第72話 | |
2015年10月13日 メス「処刑問題はさ、安全地帯からネットを使って反対とか賛成とか気楽に議論するぐらいが一番いいよ」 |
というわけで、日本狼ちゃんとお姉ちゃんを襲撃(しゅうげき)しようと思うの。 |
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というわけじゃねーよ。 |
日本狼が人肉ガン○ムを救出してから… 22時間後… ・・・・ ・・ 深夜 メスと60Gは古くて狭い剣道場にいた 「古くて狭い剣道場」 メスは道場の中央で正座をしている。 60Gは道場の片隅であぐらをかいて座っていた。 |
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話があると来て見れば… | |
襲撃(しゅうげき)の勧誘かよ。 一体全体どういうつもりだよ? |
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60Gちゃんはさ、お姉ちゃんの死刑活動をどう思ってるかな? | |
「お姉ちゃん=女銃鹿(めじゅうか)」 |
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まぁ危なっかしいわな。 | |
ぶっちゃけ犯罪だし、恨(うら)みも買う。 |
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しかも冤罪(えんざい)スレイヤーがお姉ちゃんを苦しめてるよね。 | |
お姉ちゃんは真っ青な顔で過去の犯罪を毎日見てるの。 「冤罪(えんざい)スレイヤー=過去が見れる目」 |
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暴力ゲームを見なれた俺達がドン引きするような殺人現場を女銃鹿は見まくってるんだよなぁ。 |
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よくあんなキツイ事がやれるもんだ。 |
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そうなの! お姉ちゃんは今キツい事をやってるの! |
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そしてお姉ちゃんは 冤罪(えんざい)スレイヤーを使って死ぬまで死刑と関わり続けるだろうね。 のたうち苦しみながら… 精神を削(けず)りながら… ∞にわき続ける極悪人と関(かか)わり続けるの! |
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何がいいたい? | |
冤罪(えんざい)スレイヤーを使うお姉ちゃんを見て確信したよ。 | |
処刑をし続けてもお姉ちゃんは幸せになれない。 いや! 処刑活動はお姉ちゃんを不幸にするね! 「処刑活動をしてお姉ちゃんが幸せになった事があったかな?」 |
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なんか今さらな話だな。 | |
私は冤罪スレイヤーをのぞき見して今さら気が付いたんだよ。 | |
処刑問題は不愉快な闇! 他人の超やっかい事なの! 近づいても良い事なんか何もない。 処刑問題はさ、安全地帯からネットを使って反対とか賛成とか気楽に議論するぐらいが一番いいよ |
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女銃鹿の幸せだけを考えるなら、処刑活動は良くないかもな。 |
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本当ならお姉ちゃんが自殺しかけた時にやめさせるべきだったよ。 | |
私の判断が遅すぎたね。 |
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メスの考えは分かった。 | |
で、具体的に何をやるつもりだ? |
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まずお姉ちゃんを守る日本狼ちゃんをぶっ倒すの! | |
そしてお姉ちゃんはチョロリと倒して拘束(こうそく) |
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お姉ちゃんを処刑できない体に洗脳するの! | |
洗脳は60Gちゃんに任せたよ! 「60Gはデコピンによる暴力で人を洗脳できる」 |
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って……また暴力で拘束して洗脳かよ(ワンパターンすぎる) | |
コクっ。 | |
メスが大きくうなずく。 60Gは指で眉間(みけん)をつかんでため息をついた。 |
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はぁー。 頭の回転が早くてもやっぱガキか。 |
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お前は見通しが甘い。 この戦いは勝ち目がないぞ。 |
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それはどうかな? | |
日本狼ちゃんの力は確かに凄(すご)いけどつけいる隙(すき)があるよ。 |
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違う。 そういう話じゃない。 |
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お前は基本的なことが分かってない。 |
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相手は月まで動かすとんでもない怪物だからね。 | |
普通は勝てないと思うのも分かるよ。 |
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ばーろー、この話は勝ち負けでどうこうなる話じゃねーんだよ。 |
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これを見てもそう思えるかな? | |
メスは正座した状態から、床に置いてあるメスコンという刀を拾(ひろ)う。 「メスコンはメスが使う特殊な刀」 そして中腰となり流れるような動作で抜刀した その動きに一切の無駄は無い 1ミクロンの無駄がない究極の抜刀だった。 |
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剣の腕だけは超越してるな。 さすが∞斬戮(ざんりく)使い。 |
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ムゲン… | |
ムゲン… ムゲン…ムゲン… ムゲムゲムゲムゲムゲムゲムゲムゲムゲムゲ ムゲムゲムゲムゲムゲムゲムゲムゲムゲムゲ ムゲムゲムゲムゲムゲムゲ ∞ 抜刀したメスが∞とつぶやく。 メスが静かにつぶやいていると 1匹の蛾(が)が道場の中にユラユラと入ってきた |
