第67話 | |
2015年6月27日。 日本狼「女銃鹿(めじゅうか)がそこそこ面白い女になったのに、お前らはホントつまらんグノーシャだな」 |
・・・・・・。 |
女銃鹿(めじゅうか)がチーズケーキを見てから3ヶ月後。 ※チーズケーキを見た話は66話参照。 |
ここは石だらけのひらけた広場。 「石だらけのひらけた広場」 |
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・・・・・・。 | |
標高200mの小さな山の中腹で、日本狼という名前のグノーシャが地べたに座りながら満月を見ていた。 「標高200mの小さな山」 「日本狼(にほんおおかみ)」 日本狼の手にはコンビニのゴミ箱から回収した飲みかけのカップ酒が握(にぎ)られている。 日本狼は酒を飲みながら、世の理(ことわり)をつぶやいていた。 ・・・・ ・・ |
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オワッタという言葉は日本人の挨拶(あいさつ)みたいなものだ。 |
みなオワッタと言う。 オワッタ。 オワッタ。 オワッタ。 オワッタ。 今でも何千、何万というオワッタが日本のどこかで鳴り響(ひび)いている。 |
では、皆が言うオワッタで本当に終わるのだろうか? |
現実ではほとんどは終わらない。 オワッタのほとんどが偽物(ニセモノ)だからだ。 偽物のオワッタに何かを終わらせる力など最初から無いのだ。 |
では、ホンモノのオワッタモノとは何か? |
本当にオワッタモノとは… 新しいモノに殺されたモノ |
・・・・・・。 |
ああ… ・・・・・・ ・・・・ ・・ 日本狼はオワッタな 日本狼はゴミ箱から回収したカップ酒を飲みほす。 ゴミ箱から回収したカップ酒は、新品の酒と同じ味がした。 |
まぁ。 |
終わってから美化されるモノもある。 (野生の日本狼が今の日本にいたら、100%害獣だもんな) ・・・・ ・・ 終わってみるのも悪くない。 |
・・・・・・。 | |
・・・・・・。 |
・・・・・・ ・・・・ ・・ パキッ。 日本狼が一人でつぶやいていると 30m離れた茂みの中から、木の枝を踏む音が聞こえてきた。 |
ん? ポエムタイムの邪魔が入ったか。 |
ポエムタイムを邪魔された時の興醒め(きょうざめ)感は異常だな。 不粋(ぶすい)モノめ。 |
いた! |
日本狼ちゃんなの! |
ようやく見つけたぞ! 日本狼! |
山の中腹(ちゅうふく)にある石だらけの広場に 2人の訪問者がやってきた。 「2人の訪問者」 2人は鬼気迫る表情で日本狼を凝視(ぎょうし)している。 |
ほう。 来客か? |
コンビニのゴミ箱から回収したカップ酒を勧(すす)めよう。 私はゲス大人なので未成年にも酒をふるまうぞ。 |
お酒なんていらないよ! |
お姉ちゃんを帰すの! |
女銃鹿(めじゅうか)に何をしやがった! あれじゃ頭のおかしい殺人鬼だろ! |
2人の訪問者は女銃鹿(めじゅうか)を必死に捜索していた。 「女銃鹿(めじゅうか)=お姉ちゃん」 2人のうち1人は14才ぐらいの少女。 名前はメス。 「メス」 メスの右手にはメスコンという特殊な刀が握られている。 「メスコン」 もう1人は20代後半ぐらいの筋肉質な青年。 彼は仲間から60Gと言われていた。 「60G (本名は六十神(むそじがみ))」 |
突然怒鳴るなよ。 酔いが不愉快になるだろ。 |
せっかくのポエムタイムも台無しだ。 |
単刀直入に言う! |
女銃鹿を洗脳したのか! |
お姉ちゃんに何かあったら許さないの! |
2人の訪問者は「とある理由」で死ぬほど焦(あせ)っていた。 女銃鹿(めじゅうか)の身に何かあったかもしれない。 |
話が分からん。 チンプンカンプンだ。 |
女銃鹿に何がおきたか私に説明しろ。 できれば1字以内で頼む。 |
あれだけのことが起きるのにシラを切るのかよ! | |
言っとくが説明無しでは私は動かん。 |
貴族階級の賢人ニートな私さまに懇切丁寧(こんせつていねい)に説明しろ。 (私はこの世で一番偉い金持ちニートであるぞ!) |
このやろぉ… | |
いいよ。 超簡単に説明するの。 |
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うむ。 最初からそうしろ。 |
