第64話 | |
2014年6月24日。 ブログの管理人「物凄く長い時間やってた男銃鹿の話は、あと2~3話で終わります」 |
東京で老人の虐殺事件が起きただと? |
夜の10:30 愛知県。 鬼頭剛(きとうつよし)巡査部長はパトカーで母親がいる老人ホームに急行した。 |
もしかしてかーちゃんにも被害が・・・ | |
鬼頭剛(きとうつよし)は老人ホームフタツメ園(えん)の駐車場に車を止め 転がり落ちるように下車。 「特別養護老人ホーム フタツメ園(えん)」 老人ホームに向かって疾走した! |
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かーちゃんは殺させねぇ。 | |
かーちゃんは俺が守る。 鬼頭剛巡査部長の手には防弾盾が握(にぎ)られていた。 「防弾盾」 |
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え? 刑事さん? |
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入口の下駄箱を掃除していた介護職員のおばちゃんが鬼頭剛を発見した。 |
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介護職員のおばちゃん。 今すぐ老人を1ヵ所に集めてくれ。 |
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え? え? |
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虐殺(ぎゃくさつ)だ。 | |
は? 虐殺? |
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東京で老人の大量虐殺が発生した! | |
ここもどうなるか 分からん! 万が一に備え老人を守るぞ! 鬼頭剛(きとうつよし)の大声が鳴り響く。 鬼頭剛(きとうつよし)の大声を聞いた夜虫は驚き鳴くのをやめた。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 5分後。 茨城県牛久(うしく)市。 「牛久大仏(うしくだいぶつ)の頭頂部」 |
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東京のメスがしつこいな。 |
男銃鹿は牛久大仏(うしくだいぶつ)の頭頂部でメスの攻撃を36バレルプロトタイプで迎撃していた。 |
許さないの! 許さないの! |
メス達は、東京のブロックが敷(し)きつめられた広場にいた。 「ブロックが敷(し)きつめられた広場」 |
おらおら! やっちまえメス! |
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∞操作でみんなを操って攻撃! 攻撃! 攻撃! |
メスは60Gに肩車をしてもらいながら、全国のグノーシャを操り男銃鹿に攻撃していた。 |
殲滅(せんめつ)型スペースデブリ跳弾! | |
クリスチャン・ドップラーの発勁! | |
衝撃波による遠距離当て身! | |
超光速クエーサー切り! | |
人口太陽弾頭! |
100の攻撃が男銃鹿を襲う! |
迎 撃 ! |
男銃鹿は全長13mの巨大な尾を動かし… 36バレルプロトタイプの銃撃で全ての攻撃を吹き飛ばした! 「男銃鹿の巨大な尾の先端に36バレルプロトタイプが付いてる」 |
!? | |
!? | |
!? | |
!? | |
!? |
|
せんめつしゃげき 殲滅 射撃 !! |
36バレルプロトタイプは10万発の弾丸を吐きだし… グノーシャ達を蹂躙した! |
光速で移動できる俺が反応できん!? | |
加速と玉数だけで圧倒かよ!? | |
俺の足が穴だらけに!? | |
どういう物量だ!? | |
ひゃでぶ! | |
ぐは! |
92人のグノーシャが銃撃を喰らい出血多量で気絶した! |
ほとんどの仲間が一瞬で戦闘不能!? | |
私達にも銃撃が来ます! | |
横殴りの雨のような銃撃が女銃鹿 メス、60Gを急襲した。 |
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守る! 俺は! 女銃鹿 を守る 部品だ っ! |
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愛知県にいた3号は∞防御を使用。 女銃鹿達の体は プラチナの膜で コーティングさ れる! |
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部品を守るプラチナの膜(まく)… 3号君はもしかして… |
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プラチナの膜(まく)は全ての銃弾をはじき無効化した。 |
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また三号君が∞防御で守ってくれた。 | |
すげーな3号。 ナニモノだよ3号。 |
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3号くん頑張りすぎなの。 | |
ここまで凄いと体力持たないよね。 |
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・・・・・・。 | |
体力は持たなかった。 ∞防御を使いすぎた3号は屋根の 上で立った状態で気絶している。 |
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あれ? | |
プラチナ色の膜(まく)が消えた? もしかして∞防御も消えた? |
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ヤべぇ… こっから先はデッドゾーンだ… |
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敵の連携は崩壊。 | |
これよりメスの本拠地… |
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愛知県の老人を駆除する! |