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ムゲ…ゲゲ… | |
ブブブブブブ… ブブブブ… |
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蛾(が)は道場をユラユラと一周しゆっくり降下する。 そして 蛾(が)はメスコンの切っ先にとまった |
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いつもの∞操作で蛾(が)を操ってるようだな。 | |
そう。 ここまでがいつもの∞操作。 |
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そこから発展させるよ。 |
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あん? ∞操作を発展? |
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行くよ! | |
む げ ん れ ん さ こ う ! 無限 連鎖 講! メスが抜刀をした姿勢のまま吠える! |
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ブブブブ! ブ・・ブブブ! ブ・・ブブブ! |
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刀の上に乗っていた蛾(が)が鱗粉(りんぷん)と羽根の断片をまき散らしながら凄まじい勢いで羽ばたいた! |
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お…お…!? 手が勝手に動く!? |
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蛾の動きに連動するように60Gの右手が勝手に動きだす。 60Gの右手が股間に移動する! |
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∞操作でズボンのチャックを下ろすのか! | |
オープンチャックなの! | |
∞操作で操られた60Gはズボンのファスナーに触(ふ)れる! |
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なんでそーなるんだよ! |
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それはデスティニー(運命) | |
どーいう運命じゃー! | |
メスに操られる60G。 ∞操作から逃れる術(すべ)はない。 60Gは ズボンについたファスナーの金具を引きちぎって窓に投げつけた! |
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ガシャーン! | |
ファスナーは窓を窓枠ごと破壊し闇夜に消える! |
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俺のファスナーがあぁぁぁぁ! |
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勝った! 私は窓枠さんに勝ったの! |
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メスはガッツポーズをとり勝利を宣言した。 ・・・・ ・・ |
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って何をしてるんだオマエ? | |
マジで意味が分からんぞ。 (つか、さっきから寒すぎるわ) |
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うん。 | |
無限連鎖講♪ 大成功だね♪ |
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はぁ? 無限連鎖講(むげんれんさこう)だぁ? |
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無限連鎖講ってネズミ講(ねずみこう)と同じ意味だよな? |
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私が使った無限連鎖講は∞操作の応用だね。 | |
ほう。 | |
まずね。 私が∞操作で蛾(が)を操ったの♪ |
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そして蛾を操作して、蛾に∞操作を使わせたの♪ その後に蛾が60Gちゃんを操ったんだよ |
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蛾(が)に∞操作を使わせた! そんな事ができるのか! |
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うん。 試(ため)してみたらできたの。 |
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どうやら全ての生物に∞の力を使う潜在能力があるようだね。 ちょっとした大発見をしちゃったよ。 |
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マジかよ。 こりゃまた変な大発見をしたな。 |
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クソオヤジはそのことを知ってるのか? 「クソオヤジ=なゐの神衣」 |
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とにかく無限連鎖講を使えば、操った動物で∞操作ができるの。 | |
そして操った動物でさらなる∞操作ができるね。 |
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この方法を使えば | |
より多くの生物を∞操作で操作できるな。 |
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そなの。 これで日本狼ちゃんと戦うよ。 |
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いや……地味にすげーけどよ。 | |
相手は物量型グノーシャの日本狼だぞ。 とんでもねぇ隠し玉で反撃してきそうだぜ。 「日本狼」 |
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うん。 | |
日本狼ちゃんは前に戦った時に、ポールシフト戦術を使うまでもないとか言って私達を見下してたね。 |
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ポールシフト戦術が何なのか分からんが、日本狼の自信を見ればそれがどれだけヤバいか察するぜ。 | |
それに… |
