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∞射程の女銃鹿 秒速∞km射撃

  ∞射程の女銃鹿66話
f:id:mesgamer:20180620032053g:plain 2014年7月22日。
∞射程ノ女銃鹿「あなたはこれから人間が出来なかった方法で、処刑にアプローチできるようになる」

∞加速!

 

∞射程!
   
 
   
夜の11:00 東京

ブロックがしきつめられた広場



地面に座り込んでいた女銃鹿と、女銃鹿を見下ろす男銃鹿が同時に吠えた!


「ブロックがしきつめられた広場」

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(なにがあろうと早撃ちで俺に勝てるモノは存在しない!)


男銃鹿は女銃鹿に勝つ自信があった。

男銃鹿は誰よりも早く銃が撃てた。


 


そして何より

女銃鹿は銃を所持していなかった!


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女銃鹿は男銃鹿の銃撃で右手と拳銃を失っていた 


武器が無ければどうにもならない!
何も無ければ負ける!


無限を100万回唱えても手持ちの武器は変化しない!


無限などありはしない!


・・・・・・。





詰みだ!女銃鹿!




・・・・・・


・・・・


・・






どんな時でも選択肢は




無限です


























km







 












銃の引き金を引く音が聞こえた。



撃針が雷管を叩く。



薬莢(やっきょう)の火薬が発火。




・・・・・・



・・・・



・・





1発の巨大な銃声が…

地球中に鳴り響く!



秒速∞km射撃





1発の銃声だけで地球が…








地球地震




! 


男銃鹿の頭部は、吹き飛ばされた桜の花びらのように四散した!


男銃鹿頭部破壊




なん…だ…?


なにが起きた?

この俺が知覚できない?



・・・・



・・




私の銃撃です。



男銃鹿の頭部を破壊しました 



銃撃だと?
なぜ俺が銃撃を知覚できない?



いや…
そもそも…


どこから銃撃が発生した?



女銃鹿は銃を持っていない筈(はず)だ!
銃なら頭の中にあるっ!



女銃鹿は頭の中にある銃で男銃鹿を銃撃していた。



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具脳を使っただと?


そんな事をしたらおまえの頭部にも傷がつく。

おまえも…


100%死ぬでしょうね。



女銃鹿の頭部は大きな穴が開いていた。



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命を捨てた蜂(はち)のひとさし?
そこまでして処刑がしたいのか?
道連れです!


私の命を使ってあなたを処刑します!


女銃鹿は大声で勝利を宣言した。


・・・・


・・





そうか、してやられたよ。


だが、残念だったな。


それでも…


俺の勝ちだ


・・・・・・。



俺は矛盾やパラドックスを使って複数になれる。


ここで俺が死んでも別の俺が現れるだけだ。


「俺はタイムマシーンと同じ理屈で複数になれる」

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・・・・・・。
けっきょく物量に勝る俺の勝ちだ。


銃で撃たれた男銃鹿は真横に倒れ…

2回痙攣(けいれん)してから…


絶命した


死んだ男銃鹿は笑みを浮かべていた。


・・・・


・・





複数になれる?
だからどうした?



だったら殺し尽くせばいい。
状況が変わったんですよマヌケ野郎。


いつまでも上目線で笑っていられると思うなら大きな間違いです。



・・・・・・。
∞射程ノ女銃鹿っ!




男銃鹿の全てを処刑しろ!





・・・・・・


・・・・


・・






無論全殺です



女銃鹿の頭部から放たれた弾丸は「光を吸い込む黒い軌跡」を描(えが)きながら…


地球を何度も周回していた


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頭部から放たれた弾丸の名前は

∞射程ノ女銃鹿


彼女は本物の∞を持つグノーシャだった。


「女銃鹿の頭部から放たれた弾丸=∞射程ノ女銃鹿」

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∞回処刑してやる!

無論!
無論!


弾丸の速度は時速∞km!


弾丸は黒い軌跡を残しながら全ての距離を埋め尽くす!


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弾丸はあらゆる法則を無視して地球を…









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報復! 連鎖! 報復
報復!
報復! 連鎖! 報復!





弾丸は全ての男銃鹿を殺して回る!



!?
!?
!?
!?


弾丸はブラジルにいる男銃鹿を殺した!


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弾丸はニューヨークにいる男銃鹿を殺した!