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お姉ちゃんは |
3ヶ月前に突然、行方不明になったの。 「お姉ちゃん=女銃鹿(めじゅうか)」 |
警察に探してもらえ♪ |
あ、でも警察って死んでからじゃないと、本気になってくれないかもな♪ じゃあ死んでから警察に頼め♪ |
死んだら手遅れだろうが! | |
それで、先週あたりからお姉ちゃんが色んなとこで現れたらしいの。 |
私は見てないけど、目撃情報多数なの。 |
(おいおい…もう見つかってるのか?女銃鹿ユルユルすぎるだろ) | |
目撃情報で |
お姉ちゃんは お姉ちゃんは |
・・・・・・。 |
・・・・ ・・ |
罪のない人を沢山殺してるらしいの |
正義のお姉ちゃんが犯罪をやってない一般人を18人も殺しちゃったの 「この子が18人も殺しました」 |
ほう。 そいつは大問題だな。 |
正確な情報なのか? |
信じられない話だが、女銃鹿が殺した証拠も見つかってる。 |
俺達としては、なんでこうなったかサッパリ分からねぇ。 |
「女銃鹿狩り」をするなんて言うグノーシャさんまで現れてるの。 |
これ以上、お姉ちゃんが無差別殺人をするなら庇(かば)いきれないよ |
(へー相変わらず雑魚グノーシャってド馬鹿なんだな) |
バカは死ねばいいのに。 |
それで俺たちは女銃鹿の消息を調べまくった! |
調べた結果。 女銃鹿が 日本オワッタ推進委員会に入会した情報を手に入れた! |
む。 |
日本オワッタ推進委員会は私が運営してる組織だな。 「日本狼=日本オワッタ推進委員会の代表」 |
そなの! |
日本狼ちゃんはお姉ちゃんの消息を知ってる筈(はず)だよ! |
えー。 女銃鹿の消息なんて知らないなー。 |
私が知ってる証拠があるのかよー。 |
お前と女銃鹿が一緒に行動した証拠ならある! |
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お姉ちゃんが日本狼ちゃんと一緒にコンビニのゴミ箱をあさってる写真がツイッターでさらされてたの! |
地味に50リツィートされてたよ! |
な!? |
私のプライベートタイムがネットで地味に拡散だと! なんて嫌な世の中なんだ! |
嘘はつけないね。 日本狼ちゃん。 |
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ネタはあがってんだよ! 説明しろ日本狼! |
メスと60Gが日本狼につめよる。 日本狼は反論する余地がなかった。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ |
ちっ ちっ |
そこまで分かってるならもう隠せねぇか 早くバレすぎて興醒め(きょうざめ)だ。 |
やっぱりビンゴなの!? | |
おい! 女銃鹿(めじゅうか)はどうなった! |
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女銃鹿(めじゅうか)は |
日本オワッタ推進委員会に入会した 今は私の部下みたいなもんだ。 「この痛い子は私の部下になった」 |
お姉ちゃんが日本狼ちゃんの部下!? |
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入会しただけでなく、部下になったのかよ! |
俺達の知らない間におかしな事になってるぞ! |
日本オワッタ推進委員会の入会は極めて難しい。 |
喜べ! 女銃鹿は私に認められるような、面白いグノーシャに育ったぞ。 |
いいかげんにしろよ! |
コンビニのゴミ箱をあさってる女銃鹿の写真を見て喜べるわけねぇだろ! |
女銃鹿は実にグノーシャらしい存在に生まれ変わった♪ |
人間みたいな処刑を繰り返したアホの子が 人とは違う方法で処刑にアプローチするようになったのだ♪ |
人とは違う方法で処刑と関わる? | |
女銃鹿がグノーシャらしいグノーシャになっただぁ? |
グノーシャらしいグノーシャなんて、クソオヤジが考えた与太話の1つだろ。 グノーシャなんて力があるだけでそんなに人間と変わらねーよ。 「クソオヤジ=なゐの神衣」 |
少なくとも今の女銃鹿は、今の人間ができない事をやっている。 |
先駆者(せんくしゃ)って奴だ。 |
女銃鹿が……先駆者? | |
と…とにかく… 日本狼ちゃん全部知ってるね… |