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大丈夫。 勝てる可能性はあるよ。 |
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格上討伐は私の得意分野なの♪ メスは自信ありげに微笑んだ。 |
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(たしかにメスは格上を撃破し続けた実績がある) | |
今回も変な方法で状況をひっくり返すだろう。 メスに任せれば勝てるという謎の安心感がある。 |
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大丈夫ー♪ 勝ってお姉ちゃんを幸せにするの♪ |
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・・・・・・。 | |
(女銃鹿を幸せにする…か…) |
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(考えてみれば俺もメスも、女銃鹿の人生にしつこいぐらい介入し続けた) | |
それはきっと女銃鹿の幸せを望んだからなんだろうな。 |
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(でもなメス) | |
俺達がどんなに女銃鹿の幸せを望んでも どうしようもない部分があるんだぜ。 けっきょく俺達は処刑問題と無関係な部外者だ。 |
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では60Gちゃん。 これから指示をだすよ。 |
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(そして、部外者である俺達は女銃鹿の問題に何度も首をつっこめねぇ) | |
なんとなく分かる。 俺達が女銃鹿の活動に介入するのはこれで最後になるんだろうな。 |
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って…何か考え事かな? | |
ずっと黙ってると怖いの。 ・・・・ ・・ |
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まっ! 考えてもしゃーねーか! |
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なの!? | |
60Gが男らしく立ちあがる。 60Gのファスナーがないズボンの穴から、美少女がプリントされた痛いトランクスが見え隠れしていた。 |
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派手に行くぞメス! | |
こっから先は無数の思惑が交錯する修羅場だ! |
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うん! | |
この勝負! 絶対に勝つよ! メスもまたスクっと立ちあがる。 メスが立ちあがる動作にはいっさいの無駄がなかった。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ ほぼ同時刻。 とあるビルの中にある「なゐの神衣」の事務所。 |
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・・・・・・。 | |
事務所のソファーで座っていた蜻蛉斬り(とんぼきり)が、∞視点を使いメス達の行動を監視していた。 「蜻蛉斬り(とんぼきり)」 |
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ふむ。 大方の予測通り。 |
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メスと60Gがまた日本狼に挑(いど)みそう。 |
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そうか。 | |
なゐの神衣は事務机で書類に印を押しながら蜻蛉斬り(とんぼきり)と会話していた。 「なゐの神衣」 |
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これは日本狼の考えを探る良い機会。 | |
この機会に日本狼の目的が分かるかもしれない。 |
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日本狼を警戒しているようだな。 | |
日本狼は……メスや60G、女銃鹿のような人畜無害なグノーシャとは違う。 | |
あのギラついた目は天下人と同等の野心を感じる。 今はお父様に劣る存在でも、そのうちお父様の喉元(のどもと)を喰いちぎるかもしれない。 |
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確かに日本狼の目的は分かりにくい点が多い。 | |
見極める必要はある。 |
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お父様は今からはじまる戦いをどう見ている。 | |
・・・・・・。 | |
メスの負けだ。 どう考えてもメスの望みは叶わない。 |
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同意。 メスの敗北は確定してる。 |
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まぁ、結果の見えている戦いではあるが修羅場から、面白いモノが生まれる可能性もある。 | |
監視する価値はあるだろう。 なゐの神衣は300円で購入した駄菓子の詰め合わせ袋を事務机に置いた。 |
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修羅場は良い。 | |
醜くも美しい人の本質が見える。 蜻蛉斬りも300円で購入した駄菓子の詰め合わせ袋をテーブルに置く。 ・・・・ ・・ |
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どーせクソオヤジと蜻蛉斬りさんは、駄菓子でも喰いながらノリノリで監視してるんだろうなー。 | |
超格上さまは気楽でいいぜ。 ・・・・ ・・ |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・。 | |
・・・・ ・・ |
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今日の月は大きく見えるね。 | |
っと。 そういや今夜はスーパームーン(近点満月)か。 |
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道場の外に出たメスと60Gは月を見上げた。 今夜はスーパームーンと呼ばれる満月が大きく見える夜。 美しい月明りの下で1つの修羅場が始まろうとしていた。 |
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