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弾丸は北極にいる男銃鹿を殺した!


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弾丸は茨城県にいる男銃鹿を殺した!


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処刑!
処刑!



弾丸はあらゆる時間に移動し、あらゆる時間の男銃鹿を殺し続けた。



!?
!?
!?
!?
!?
!?
!?
!?



1年前の男銃鹿が∞回死んだ。


2年前の男銃鹿が∞回死んだ。


3年前の男銃鹿が∞回死んだ。


4年前の男銃鹿が∞回死んだ。


5年前の男銃鹿が∞回死んだ。



血大 (1)







巨大ブラッド


グチャ。


人間だった頃の男銃鹿が…

母の胎内にいた男銃鹿が…




弾丸で吹き飛ばされ

砕けて死んだ 


・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。


ありとあらゆる男銃鹿は絶滅し


男銃鹿が生まれた事実そのものが消えた



・・・・・・



・・・・



・・




男銃鹿を全て殺した「∞射程ノ女銃鹿」は

女銃鹿の耳元で話しかけた 


男銃鹿の全てを殺し尽くしました。


これで男銃鹿が生まれた事実さえも消えるでしょう 


ありがとうございます。
けっきょく全てあなた任せでした。
いえ。
良い思い出ができました。


銃弾としての本懐を堪能(たんのう)できた。

これで思い残すことなく、私自身の夢を追いかけられる 


夢を追いかけられる?
ふふ♪
大事な夢なので秘密です♪


∞射程ノ女銃鹿は秒速∞kmで宇宙に向かって飛んでいった。


永遠にさよならです。
・・・・・・。


∞射程ノ女銃鹿は地球をはなれ…

銀河系をはなれ…



・・・・



・・



宇宙の外に飛んでいった


「宇宙の外」
宇宙の外




・・・・・・



・・・・



・・





ビルの事務所から女銃鹿の様子を見ていた蜻蛉斬り(とんぼきり)は、驚愕(きょうがく)していた。


「ビルの事務所」

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これが本物の無限?
早さが異常すぎる。


マイナスの光速は数学で計算できたが、本物の無限は計算できない。


距離を無限に埋め尽くす計算不能の加速といったところか。
酷いモノを見た。
これを喰らったら誰でも死ぬ。


ゲームのステータスで表現すると…


攻撃力:∞
攻撃回数:∞
スピード:∞
射程:∞



…の攻撃になりそうだ。


(ようするにこの世で1番強力な攻撃か……存外つまらんな)


そんなものは厨二ノートの裏側に書くだけで十分だ。


ビルの事務所から女銃鹿の様子を見ていたなゐの神衣(ないのかむい)は、本物の∞に失望していた。




・・・・・・



・・・・



・・




同時刻。
ブロックがしきつめられた広場。


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・・・・・。


戦いを終えた女銃鹿は女座りの状態で周囲を見回した。

女銃鹿の周囲は誰もいない。
全ての生物が危険を察知して逃げていた。


・・・・・。


これで終戦ですね 


みんなが死んだだけで、なんの益も無い不毛な戦いでした。


・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。





ホント戦わなければ良かった。


戦いが終わって気が抜けた女銃鹿は

女座りの姿勢から、後ろにパタリと倒れた 


・・・・・・。
・・・・・・。




老人の命は守れましたが、私は大損ですよ。


メスも60Gも死んで

私も中途半端な所で死にそうです


・・・・・・。




いや…
けっきょく人間は…


中途半端な所で死ぬ生き物なんですかね 



女銃鹿は無念だった。

無念だったが肉体がマヒしてるおかげで心が穏(おだ)やかだった。


・・・・・・。




もう少し生きたかった…
生きた先に何があるのか…


知りたかった


女銃鹿はひとすじの涙を流して気絶した。


・・・・・・


・・・・


・・







女銃鹿の体温が34度まで低下した。


体温が32度まで低下した。


30度まで低下した。



女銃鹿の呼吸は止まり危篤(きとく)状態になった


・・・・・・。





女銃鹿は眠るように死んだ。





・・・・・・


・・・・


・・













チーズケーキ…










私のチーズケーキを食べた汚物は消毒なの!


100万回処刑しても許さないの!



汚物は消毒 AA



夜の12時。
ここは女銃鹿の家。



「女銃鹿の家」



メスの大声が家中に鳴り響き、死んでいたはずの女銃鹿が目を覚ました。


はっ!?