お姉ちゃんはどこかな? お姉ちゃんはどこで何をしてるかな? |
ん。 あっち。 |
日本狼が 山の頂上にある展望台を指さした。 「山の展望台」 |
お姉ちゃんは山の展望台? | |
ここは標高200mの山の中腹だから… |
展望台まで歩いて500mぐらいか? 無茶苦茶近いな。 |
羽山あきらと売杉三号(うれすぎさんごう)も一緒だ。 |
こいつらも私の部下だ。 (こいつらは女銃鹿のオプションパーツとして特別に入会させてやった) 話があるなら直接聞け。 「羽山あきら(日本狼の部下になりました)」 「売杉三号(日本狼の部下になりました)」 |
羽山さんも三号君も日本オワッタ推進委員会に? |
日本オワッタ推進委員会ってなんなのかな? |
あらゆるモノを前向きに終わらせる組織だな。 |
言っとくが超真面目な組織だからな。 名前だけで判断するなよ。 |
あらゆるモノを前向きに終わらせる組織??? |
おまえの言ってる事は範囲(はんい)が広すぎて分かりにくいな。 |
私は説明が苦手だ。 |
私とダラダラ話すより、女銃鹿(めじゅうか)に会って話した方が話が早いかもな。 |
そ、そだね! すぐに山を登ってお姉ちゃんと話すの! |
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よし! メス! |
肩車するから、俺に乗れ! ∞行動で移動するぞ! ※∞行動とは1回の行動で最大600回行動する60Gの力。 |
60Gちゃん! 急いでなの! |
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おう! いきなり600回行動する! |
メスが60Gの肩をつかみ 飛び箱の上に乗るようにシックスティの肩に飛び乗ろうとした。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ その刹那(せつな)! |
撃 発 ! |
!? | |
!? |
鼓膜(こまく)を破壊しかねない巨大な銃声が山中に鳴り響(ひび)く。 音だけで森の木々が揺(ゆ)れ、山に住むカラスが気絶し、木からボトボトと落ちた。 「現在位置」 |
って! このデカイ音は! |
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ああ。 女銃鹿(めじゅうか)の銃撃だな。 |
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確かにいつもの銃撃なの。 お姉ちゃん…あんま変化してない? |
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誰を銃撃している? |
まさか、女銃鹿が処刑をしているのか? |
まず、一人処刑。 |
・・・・ ・・ 「展望台」 女銃鹿は展望台の上で誰かを処刑していた。 |
・・・・・・。 | |
・・・・・・。 |
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残り1人! |
撃鉄発火! |
銃 弾 放 出 ! |
女銃鹿は再び誰かを銃撃する。 |
カーカーー! | |
カーカーー! |
銃声で気絶していたカラスが、銃声で目を覚まし、一斉に山から逃げだした。 |
2発目の銃撃!? | |
メス! |
∞視点で銃弾がどこに向かったか追うぞ! |
了解なの! |
メスと60Gが∞視点を使い2発目の銃弾を目で追いかけた。 「こんな感じで弾丸が目で追いかけた」 ※∞視点とは視点をどこにでも置ける能力。ドコでも見ることができる。 |
わりと早いな。 そっこーで着弾するぞ。 |
銃弾は瞬(またた)く間に、隣の隣の県まで移動する。 銃弾は真横に進む流れ星のように見えた。 |
っておい! 銃弾が警察署に向かってるぞ! |
「警察署」 |
え! 警察殺しはマジ犯罪者なの! |
メス達は予想外のターゲットに驚愕(きょうがく)し対応できない。 そんなメス達を無視して 銃弾は警察署の壁を熱で溶かして直進する! |
おい! どうすんだよ! |
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もう手遅れなの! |
そして! 銃弾は! ・・・・ ・・ 窓口で働く警察官の頭を熱で溶かし一瞬で蒸発させた! |
ベッチュン。 |