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!? | |
!? | |
!? |
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フィ――――ィイン。 | |
36バレルプロトタイプの内部から駆動音が発生。 |
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ってぇ! | |
36バレルプロトタイプから・・・ 4万5千発の大量膨大(ぼうだい)な弾丸が吐き出される! マイナスの光速で飛翔する弾丸は白いレーザーに変異し… レーザーと化した銃弾の束が、百の山を吹き飛ばしながら爆走した! ・・・・・・ ・・・・ ・・ 同時刻。 老人ホームフタツメ園。 「老人ホームフタツメ園」 |
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みんなリビングに集まったか? | |
鬼頭剛の指示で12人の老人は… 一ヶ所に集められた。 4人の介護職員と鬼頭剛は防弾盾を構えて老人たちを守っている。 |
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ほんとに銃撃がくるの? | |
なにもこなければそれで問題ない。 一晩は老人を守ってくれ。 |
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つよし! | |
車いすに座っていた鬼頭剛の母親が鬼頭剛に語りかけた。 |
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ん? なんだカーちゃん? |
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ハンカチをもった? | |
おいおい… こんな時までハンカチの話かよ… |
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でもまぁ、ボケちまったからしょうがないか。 |
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俺が最後まで守る からな。 |
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つよし… | |
鬼頭剛は決意をこめた優しい表情で、母親の頭を軽くなぜた。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 同時刻。 男銃鹿は36バレルプロトタイプで虐殺していた。 |
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ノー! | |
やめろぉぉぉ! | |
そんな・・・ |
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1万人を虐殺完了。 2万人を虐殺完了。 3万人を虐殺完了。 |
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凄まじい速度で愛知県の老人を虐殺していた。 老人が白いレーザーで死ぬ。 老人が白いレーザー死ぬ。 老人が死ぬ。 老人が死ぬ。 死ぬ。 死ぬ。 |
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な・・・ なんかやばい・・・ |
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みんな盾を構えろ! 12人の老人を守るぞ! |
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はい。 | |
ええ。 | |
4人の介護職員と鬼頭剛は防弾盾を構えた。 |
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あれ? 光? |
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突如(とつじょ) ・・・・ ・・ 老人ホームは巨大な光に包まれた! |
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!? | |
!? | |
!? | |
!? | |
!? | |
老人ホームの壁は穴だらけになる! 東側の壁面が一瞬で崩壊する! そして… ・・・・ ・・ レーザーと化した銃弾が老人達に襲いかかった! |
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守れ ぇぇ! |
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襲いかかった銃弾はまるでロケット花火! ヒュンヒュンヒュンという音を鳴らし… 真横から老人に突撃した! |
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ぐあぁあぁ! | |
銃弾は防弾盾にブチ当たり続ける。 防弾盾に鋼鉄バットで殴られたような衝撃が何度も何度も伝わった。 |
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きゃっ! | |
があっ! | |
あまりの苦痛に介護職員は悲鳴をあげる。 |
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守れぇ! 守れぇ! |
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ぐぅあぁぁぁぁ! | |
だめ・・・ 痛すぎて手が・・・ |
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銃弾を受け止めた盾にヒビが入る。 介護職員の指が折れる。 介護職員の腕が折れる。 |
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がああああああ! | |
ごおおおおおお! | |
・・・・ ・・ |
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!? | |
