第58話 | |
日本狼「オワタ\(^o^)/」 |
……という話だ。 | |
なるほど事情は把握(はあく)した。オワタ。 |
同時刻 夜9時30分。 ここは新宿の一等地にある高層ビル。 メスと女銃鹿と60Gは、老人ホームを攻撃したグノーシャの身元を調べるため、愛知県から東京に移動していた。 そして・・・ 新宿の高層ビルの中にある「なゐの神衣」の事務所を訪(おとず)れていた。 「なゐの神衣(ないのかむい)」 |
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事務所の入口ですね。 | |
結局はクソオヤジを頼るしかないのか?不本意すぎる。 | |
60Gは事務所の入り口を睨(にら)みながら恨(うら)めしそうにつぶやいた。 |
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パパに聞くのが一番手っ取り早いね。 チャッチャッと事情を聞いて、チャッチャッと問題を解決するよ。 |
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まーそーだよなー。男の薄っぺらなプライドは捨てとくか。 |
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60Gは扉の横に設置してあるインターホンを押した。 |
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メスと60Gと女銃鹿か? | |
入れ。 |
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ああ、邪魔するぜクソオヤジ。 | |
お邪魔するの! 久しぶりだねパパ! |
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失礼します。 | |
60Gと女銃鹿とメスはなゐの神衣の事務所に入室した。 「なゐの神衣の事務所」 |
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ん? 事務所に3人いるな。 |
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クソオヤジと蜻蛉斬り(とんぼきり)さんの2人だけじゃないのか? |
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珍しい人がいるね。 | |
事務所には3人のグノーシャがいた。 1人はなゐの神衣(ないのかむい) なゐの神衣は皮張りのエグゼクティブチェアに腰掛け、ビジネスデスクの上に置いてある書類に印を押していた。 「なゐの神衣(ないのかむい)」 もう1人は蜻蛉斬り(とんぼきり) 蜻蛉斬りはなゐの神衣の斜め後ろで直立不動で佇(たたず)んでいた 「蜻蛉斬り(とんぼきり)」 そしてもう1人… 見慣れないグノーシャが来客用のソファーに座っていた。 「見慣れないグノーシャ」 見慣れないグノーシャはテーブルに置かれたいちごポッキーをひたすらへし折っていた。 |
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久しぶりだな。 氏ね。 |
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少女の身長は148cm。 少女の目は飢えた狼のようにギラギラと輝いていた。 |
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あ…… | |
う…… | |
少女の目を見た女銃鹿と60Gは恐怖で凍りついた。 |
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猛獣の餌場(えさば)に迷い込んだ小猿のような顔をしているな。 | |
そんなに恐れるな。 別に殺しはしないと言ってみるテスト。 |
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日本狼(にほんおおかかみ)ちゃん相変わらずだね。目の前にいるだけで命の危険を感じるよ。 | |
見慣れないグノーシャは 日本狼という名前のグノーシャだった。 「日本狼(にほんおおかかみ)」 |
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日本狼…… てめぇきてたのか…… |
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なんでまたこんな所に? また誰も得しないおかしな事をはじめるのか? |
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なゐの神衣に男銃鹿の動向を聞いただけだ。 | |
わりと面白い話ではあったが、私には関係ないな。 |
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(男銃鹿の動向?) | |
わりと面白い話か… 日本狼から見ればそんなものか? |
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大きな事件になると思うがね。 |
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知った事じゃないな♪私は男銃鹿の戦いに関与しないぞ♪ |
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そうか。 | |
おまえらしいな。 |
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(男銃鹿の戦い???) |
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そんなわけで要件は済んだ♪ | |
お邪魔ならすぐに退散してやる♪ 化物がいなくなってラッキーだな♪ |
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ああ。 そうしてくれ。 |
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てめぇがいると生きた心地がしない。 |
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さすがの私も日本狼ちゃんとは関わり合いたくないね。日本狼ちゃんの日本オワタ推進委員会は正気の沙汰じゃないよ。 |
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(日本オワタ推進委員会……) | |
お前達にはオワタを愛でるメシウマが理解できまい。 |
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(日本オワタ推進委員会の日本狼……) | |
思いだした! |
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日本狼は悪名名高い極悪グノーシャ! 処刑すべきターゲットです! |
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日本狼が遊びで殺した人間は1000人以上いる! (…という噂を聞きました) |
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(日本狼がのうのうと生きる理由は存在しない!) | |
今すぐ処刑すべきだ! ・・・・ ・・ |
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(いや!できない!) | |
今の私に人を裁く資格はない! 女銃鹿は島乃守を間違えて処刑したショックで、処刑を休止していた。 「父親の島乃守を間違えて処刑した女銃鹿」 |