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きゃあああ! お巡りさん! |
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誰か警察を呼んで! |
1人の警察官は頭部を失う。 頭部のない警察官は 首から大量の煙と、焼き豚と同じ臭(にお)いを撒(ま)き散(ち)らしながら大の字になって倒れた。 |
ビクン! ビクン! |
な…なな…!? | |
嘘だろ。 女銃鹿(めじゅうか)が警察殺し? |
いや! 女銃鹿が警察を殺すわけがない! これは女銃鹿の銃撃じゃないだろ! |
いや! 100%女銃鹿の銃撃だ。 |
今の女銃鹿は警察殺しもやる。 ターゲットになったモノは誰でも殺すだろう。 |
ありえねぇだろ! 急展開すぎるだろ! |
あんだけ間違った事が嫌いな子が闇落ちして殺人鬼になったのかよ! 納得する理由が見当たらねぇ! |
事実は事実だ。 | |
お姉ちゃんおかしくなっちゃったのかな? |
やだよ…そんなの… お姉ちゃんを庇(かば)いきれなくなっちゃうよ。 |
警察殺しを他のグノーシャも見てるかもな。 |
やべぇな… どうやって他のグノーシャに説明すんだよ。 メスと60Gの顔が青ざめる。 2人とも女銃鹿の変化に絶望していた。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ |
なーなー。 ゴミクズ2人。 |
絶望するメスと60Gに日本狼が不思議そうな顔で問いかけた。 |
? | |
? | |
そもそも、おまえらさ |
なんで見たまんまの状況を受け入れてるの? なんで工夫して物事を考えないの? (バカなの? それともバカなの?) |
え? | |
はぁ? | |
おまえらの反応は人間なら正しいが、グノーシャ的にはおかしい反応だ。 |
あまりに工夫が無さすぎる。 (この状況を利用して遊びをクリエイトするとか色々やれるだろ。なぜ普通に驚(おどろ)いている?) |
おまえ… この状況で何を言ってるんだ。 |
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女銃鹿(めじゅうか)がそこそこ面白い女になったのに、お前らはホントつまらんグノーシャだな。 |
私が男だったら、チ○コが陥没(かんぼつ)するまでなえて女の子になったかもしれん。 |
えっと… 普通の反応は駄目なのかな? |
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なんでこんな場面まで、ひねった行動をする必要があるんだよ! |
てめぇ何様のつもりだ! |
じゃあ! |
帰れ よ! おまえらがどんな奇行に走るかワクワクしていたのに、あんまりすぎるだろ! |
えー。 | |
もしかして嫌がらせか? |
普通を見せつける普通ハラスメントなのか? (それなら理解できなくもない) |
なんで普通が悪いんだよ! | |
私達は必死にアピールする新人のお笑い芸人さんじゃないの。 |
悲しい場面で不謹慎(ふきんしん)だよ。 |
うるさい! 不謹慎厨(ふきんしんちゅう)! |
殺されたくないならすぐに帰れ! つまらんゴミクズは、状況を理解できないまま単細胞生物として天寿を全う(てんじゅをまっとう)しろ! |
俺達が怒られる理由がサッパリ分からんわ。 | |
・・・・・・。 |
私は手ぶらでは帰れないよ。 |
じゃあ、カップ酒をやる。 これで手ぶらじゃないな。 |
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帰らないよ! |
私はお姉ちゃんに会う義務があるの! 邪魔するなら力でどかすしかないね! |
ああん? 力でどかすだぁ? |
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っておい! いきなり宣戦布告すんな! |
もうチョイ話し合えよ! |
意見がぶつかれば、最後は力で白黒つける。 |
それがグノーシャ唯一のルールだよ。 メスは状態を低くし、メスコンの柄(つか)に手を添(そ)え居合切りの構(かま)えをとった。 「メスコン=メスの刀」 |
調子に乗るなよシャバ子ちゃんが! |
日本狼はメスと60Gに殺意をむける。 その殺意だけで摩擦熱(まさつねつ)が発生し 半径100mに飛んでいた小虫が一瞬で燃え尽きて消滅した。 |