死んだつもりだった女銃鹿が

2階にある自室のベッドで目を覚ました。


「女銃鹿の部屋」

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あれ?
ここは私の部屋のベッド?


え? 何これ?

訴訟レベルの超糞展開?


・・・・・・。


女銃鹿は失った筈(はず)の右手を触った。
右手は完全に再生し無傷の状態だった。


穴が開いた頭部も無傷だった。


完全に無傷じゃないですか!
今までの戦いはなんだったのですか!


女銃鹿は状況が把握できないでキョドっていた。


・・・・


・・




1階のリビングからメスと60Gの声が聞こえてきた


「1階のリビング」

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チーズケーキを盗み食いした人が死刑になる法律が爆誕したの!



自首するなら今のうちだね


メスはテーブルの上に置いてあるチーズケーキを指差した。

チーズケーキは半分食べられていた。


「チーズケーキ」

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おいおい。
そいつは穏(おだ)やかじゃねーな。



1階からメスの声と60Gの声?
2人とも死んだのでは?


まさか、新手の死ぬ死ぬ詐欺?


とにかくチーズケーキを盗み食いした犯人を特定するの。


見つけてからゴメンナサイを言ってもらうの。


それなら、名探偵犯人の俺に任せろ!

名探偵犯人!?
俺の推理では…
犯人は…


・・・・



・・




俺だ!


「俺が犯人」

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いきなり自白して解決!?
さすが名探偵犯人!?


前例のない超スピード解決なの!


チーズケーキを食べてすいませんでした。


チーズケーキがうんこになったら返却します。


最低なの!
これは絶対に処刑だね!
しょけいって初経のことですか?




初経と言えば生まれて初めての月経。
女の子の大事な日ですよね。


女銃鹿と初経の思い出をお話したい。


うわぁ…
最低に最低を塗り重ねてるの…
くだらなすぎて涙が出てきた…
ジョークとして考えても寒すぎる…


あまりのくだらなさに女銃鹿は頭をかかえた。


もう許せないね!
お姉ちゃんに報告なの!


メスは半分になったチーズケーキの皿を自分の頭に乗せた。


まてまて、女銃鹿はシャレが通じないからヤバイ!


グーパンで○○○殴られてオカマになっちゃう!


(ホントくだらないですね~)
おねーちゃん!
おねーちゃん!


日本をゆるがす大事件なの!
今すぐ起きてなの!



メスはチーズケーキの皿を頭に乗せた状態で、2階の部屋に向かって猛ダッシュした。


は…はい…
少し待って下さい…
お姉ちゃんノック無しで開けるよ!


メスは扉を乱暴に開けて、女銃鹿の部屋に突入した。


!?

お姉ちゃん!
恐ろしい大事件なの!


女銃鹿の目の前には、男銃鹿に傷つけられたボロボロなメスはいなかった。

女銃鹿の目の前には傷一つ付いていない無傷なメスがいた。


メスの体が完全に健康!?


メスの体に傷1つ付いていない?

健康なメスの姿を見た女銃鹿は口を金魚のようにパクパクさせた。


???


そりゃあ…
完全に健康だけど?

それがどうかしたのかな?


つまり…
戦いなんかなかった…


男銃鹿(おじゅうか)とのやりとりは完全に夢の中の出来事?


夢の中の出来事?
何の話かな?
いえ、夢なら全然OKです。
夢オチならみんな幸せです。


男銃鹿(おじゅうか)との戦いはやっぱり夢だったんですね。


ホント性質(たち)が悪い悪夢でしたよ。


女銃鹿は少しだけあふれた涙を指でぬぐいながら微笑(ほほえ)んだ。


・・・・


・・





てかさ、男銃鹿さんって誰かな?


初めて聞く名前だね。


え?


どこのどちら様かな?
紹介して下さいなの。
メスも男銃鹿に何度か会いましたよ。


いくらなんでも知ってる筈(はず)です!


んー知らないね…
会ってれば覚えてると思うの…
(メスは男銃鹿を覚えていない)


そういえば∞射程ノ女銃鹿が…


・・・・


・・




男銃鹿の全てを殺し尽くしました



これで男銃鹿が生まれた事実さえも消えるでしょう



(…と言っていました)


男銃鹿が生まれた事実が消えたから…

男銃鹿がいなかった世界に書き変わった?