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んんっ? | |
ビクッ!? |
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んー? | |
日本狼が女銃鹿の顔をじっと見つめた。 |
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なんですか? 外道? |
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やけに大人しいな女銃鹿。 私に正義の銃口を突きつけないのか? |
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私の口の中に銃口を入れて…… 弾丸でFUCKするぞ極悪人! ……と怒らないのか? |
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そんなことはしません。 外道が。 |
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はて? 女銃鹿はもっと威勢がいい女だと思っていたが? |
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妹の影に隠れて影が薄いな。 まるでモブキャラのようだ。 |
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そ…それは…… | |
余計な詮索(せんさく)だね! 日本狼ちゃんには関係ないよ! |
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平静を装っているが…… | |
畏縮(いしゅく)して積極的に動けていない。 つまり何かにビビっている? |
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・・・・・・。 | |
そんなことないの! 決めつけないで欲しいね! |
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えっと…つまり… それは… |
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おい日本狼、いつまでも女銃鹿に絡(から)んでんじゃねーぞ。 |
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お前みたいなクズグノーシャはそのうち俺が狩ってやるから覚悟しとけよ。 |
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私は…… | |
・・・・ ・・ |
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ぷひっ♪ わかったぞ! |
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女銃鹿は父親殺しを引きずっているな! だからビビって処刑ができない! 「女銃鹿は父親の島乃守を殺した」 日本狼はポッキーをつかみ、女銃鹿の前で粉々に砕いてみせた。 |
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違うよ! それは過去の事だよ! |
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お姉ちゃんは心を切り替えて、新しい道を突き進むの! |
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うぅ…… | |
心を切り替えるだぁ? | |
父親を殺したのは最近だろうがぁ。 簡単に心の切り替えが出来たら逆に怖いわ。 |
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日本狼ちゃんには関係ない事だね! いいかげんにして欲しいの! |
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これ以上お姉ちゃんの心を傷つけたら許さないよ! |
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メス! 私なんかの為に怒らないで下さい! |
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なんだぁ~? 妹に守られてるのか? |
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ヘタレ中のヘタレ中のヘタレだな。 |
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!? | |
日本狼に人の事をどうこういう資格はないよ! | |
たしか…… 女銃鹿は…… |
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影でヘタレ系マジメちゃんなどと言われていたな。 まさにその通りじゃないか。 |
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今まさにヘタレている♪ 最初だけ威勢がいいヘタレちゃんが♪ |
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オワってるな♪ まさにオワりだ♪ オワりすぎてる♪ オワッタ神と呼んでいいですか? 女銃鹿オワタ \(^o^)/ |
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あ・・・・・。 | |
いいかげんにしろ日本狼! | |
さっさと巣に帰れなの! |
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ねぇねぇ生きてて恥ずかしくないの? |
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そ…それは… | |
いつまで生き恥をさらすの? | |
なんで女銃鹿は 父親を殺した女銃鹿を処刑しないの? 卑怯者なの? チキンなの? ケンタッキーなの? |
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・・・・・・ | |
てかさ女銃カスちゃん。 | |
今から切腹しろよ 「切腹」 |
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!? | |
!? | |
切腹の話は終わったんだよ!蒸し返すなカス野郎! |
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・・・・・・。 |
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いやいやいやいや終わらないな。私が何度でもおいしく蒸し返す。 |
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女銃カス。 父親を殺したんだから 死んで詫びろ |
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ギリッ! | |
それが唯一の答えだろ。 | |
お前自身が一番分かってる事だ。 |
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私は・・・ | |
死んでわび……る……べき? |
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よし♪ すぐ死ね♪ |
