・・・ | |
そうだ。 エエ子・・・ 最後に思い残すことがないように、お前に言ってもらいたい言葉があるんだ。 |
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え? | |
いきなりで悪いけどさ・・・ 俺・・・ |
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ええ子に お父さんありがとう。 ・・・と言ってもらいたい。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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バカな俺に与えていい言葉じゃないかもしれない。 | |
でも、俺が本当に欲しいモノはその言葉だけなんだ。 俺にとってその言葉が人生の全てだ。 みんなやる男は激痛で苦しみながら懇願(こんがん)した。 |
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あ・・・ | |
ありがとうお父さん! | |
みんなエエ子は無理やり笑顔をつくり、言葉を贈る。 |
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・・・・・・。 | |
ありがとう。 その言葉が俺の全てだ。 みんなやる男は涙を流して娘に感謝した。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ その後、救難ヘリに救助され、みんなやる男は一命をとりとめる。 それが、女銃鹿が真っ先に見たみんなやる男の過去だった。 |
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・・・・・・。 | |
ありがとうお父さん? この発言はどこかで? 女銃鹿は父親を処刑した日の出来事を思い出した。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 昔。 とある森の中。 女銃鹿は父親に銃口をつきつけていた。 「女銃鹿の父親 : 無実の罪で女銃鹿に処刑された」 |
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分かった。 | |
ワシ・・・ 死んで詫びる。 |
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・・・・・・。 | |
最後に言い残すことはありませんか? | |
最後か・・・ | |
・・・・ ・・ |
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最後に言い残す言葉はないが最後に聞きたい言葉がある。 |
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? | |
図々しいお願いだが、女銃鹿さんに言ってもらいたい言葉がある。 |
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な、なんですか? |
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お父さんありがとう。 | |
娘にそっくりな女銃鹿さんに・・・ お父さんありがとう。 ・・・と言ってもらいたい。 |
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・・・・・・。 | |
沢山の島民を殺したワシに与えていい言葉じゃない。 | |
娘達を殺したワシに与えていい言葉じゃない。 |
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・・・・・・。 | |
図々しいのは100も承知だ。 | |
でも、ワシが本当に欲しいモノはその言葉だけなんだ。 ワシにとってその言葉が人生の全てだ。 |
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分かりました。 言葉だけならお安い御用です。 |
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おお! 引き受けてくれるかね? |
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いきますよ・・・ | |
・・・・ ・・ お父さん ありがとう。 |
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ありがとう。 | |
その言葉がわしの全てだ。 |
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・・・・・・。 |
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ありがとうなお父さん! | |
ありがとう。 その言葉が俺の全てだ。 |
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お父さんありがとう。 | |
ありがとう。 その言葉がわしの全てだ。 |
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同じ・・・ | |
なのか? |
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ありがとう。 その言葉が俺の全てだ。 |
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ありがとう。 その言葉がわしの全てだ。 |
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女銃鹿の脳内で過去の記憶とみんなやる男の過去が交錯する。 |
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これを見てほしかった。 | |
この情報は |
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今回の事件とは関係ない情報だろーが! |
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そう・・・ですかね? | |
そうだとも! | |
だから、私の邪魔をするな! 高速で失せろ! |
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ぐちゅっ! | |
女銃鹿は眼球に指をつっこみ、眼球を引きちぎって捨てる! 一切の躊躇(ちゅうちょ)なく捨てる! |
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いきなりの眼球廃棄! | |
お姉ちゃん判断早すぎ! どんだけー、どんだけー! |
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ふっ・・・。 | |
これで、邪魔者はいない! | |
ジュルン! |
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無駄ですよ。 僕は何度でも生え、何度でも真実を提供する。 |
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冤罪(えんざい)スレイヤーは一瞬で再生する。 |
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そうですか! | |
なら見てろ! 私は止まらない! 女銃鹿は震える手で銃を構え、みんなやる男の口に銃口をつっこんだ! |
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あがっ!? | |
・・・・・・。 | |
即座に処刑が再開される。 |
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(お姉ちゃんは鉄壁の処刑ちゃんだよ~。この程度で止まるわけないの) | |
「現在位置」 |
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被害者遺族を苦しめた犯罪者を処刑する! | |
その1点に間違いなどない! 絶叫! 大絶叫! 女銃鹿がノドをつぶすほど叫ぶ! 悲鳴のように叫ぶ! |
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うっ・・・ | |
この鬼気迫る雰囲気にみんなやる男も死を覚悟した。 |
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・・・・・・。 | |