待て待て! 俺達はお前とやりあうつもりはない! |
メスも物量型グノーシャに喧嘩をふっかけるな! 無謀(むぼう)すぎるだろ! 「日本狼は物量型グノーシャ」 ※物量型グノーシャとは物量が多い強力なグノーシャ。 |
この程度の殺意、グノーシャ的には普通だよ。(驚愕には値しないね) |
日本狼ちゃんは本当に強いのかな? 私でも倒せるかもね。 |
倒せそうに見えるか? 私には威厳(いげん)がないな。 |
あれか? 「巨大攻撃」や「超スピード」で化物アピールが必要だったか? それとも、手頃なライバルキャラをボコにしてボスキャラすげーを演出すべきだったか? |
あえて道をゆずると、大物ぽくって威厳(いげん)が出てくるよ。 | |
えー。 |
いや。 ここは力で示して、威厳を見せつけよう。 日本狼がカップ酒のカップをバリバリと食べながらユックリ立ちあがる。 |
できるかな。 | |
だから冷静になれメス! |
日本狼は物量型グノーシャだ! 戦って死んだら元も子もねーぞ! |
死んでも引けないよ! |
お姉ちゃんが訳わかんないことになって、一刻も早くお姉ちゃんの話を聞く必要があるの! ここで引く選択はありえないよ! メスは女銃鹿を救う事で頭がいっぱいだった。 |
クソッ。 |
女銃鹿(めじゅうか)の事になるとメスはひかねぇか。 |
家族愛で死ぬ奴か。 残念ながら、家族愛があっても日本狼は滅(ほろ)んだ。 |
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私は滅ばないよ。 |
メスは居合い切りの体勢からすりあしで日本狼との間合いをつめる。 その姿は、音もなく接近する幽霊のようだった。 |
・・・・・・。 |
さすがにうめぇな。 完全に無音で間合いをつめてやがる。 |
・・・・・・。 | |
メスの剣術は「一刀流、尾張柳生(おわりやぎゅう)、∞斬戮(ざんりく)」を融合した人外の古流剣術。 |
接近戦の技術だけならグノーシャの頂点にいる筈(はず)だ。 いや、それでも物量型グノーシャの相手は 厳しいか… |
(こいつ剣の腕だけなら私より圧倒的に上だな) |
なんせ私は剣道3級ぐらいだからな。 剣の基本しかしらん。 ※剣道3級なら小学校5年生でとれます。 |
八方(はっぽう)隙(すき)だらけ。 |
八方から光速で両断できるよ。 メスはまた幽霊のように音もなく前に出た。 |
単純な光速剣術か。 つまらん女だな。 |
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単純じゃないよ。 |
剣術は複雑な技術のかたまりなの。 私が一生かけても剣術を極められないね。 |
ホントに分かってないようだな。 |
ならば 物量型グノーシャを理解してないお子さまにひと目で分かる絶望をプレゼントしてやろう。 |
ひと目で分かる… | |
絶望? | |
貴様は力の正体を理解していない。 |
物量型グノーシャの大闘争を見て力の正体を学習しろ。 |
力は学習と訓練で身につけるモノなの。 | |
違う! 力は質量だ! |
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むっ。 | |
まぁ、間違っちゃいねーけど。 | |
見れば分かる。 |
日本狼が月を見ながら、左手を真上に伸ばす。 月は左手に隠れ、日本狼の視界から月が消えた。 「日本狼の視界から月が消えた」 |
この動作になんの意味があるのかな? |
ここまで隙(すき)だらけなら胴を真っ二つにするよ。 メスは戸惑いながら隙(すき)だらけの日本狼に接近し、日本狼を真っ二つにしようとした。 ・・・・ ・・ |
∞ 範 囲 ! |
! | |
! |
メスが硬直する。 突然、メスは恐怖を感じ動けなくなった! |
な……なな! 恐怖で動けない! |
ありえないの! ありない現象がおきてるの! |
な……なんだコレ? 何かの冗談か? |
手品……いや幻覚か? ・・・・ ・・ 非常識なグノーシャでさえ目を疑(うたが)う ありえない現象がおきていた。 |
月掌握(つきしょうあく)。 |
日本狼は野球ボールをつかむように 夜空に浮かぶ月を軽々とつかむ そして 月を手元に引き寄せた |
!?!?!? | |
!?!?!? |
!? !? !? !? !? !? ! |