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舌噛んで即死ね! ビルからダイブしてもいいのよ。 |
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私は… | |
・・・・ ・・ |
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何も知らないクセに好き勝手言うな! | |
殺すぞ! 日本狼! 日本狼の言葉にメスが激昂(げっこう)した。 |
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あ……ああ…… |
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何をキレているメス? | |
おまえみたいな好き勝手に生きてるグノーシャでも身内の命は大事か? |
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大事に決まってるの! | |
お姉ちゃんが何者でも生きてて欲しいの! |
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(うん、身内の命は超大事) |
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何者でも生きてて欲しい? | |
女銃鹿が悪魔でも女銃鹿の生存を望むのか? |
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あー言えばこーいう… こー言えばあーいう… こんなの会話じゃないの。 |
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そんなにお姉ちゃんを傷つけるのが楽しいかな? メスは震える手でメスコンを握りしめた。 「メスコン」 |
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お?お? やんのか? |
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準物量型グノーシャのおまえが、物量型グノーシャの私に楯突くのか? 「準物量型グノーシャ=やや強力なグノーシャ」 「物量型グノーシャ=凄く強力なグノーシャ」 |
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まてメス! いくらなんでも無謀(むぼう)だ! |
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力の差とか関係ないね。 罠にはめればいくらでも殺(や)れる。 |
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格上ツブシは慣れてるよ。 |
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2人ともやめて下さいお願いします! | |
本当にいいのか格下? | |
おわっちゃうぞ小さな人生。 おわっちゃうぞ小さな幸せ。 おわっちゃうぞ小さな生命。 |
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つべこべ言うなよ害獣。 | |
ひと狩りしてやるから覚悟しておけ。 皮をはいで防具の素材にしてやる。 |
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(メスが全力でキレてる!?) | |
人生で3度目のブチキレだ。命乞いをしたら許してやる。 |
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メスがメスコンを腰にそえ居合い切りの構えをとった。 メスから針のように鋭いプレッシャーがあふれ出る。 |
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メスちゃんの人生…… | |
オワタ♪♪ \(^o^)/ 日本狼は狼のように四つん這いになった。 |
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私なんかのために争わないで下さい! |
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化け物2人がこんなとこで争うな! | |
巻き添(ぞ)えで人死にが出るぞ! |
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ふむ。 ここで人死には困るな。 |
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バカな小娘が2人。 | |
主君の前でなんと見苦しい。 おまえ達こそ切腹しろ。 |
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メス。 日本狼。 |
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ここで争うな。 少し黙れ。 |
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パパには関係ない。 | |
おまえこそ黙れよクソオヤジ! おまえも終わらせるぞ! |
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ここで争うな。 | |
少し・・・ 黙 れ ! なゐの神衣は人差し指を前に出し、ビジネスデスクを軽くトンっと叩いた。 |
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なの? | |
わた? |
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次の瞬間・・・ ・・・・ ・・ |
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メスと日本狼の頭部が 上下に激しく揺れた! |
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あばばばばばばばばばばばばばば! |
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あばばばばばばばばばばばばばば! | |
その姿は頭を激しく揺らすロック歌手のようにも見えた。 |
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なにが起きた!? | |
(お父様がメスと日本狼の頭部に地震を起こした) | |
いや……この場合は地震ではなく…… 頭震(ずしん)と呼ぶべきか。 |
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わきまえろ。 | |
全てのグノーシャは私の管理下にある。 |
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ぴゃあぁぁぁぁ! なにぴゃあー! |
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ぴゃあぁぁぁぁ! なんじゃごらー! |
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2人の頭は激しく揺れ続ける! 揺れる! 揺れる! 揺れる! 揺れる! 揺れる! 揺れる! 揺れる! 揺れる! 頭を揺らすメスと日本狼の頭部から蒸気が発生した! |
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な? 頭から蒸気? |