銃弾が鬼頭剛の右腕を貫いた! |
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刑事さん! | |
つよしぃ! |
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あ……ああ…… あ…… |
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鬼頭剛の腕から血がドクドクとあふれ… 盾を構えた状態でうずくまるように気絶した。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ |
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愛知県に住む4万5千の老人を虐殺… | |
完了。 茨城県にいた男銃鹿は銃撃を止め、36バレルプロトタイプを休ませた。 |
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また死んだ。 また助けられなかった。 |
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早すぎて手がでねぇ。 | |
圧倒的な物量だった。 どうすることも出来なかった。 東京にいた女銃鹿は絶望しヘナヘナと座り込んだ。 |
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戦力差は明確。 これ以上の戦いは無駄だ。 |
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降伏しろ。 降伏して老人の虐殺を黙って見てろ。 |
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調子にのんな! ぜってー倒す! |
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いや、無理だね。 | |
今の状態だと100パー勝てないの。 降伏するしかないよ。 |
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降伏ですか? | |
くっそ! 老人はどうすんだよ? |
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むぅ… |
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降伏するのか? ありがたい。 |
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だったら俺から手を引き、気絶したグノーシャの治療をしてくれ。 |
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いやいや、すぐには降伏しないの。 | |
降伏する前に少し話をしないかな? |
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話? | |
遠くから唇を読み合うだけじゃなく、ちゃんとした会話がしたいの。 | |
東京に来てくれないかな? とっても接近してお話がしたいの。 |
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いまさら交渉ですか? | |
・・・・ ・・ |
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いいだろう。 俺も少子高齢化問題を説明したい。 |
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牛久大仏の上にいた男銃鹿は跳躍。 そして・・・ 砂煙を拡散しながらメス達がいる広場に無音で着地した。 |
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はえーよ。 ワープより早いよな。 |
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ここまで接近したのは初めてか。 | |
男銃鹿はメス達から10mほど離れた広場の中央に着地した。 |
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近くで男銃鹿を見ると威圧感がありますね。 | |
たしかに… 尾がでけぇ… |
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男銃鹿の尾てい骨から生えた13mの尾は近くでみると迫力がある。 女銃鹿と60Gは、男銃鹿の姿を見て恐怖を感じた。 「13mの尾」 |
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さて、何から話そうか。 | |
男銃鹿ちゃんにムッチャ言いたい事があるの! | |
メスは男銃鹿を見ても動じない。 メスを肩車している60Gを∞操作で操り… 男銃鹿の5m手前まで接近した。 |
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おまえホントに恐怖を感じない奴だな。 | |
なんだ? | |
3行の長文で私の想いを伝えるの。 | |
・・・・・・ ・・・・ ・・ 死 ね ! |
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いきなり「死ね!」かよ! というかこれは3行の長文なのか! |
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ストレートな激プン!? メスがMAXプンプンしている! |
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その要求はのめない。 | |
俺は、俺の考えを説明しにきた。 |
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おじーちゃんおばーちゃんを虐殺した人の説明はいらないよ。 | |
男銃鹿ちゃんはおじーちゃん、おばーちゃんをベロンベロンに甘く見て排除した性質の悪い効率厨でいいの。 |