私は月に追いつき、私の手に月が置かれる。 |
日本狼が左手を前に出す。 日本狼の手には本物の月が乗っていた |
月が小さくなって日本狼ちゃんの手の ひらに乗ってるの!? |
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どうやって38万kmも離れた月を手で つかんだんだよ! |
そもそも直径3476kmの月がなんで手のひらに収(おさ)まってるんだ! |
私の∞範囲(はんい)はあらゆる範囲を超越してつかみとる事ができる。 |
そして 範囲をあやつることで、つかんだモノの形を自由に変える。 |
まさか月を武器にするのかな!? | |
正解。 |
鋭 利 ! 手のひらに置かれた月はまぶしい月明りをまきちらしながら、エクトプラズム(幽物質)のように変化した。 |
今度は!? | |
月の形を自由に変化させた!? |
なんだこれ? なんだこれ? |
硬質化する。 鋭化する。 |
月が剣に生まれ変わる。 剣の名は 月の剣(つきのつるぎ) |
・・・・・・。 | |
・・・・・・。 |
|
三日月もまた月の剣(つきのつるぎ)と言われていた。 |
日本狼が左手に握(にぎ)られていたモノを軽くふる。 日本狼の手には 月と同じ模様をもつ大きな刀が握られていた |
月が2mの背負い太刀(だち)に変化しちゃったよ。 | |
グノーシャの領域じゃねーよ。 てめぇ、神か何かの類(たぐい)か? |
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大神(おおかみ)だしな。 |
神的な要素はあるかもしれん(たぶん) |
神的な要素!? パパと似た感じかな? |
「パパ=なゐの神衣」 |
(この状態でどうやってメスを生かす?どうする俺?) |
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さて私の剣を出したぞ雑魚剣士! |
いつものように100のグノーシャを操(あやつ)り戦ってみせろ! アリの群れで月に勝ってみせろ! |
私の戦い方がばれてるの! | |
言っとくが剣術も無意味だからな! |
質量が力の全てであり「45kg」に満たないおまえが、「7.35×10の22乗kg」の月に勝てる道理はない! 貴様など私のポールシフト戦術を使う相手ですらないわ! |
ポールシフト戦術! 何それ怖いの! |
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逃げるぞメス! |
日本狼がどの程度やるか分からんが、どう考えてもやばそうだ! 一旦逃げて対策を立てるぞ! |
ここまで私の手の内を見せて生かすわけがないだろ! |
逃げようが、戦おうが必殺だ。 |
くそが! なんでこうなったんだよ! |
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だったら死中に活ありだよ! 前に出て活路を開くの! |
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いいから、さっさと来い! |
プチプチのようにグノーシャを潰(つぶ)して暇潰(ひまつぶ)しをしてやる。 |
てめぇの暇(ひま)つぶしで死ねるかよ! | |
そーかそーか。 |
だったら |
ドヤ顔で話をしてる日本狼ちゃんに攻撃なのぉぉぉ! |
メスは日本狼が話すタイミングを見て、日本狼に飛びかかる。 話すタイミングを読んで放つ必殺のド卑怯戦法だった。 |
・・・・・・。 | |
古(いにしえ)に伝わるブシドーブレード戦法だよ! |
メスが跳躍(ちょうやく)し月明かりの中心に飛び込む。 |
∞行動で日本狼の背後に周り首をへし折ってやる! |
60Gは600回行動して日本狼に攻撃する。 |
・・・・・・。 |
|
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! | |
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! | |
月の優しい光がメス達を包(つつ)み込む。 光の中心には恐ろしい獣が待ち構えていた。 |
|
氏 ね ! |
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