・・・・・・。 | |
終わるか? |
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さよならエエ子ぉぉ! |
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ああ、さよならだ! | |
ゼロ距離からの! スイングバイ! 加 速 射 撃 ぃ ぃ ! |
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最後の銃撃。 周囲を埋め尽くす強い強い光。 ・・・・ ・・ そして・・・ 光の中から、突然言葉が現れる。 ・・・・ ・・ |
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・・・さん。 | |
女銃鹿さん。 | |
ホントはみんなやる男さんに生きててほしいと、幸せになって欲しいと思っているのだろう? |
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!? | |
!?!?!?!?!? |
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エエ子・・・ |
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私は! 私は! 私は! 私は! |
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ガチャ! | |
女銃鹿が銃のトリガーを引く! 撃針が雷管を叩く! 弾底部から燃焼ガスが噴出! 弾丸が・・・ |
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あなたは優しい人だ。 |
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!? |
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おおおおおおおおおお! | |
女銃鹿は拳銃を強く握り、スイングバイ加速射撃もろとも拳銃を 破 壊 し た ! |
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グシャ! | |
!? | |
!? | |
銃撃を拳銃ごと握りつぶして無効化したの!? |
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馬鹿な! | |
握りつぶした衝撃で女銃鹿の右腕が消し飛び! 女銃鹿も衝撃で吹き飛ぶ! |
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お姉ちゃーーーん! | |
女銃鹿さーーーん! | |
限界か。 | |
なゐの神衣は跳躍して、吹き飛ぶ女銃鹿に飛びつき 女銃鹿をキャッチした。 |
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バチャ! バチャ! |
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女銃鹿の右腕の付け根から井戸水のように血があふれている。 女銃鹿は拳銃を握りつぶしたダメージで右腕を失っていた。 |
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・・・・・・・。 | |
お姉ちゃん。 | |
殺(や)れなかったんだね・・・ |
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私は・・・なにを? | |
なぜ私はみんなやる男を救った? |
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みんなやる男の全てを知ってしまった。 | |
みんなやる男の優しさも、苦しみも全て知ってしまった。 だから殺(や)れなかったのだ。 |
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バカ・・・な。 | |
この私がそんなことで・・・ |
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こんな話を知っているか? | |
昔・・・ 死刑賛成派の優しい男がいた。 そして、あろうことか その男の息子は大きな犯罪を犯し、死刑判決を受けたそうだ。 |
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その死刑賛成派の優しい男はどうなったと思う? |
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ふるふる(黙って首をふる) |
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男は息子の命が惜しくなって死刑反対派に寝返ったそうだ。 | |
優しい男は息子のことを誰よりもよく知っていて 知っているからこそ、息子の死刑が受け入れられなかった。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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人間は弱い。 | |
知ってしまうと自分の信念さえ一瞬で崩れてしまう。 おまえも知ってしまったことでみんなやる男を・・・ |
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バチン! |
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・・・・・・。 | |
全然違う! | |
女銃鹿は残った手で「なゐの神衣」をビンタする。 力のかぎりビンタする。 |
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私は被害者遺族を不幸にした犯罪者を許さない! | |
私はみんなやる男を! |
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みんなやる男を! | |
女銃鹿(めじゅうか)は泣きながら、なゐの神衣のエリ首をつかみ抗議しようとする。 しかし言葉がでない! その先の言葉が出ない! |
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・・・・・・。 | |
くっ! | |
あああああああああああああ! |
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・・・・・・・。 | |
・・・・・・・。 | |
・・・・・・・。 | |
それからは誰も話さない、動けない。 もはや、言葉では何も語れない。 |
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・・・・・・・。 |
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(残酷だな) | |
知ってしまうという事は残酷だ。 そもそも人は他人のことを何も知らない。 何も知らないクセに、お気楽に死刑賛成だの反対だの言う。 人間の裁判官でさえどれ程の真実を知っていると言うのだ? |
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・・・・・・。 | |
(だが女銃鹿は違う) | |
おまえは人智を越えた力でみんなやる男のすべてを知ってしまった |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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(知ってしまって痛いか女銃鹿?) | |
だが、知らなければ駄目なのだ。 女銃鹿よ。 もっと知る努力をしろ。 探求しろ。 探索しろ。 |
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そして「人を超えた究極の答え」を導き出せ。 | |
おまえはグノーシャなのだから・・・ |
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なぜ・・・だ? | |
そのまま時間がすぎ・・・ 間(はさま)は消滅し、世界はもとの世界へと修復される。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 女銃鹿(めじゅうか)はみんなやる男を・・・ 処刑できなかった。 |
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