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何が起きた? |
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ぴゃぴぃぃっ! 頭あついの! |
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ぴゃぴぃぃっ! オワタ―! |
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メスと日本狼は立っていられなくなり両ヒザをつく! そして・・・ 前のめりに倒れた! |
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ぷくぷくぷくぷく。 (↑口から泡を吐いている) |
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ぷくぷくぷくぷく。 (↑口から泡を吐いている) |
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メスと日本狼はカニのように泡を吐いて気絶した! |
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何が起きた! 何が起きたんだよ! |
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(お父様はメスと日本狼の頭部を振動させ振動の運動エネルギーから熱を発生させた) | |
そしてメスと日本狼は発生した熱にやられ気絶した。 |
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(お父様は運動物理学における振動を全て掌握(しょうあく)している) | |
抵抗は不可能。 |
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気絶しただけだ。 すぐに目を覚ます。 |
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私なんかの為に争わないで下さいよ。 | |
女銃鹿はヨロヨロとした足取りでメスに近づき、メスを抱きかかえ涙を流した。 |
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迷走しているな女銃鹿。 威勢の良さが完全に消えた。 |
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卑屈になりすぎたら前には進めんぞ。 |
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私なんかが…… 私なんかが…… |
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私なんかが……か。 自分に期待するのをやめたのか? |
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どうやら女銃鹿に期待をしているグノーシャは私1人になったようだ。 なんとも寂(さび)しい話だ。 |
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失敗した私に何を期待をしているのですか? | |
失敗してからのおまえに期待をしている。 | |
おまえは本物の∞にたどりつけるかもしれない唯一のグノーシャだ。 「本物の∞にたどりつけるかもしれない唯一のグノーシャ?」 |
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本物の∞ってなんですか! | |
それが私の人生になんの関係があるんですか! |
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さぁな。 | |
おまえにとって∞がなんなのか私にも分からんよ。 死刑問題とつながりがあるかもしれんし無いかもしれん。 |
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話が曖昧(あいまい)すぎて意味不明です。 | |
具体的な話をして下さい! |
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今は目の前の問題を取り組めばいい。 おまえの歩んだ先に本物の∞がある。 |
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・・・・・・。 | |
女銃鹿にはなゐの神衣の考えが理解できなかった。 |
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・・・・・・。 | |
さて仕事を再開するか。 | |
なゐの神衣はデスクに置かれた書類を拾い、何事も無かったように書類に印を押した。 |
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・・・・・・。 | |
・・・・・・。 | |
・・・・・・。 | |
・・・・・・。 | |
・・・・・・。 | |
場に静寂(せいじゃく)が訪(おとず)れる。 意識がある者はみな言葉を失った。 ・・・・ ・・ |
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どうした60G? おまえも静かだな? |
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場の空気を読んで黙っているのか? 実に日本人的だな。 |
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あ……いや…… | |
それとも私の力を見て委縮(いしゅく)しているのか? | |
あの程度の力はグノーシャから見れば地味な部類に入る。 びびりすぎだフニャチン野郎。 なゐの神衣が60Gを挑発した。 |
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あぁ? ビビってねーよ! |
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調子にのんなクソオヤジ! |
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ふっ。 調子にのって何が悪い? |
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あーそーいやーてめぇに聞きたい事があったわ。 | |
質問してやるから感謝しろよクソ親父。 |
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老人を殺すグノーシャの情報を教えろ! | |
答えられなかったら∞行動の電気アンマで玉をつぶしてやるからな! |
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老人を殺すグノーシャ!? | |
老人を殺すグノーシャ!? | |
なんだよ? やけに反応がいいな? |
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・・・・・・。 | |
お前達はその問題に関わるのか? |
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分かるのか? | |
良いだろう。 全て聞かせてやろう。 |
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聞かれた質問には可能な限り全て答える。 それが私の流儀だ。 |
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