「男銃鹿のいなかった世界書き変わった?」

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・・・・・・。
(男銃鹿から銃を教わった私の技術はどうなるんですかね?)


今よりもっと無能になったらシャレになりませんよ 


女銃鹿は軽いめまいを起こした。


ねーねー。
何を悩んでるか知らないけどさー。


見て欲しいものがあるの。


なんですか?
私の頭に乗ってるチーズケーキのお皿を見て欲しいのっ!


お皿の上に半分食べられたチーズケーキがあるよね!


メスは頭上のチーズケーキを両手の人差し指でビシリと指さした。


ああ、チーズケーキの話ですか?


心の奥底からどうでもいい 


ガーン!?
お姉ちゃんが正義を捨ててしまったの!


メスはショックを受けてヘナヘナと座り込んだ。


チーズケーキなら後で買ってあげますよ。

むぅ…
むぅ…


理屈では納得できても心が納得しないの。


たかがチーズケーキで大騒ぎしないで下さい。


女銃鹿はメスの頭に乗っている皿をチラリと見る…


皿の上にはチーズケーキが乗っていた


「チーズケーキ」

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・・・・・・


・・・・


・・




! 


チーズケーキを見た女銃鹿は真っ青な顔になり、困惑した。


ん?
これはいったい…


女銃鹿はチーズケーキの皿を見てワナワナと震(ふる)える。


???



これが…


半分のチーズケーキ?


女銃鹿は目をこすりながら、何度も何度もチーズケーキを見た。


少し騒ぎ過ぎだね?


なんでチーズケーキで驚愕(きょうがく)してるのかな?


なんだこれ?
見えている世界がおかしい?


目の感度が良すぎる 


女銃鹿は両目を押さえ…
そのまま座り込んでしまった…


お姉ちゃん!
どうしたのかな!
視点の速さがおかしい…


目が動きすぎて目の筋肉が痛い…

目の筋肉が崩壊する…


すぐにお医者さんを呼ぶから待っててなの!

なんだこれ?
なんだこれ?


女銃鹿は眼球の苦痛に耐えられなくなり気絶した。


・・・・・・


・・・・


・・



現在の時刻は夜の12時10分

女銃鹿の体に大きな変化が起きていた 

 


・・・・・・


・・・・


・・








同時刻。
宇宙の外。


宇宙の外は色がない無色の世界だった


「宇宙の外(黒い軌跡は∞射程ノ女銃鹿、黒い点は様々な次元の宇宙)」
宇宙の外


今ごろ女銃鹿は大きな変化に混乱してるでしょうね♪


宇宙の外で1発の弾丸が秒速∞kmで飛翔していた。


弾丸は∞射程ノ女銃鹿という名前のグノーシャだった 


「∞射程ノ女銃鹿」

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男銃鹿が生まれた事実を私が消した影響で、現実の中身が変わるでしょう。


そして…


私の∞に触れることで女銃鹿の体質が変化します。


とてもとても大きな変化ですよ。
大騒ぎして当然です。


女銃鹿覚えていますか?


私はあなたに…

「よい処刑を与える」と言いましたよね 


しっかりと与えましたよ。


あなたはこれから人間が出来なかった方法で処刑にアプローチできるようになる


手に入れた方法を活かすも殺すもあなた次第です。




・・・・・・。






より深く…


より凶悪に…

より聡明(そうめい)に…


死刑が持つ真理を探求して下さい 


私は遠い宇宙の外であなたを応援しています。


夢を追いかけながら応援します


そう言いながら…

∞射程ノ女銃鹿は距離という概念(がいねん)が存在しない宇宙の外をひたすら飛んで行った。



・・・・


・・





さてと…


私は私の夢を探求することにします。


宇宙の外の外には何があるのでしょうか?



∞射程ノ女銃鹿は誰も届かない場所に飛んでいった。



・・・・・・


・・・・


・・










「高層ビル」

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同時刻 夜12時10分。
新宿の一等地にある高層ビル。


「なゐの神衣(ないのかむい)の事務所」

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なゐの神衣(ないのかむい)の事務所。


一口飲むか。


なゐの神衣は事務所のデスクに座り、コンビニで購入したカップ酒のフタを開けた。


お父様が人の集まり以外で飲む姿は珍しい。


蜻蛉斬り(とんぼきり)はソファーでTRPGのシナリオを書きながら、なゐの神衣の行動を興味深そうに観察した。


年に1~2回は自分のために飲む時もある。
なにかあった?