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老人をベロンベロンに甘く見た? 効率厨? |
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なるほど、間違いではない。 俺は老人の労働力を低く評価して、老人を排除した。 |
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少子高齢化問題を… | |
虐殺という最も効率が良いアプローチで解決しようとしてる俺は… 効率厨という生き物かもしれない。 |
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殺された老人さんが可哀想なの。 | |
今の日本は老人が多すぎる。 多すぎる老人は若者の負担になる。 |
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若者の未来のために邪魔な老人達を殺すしかない 心を悪鬼にして殺すしかない |
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(これが男銃鹿の考え…) | |
シンプルで真っ直ぐで… 考えを曲げそうにない… |
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(男銃鹿みたいに、自分の理念を押し通そうとする殺人鬼はどうすればいいんだ?) | |
殺すしかないのか? |
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邪魔な老人ね。 やっぱりオジーちゃんオバーちゃんをベロンベロンになめてるね。 |
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なめてはいない。 俺は… |
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いや、もういいよ。 全部分かったの。 |
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メスの目は殺意で塗りつぶされる。 ・・・・ ・・ メスは刀を振りあげ上段の構えをとった。 |
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って!? | |
おい!? |
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殺(や)るつもりか? | |
最初から1対1で殺(や)りあうつもりだったよ。 | |
近くに来てくれて ありがとうなの。 メスは刃物のように鋭いプレッシャーを男銃鹿に向けた。 |
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1対1!? | |
サシで勝てるわけねーだろ! というか… |
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メスを肩車して、メスの足がわりになってる俺も強制参加じゃねーか! |
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60Gちゃん一緒にがんばろーね。 | |
うわぁ… | |
この子、超自己中… グッバイ、俺のチェリーライフ… |
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駄目です! 男銃鹿に勝てるわけがない! |
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勝てる可能性がない! 女銃鹿はメスの手をつかみメスを引きとめた。 |
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お姉ちゃんは戦わないでいいよ。 少し離れて見てて欲しいの。 |
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な……な…… なな…… |
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女銃鹿はメスの∞操作で肉体の主導権を一瞬で奪われ… メスから30m離れた場所まで移動させられた。 |
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どういうつもりですか! 死にますよ! |
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戦力差がありすぎて負けますよ! |
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かもね。 | |
死ぬつもりですか! | |
意味が分かりません! |
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「かもね」じゃねーよ。 俺もついでに死ぬじゃねーか。 |
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オマエ… どんだけ鬼畜モノなんだよ… 鬼作さん越えてるぞお前。 |
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勝てない決闘を挑(いど)む理由が分からないな。 | |
何を考えているメス? 男銃鹿は不可解な目でメスを見つめた。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 同時刻。 東京のとあるビル。 なゐの神衣のオフィス。 「東京のとあるビル」 「なゐの神衣のオフィス」 なゐの神衣(ないのかむい)と蜻蛉斬り(とんぼきり)はオフィスの窓から下を見下ろし・・・ メス達の行動を観察していた。 |
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決闘をはじめるのか。 | |
なぜメスは男銃鹿と1対1で戦う? | |
なぜ勝てない戦いをなぜはじめる? |
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メスは・・・ | |
死ぬつもりだろう。 |
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あのメスが死ぬつもり? | |
狙いは女銃鹿の無限。 | |
メスが死ぬ姿を見れば、愚鈍(ぐどん)な女銃鹿も本気を出すしかない。 女銃鹿の中に眠る無限の可能性が目を覚ます筈(はず)だ。 |
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女銃鹿の中に眠る無限の可能性? | |
元々女銃鹿は強力な∞を持つグノーシャだった。 | |
肉体と具脳の相性が恐ろしいほど良く。 ∞の可能性を生まれながらに保持していた。 「具脳 = グノーシャの脳」 |
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なるほど。 最初から才能ありまくりな主人公。 |
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よくあるパターン。 |
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だが女銃鹿の心が愚鈍すぎていまだに、その力を引きだせていない。 | |
追い込んで力を出させる必要がある |
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なるほど。 追い込まれてから本気を出す主人公。 |
|
よくあるパターン。 |
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メスは自らの命を捧(ささ)げる事で女銃鹿の心を追い込み… | |
女銃鹿の内に眠る無限を引き出すつもりだ。 |
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そして・・・ | |
女銃鹿に男銃鹿を殺させる。 |
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(あのメスが自分の命を捧(ささ)げる?そこだけはシックリこない) |
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これでようやく真の∞を持つグノーシャが産まれる。 | |
真の無限を持つ… ∞射程の女銃鹿が産まれる。 真の無限を語る「なゐの神衣」はとてもとても嬉(うれ)しそうだった。 |
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(お父様の真意が読めない) | |
蜻蛉斬りは、なゐの神衣が真の無限を見たがる理由が分からなかった。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 同時刻。 ブロックがしきつめられた広場。 60Gと、60Gに肩車をしてもらっているメスが… 男銃鹿と対峙(たいじ)していた。 |
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・・・・・・。 | |
・・・・・・。 |
|
・・・・・・。 |
|
やめてください! 逃げて下さい! |
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勝てるわけがない! 自殺行為です! 女銃鹿は∞操作の影響で首から下が動かない。 |
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すぐ終わるから私をジックリ見ててなの。 | |
メス・・・ |
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やめてください男銃鹿! | |
もう老人殺しの邪魔はしません! だから決闘を中止して下さい! |
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・・・と女銃鹿が言ってるが。 | |
決闘をはじめるよ。 |
|
メス! | |
どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? |
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どうしても……ね…… | |
メスは上段に構えた刀を強く握る そして… 60Gの足を操り… ジリジリと間合いを詰めた。 |
|
もうやるしかないな。 | |
男銃鹿は13mの巨大な尾を動かし… 尾の先端についた36バレルプロトタイプの銃口をメスに向けた。 |
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いやだ!いやだ!いやだ!いやだ! いやだ!いやだ!いやだ!いやだ! いやだ!いやだ!いやだ!いやだ! いやだ!いやだ!いやだ!いやだ! |
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メスだけは死んじゃ嫌だ! 女銃鹿は声をからしながら決闘に反対した。 |
|
なあメス。 | |
俺を巻き添(ぞ)えにして殺すのは構わん。 |
|
だが女銃鹿だけは裏切るなよ。 おまえの大事な家族だ。 |
|
お前が死んだら女銃鹿が悲しむ。 |
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・・・・・・。 |
|
お…おい… | |
なんで黙るんだよ? おまえ… まさか死ぬつもりか? |
|
誰かメスを助けてぇ! | |
肉親なんです。 ただ一人の肉… ・・・・ ・・ |
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行くよ! 男銃鹿! |
|
恐ろしいモノを魅(み)せてあげるの! |
|
い や だ ぁ ! |
|
女銃鹿が絶叫した。 60Gが前に出た。 メスが刀を強く握った。 男銃鹿が待ち構えた。 ・・・・ ・・ |
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来い! |
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私は飛び込むだけなの! |