・・・・


・・





男銃鹿というグノーシャが予想通り死んだ。


それだけだ。


男銃鹿(おじゅうか)?
聞かない名前?


「男銃鹿? 誰それ?」

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男銃鹿を覚えているグノーシャは、今や私と女銃鹿だけかもな。


「∞射程ノ女銃鹿」が男銃鹿が生まれた事実を消しさった影響だ。


事実を消し去った?
どゆこと?
男銃鹿の行動が全て無かったことになっただけだ。


大した変化では無い。


そもそも男銃鹿とは何者?



男銃鹿か。
・・・・・・。





(そういえば…)


昔、男銃鹿に誘われて14才の少年が手がけた演劇を見たな。

あの時の男銃鹿が男銃鹿の本質なのだろう。


・・・・・・。


なゐの神衣はカップ酒を一口飲み。

昔のことを思い出した。


・・・・・・


・・・・


・・





(4年前、私は男銃鹿に誘われ東京に建てられた劇場に来ていた)


「東京に建てられた劇場」

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真っ赤な床。

真っ赤なイス。

真っ赤なカーテン。



そこは西欧のクラシックな劇場を模(も)した劇場だった。



・・・・



・・



その劇場の1階最前列で男銃鹿と私は14才の少年が手がけた演劇を見ていた。



・・・・・・。
すごい演技力だ。
14才の人間がここまでやれるのか?


私はあの時、14才の少年が手がける演劇に感嘆(かんたん)していた。


なりやまない拍手。
号泣(ごうきゅう)する人々。


その演劇は間違いなく天才の所業だった。


どうだ?


俺に呼ばれるだけの価値はあっただろう?

100年に1人の天才少年だ。


ふむ。


内容は青臭い部分があるが…


今までにない勢いを感じる。
若い可能性で満ち溢(あふ)れている。


将来が楽しみな少年だろ。
ああ。


将来の大成を期待せずにはいられない。


だろだろ。


普段は冷徹な男銃鹿は、まるで自分の事のように微笑(ほほえ)んでいた。


「今時の若い者は駄目」と言う老人は紀元前からいるが…


いつの時代でも優秀で才能のある若者は生まれてくる。


優秀な若者がいる限り未来は明るい。


そう……かもな。
俺は…優秀な若者がなんの足かせもなく羽ばたく姿を見続けたい。


優秀な若者が羽ばたく姿は何よりも美しい。


(なんの足かせもなく羽ばたく?)
もし若者の足かせになる敵が現れたら、俺が前に出てその敵を排除してやる。


若者の輝かしい未来は最優先事項だ。


若者の足かせになる敵を全て排除するのか?
そうだ。



(考えが青いな)


若者の足かせになる敵が、輝かしい未来を持つ若者だったらどうする?


なゐの神衣は男銃鹿をニヤニヤ笑いながら見つめた。


なんだよ?
俺がおかしいことを言ったか?
普段は冷徹だからヒネた奴だと思っていたが…


以外に青いな


青くて…

一本気で…


真っ直ぐ飛ぶ弾丸のようだ



・・・・・・


・・・・


・・



「なゐの神衣の事務所」

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現在。
なゐの神衣の事務所。


なゐの神衣はデスクに座りながら男銃鹿の事を思い出していた。


お父様。


黄昏(たそがれ)てないで男銃鹿が何者か教えてください。


む…
ああ、そうだな…
・・・・・・。
男銃鹿は…


・・・・・


・・



真面目な奴だったよ。


真面目にまっすぐ飛んでいったら、デカイ壁にぶつかってあっさり死んだ。


おー。
女銃鹿に似てそう。
なるほど女銃鹿か?
確かに似ている部分もある。


もし女銃鹿が死ぬとしたら、男銃鹿と似た形で死ぬかもな。


女銃鹿はどんな壁にぶつかって死ぬのだろう?
さあな。


女銃鹿を殺す壁が私でないことを祈る。


なゐの神衣は窓から見える月を見ながらカップ酒を一口飲んだ。


そして


・・・・


・・



少しだけ飲んだカップ酒をゴミ箱に捨てた。



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