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がぅ!! | |
メスを肩車していた60Gが前に跳躍(ちょうやく)した! |
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最初から俺の敵ではない。 | |
男銃鹿は巨大な尾の先端についた36バレルプロトタイプを動かし 斜め上空からメスに 五千発の銃弾を浴びせた! |
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○▽×&$▽×! | |
銃弾は加速し白いレーザーに変わる。 |
|
$◎×&$▽×! | |
白いレーザーが周囲を 白に染める。 白く照らす。 視界がレーザーの光で・・・ 白だけに なった。 |
|
光で何も見えない。 | |
光の中で何が? ・・・・ ・・ |
|
勝負は一瞬。 もう勝敗は決した筈(はず) |
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光で結果が見えないが… おそらくメスは… |
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死んだな。 |
|
めぇすぅぅ! | |
・・・・・・ ・・・・ ・・ 白い光が消え視界が元に戻る。 |
|
・・・・・・・ | |
・・・・・・・ |
|
・・・・・・・ | |
|
|
メス… メスが死んだら私も… |
|
何かが真っ二つに割れた。 |
|
!? | |
!? | |
!? |
|
・・・・・・。 | |
俺が…… | |
実力で負けた? |
|
私が実力で勝ったの。 |
|
信じ… | |
られん。 男銃鹿の体が包丁で切られたスイカのように2つに割れた。 13mの巨大な尾も真っ二つに分割された! |
|
メスが勝った!? | |
うそ!? | |
信じられん。 |
|
勝ったな。 |
|
太 陽 万 歳 ! |
|
メスは両手を斜め上に伸ばし、TVゲームのダークソウルに出てくる太陽賛美のポーズをとった。 |
|
勝った! 真っ向勝負で勝った! |
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どうやって圧倒的な戦力差を覆(くつがえ)した? | |
というか… | |
お父様がおもっくそ予想を外した。 |
|
む… 確かに… |
|
お父様が予想を外す姿を初めて見た。 | |
私の完敗だな。 | |
変な勢いに乗って勝利をかっさらう子だと思っていたが、まさかここまでとはな。 |
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少し複雑な気分。 | |
まったく恐ろしい子だ。 | |
我々もうかうかしていられないな。 予想を外したなゐの神衣は嬉しそうだった。 |
|
(まぁ・・・メスは頑張った) | |
それよりも男銃鹿がヘタレすぎる。 この程度で物量型グノーシャ??? 蜻蛉斬りは色々納得できない顔で男銃鹿の死体を見つめた。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 同時刻・・・東京。 ブロックがしきつめられた広場。 女銃鹿はメスが勝てた理由が分からず混乱していた。 |
|
どうやって? どうやって男銃鹿に勝ったんですか? |
|
チートですか! チート使ったんですか! |
|
ジャンプして飛び込んで、切り落としで攻撃しただけだよ。 |
|
切り落とし? 剣術ですか? |
|
切り落としは、相手が攻撃してきた時に使う技なの。 | |
剣を1回振るだけで、相手の攻撃をそらして相手に攻撃できちゃう… 1粒で二度おいしい技なの。 ※メスの切り落としは一刀流の斬り落としと尾張柳生の一刀両断をミックスさせてメスが独自改造しまくった斬り落とし。 |
|
??? | |
分かりにくいですね。 その切り落としで、男銃鹿とどう戦ったんですか? |
|
まずね。 | |
男銃鹿ちゃんの攻撃パターンを戦いながら学習したの。 |
|
そして攻撃パターンから男銃鹿ちゃんの行動を先読みしたの。 | |
先読みして男銃鹿の早い銃撃に対応したのですか? | |
まね。 | |
後は… ジャンプして…
さらに接近したら、男銃鹿ちゃんが私にグーパンで攻撃してきたね 私はそのグーパンを事前に予測してたから対応できたの。 刀でグーパンをどかして… 振りおろした刀で男銃鹿ちゃんを真っ二つにしたよ。 |
|
ようするにジャンプして、刀を1回振っただけですよね? | |
たった一振りで、男銃鹿の銃撃やグーパンから身を守り… なおかつ男銃鹿を真っ二つにした? |
|
そうなるね。 |
|
男銃鹿が回避できなかった理由が分かりません。 |
|
切り落としは相手が攻撃してる時に攻撃するの。 | |
敵は攻撃に集中してるから、防御や回避にまで手が回らないの。 男銃鹿ちゃんは切り落としを初めて見ただろうから、尚更(なおさら)対応できないよ。 |
|
見た目はジャンプして剣を振っただけなのに、中身は物凄い高度ですね。 | |
0秒、0ミリの誤差もない究極の斬撃だったの。 | |
ミスを恐れずに飛び込まないと、絶対に成功しない一撃だね。 |
|
(ようするに高度すぎる技で、男銃鹿の加速を叩きつぶしたのか?) | |
だったら理屈は簡単だ。 メス自身が純粋に強いから勝てた。 それだけか。 |
|
本当のメスは∞斬戮(ざんりく)を極めた純粋な剣士なんですね。 | |
近距離戦のメスは男銃鹿より強い。 ・・・・ ・・ |
|
・・・・・・。 |
|
? | |
どうした? | |
・・・・ ・・ メスは真っ二つになった男銃鹿の死体を眺(なが) めながら、男銃鹿の死体に話かけた。 |
|
男銃鹿ちゃん。 私に切り落としを教えてくれた人は90歳のお爺ちゃんだよ。 |
|
90歳で「老よく壮を制す」を体現した凄いオジーちゃんだったよ。 ※老よく壮を制すとは、力が弱くて動きの遅い老人が熟練した技で若い人に勝つという意味。 |
|
男銃鹿はジーさんが教えてくれた技にやぶれて死んだわけだ。 | |
うん。 | |
お爺ちゃんお婆ちゃんをベロンベロンに甘くみて排除した男銃鹿ちゃんは… すごいおジーちゃんから教わった剣術にやられて死んだの。 |
|
男銃鹿… | |
女銃鹿は男銃鹿の死体にそっと触れ… 絶命した男銃鹿の目をそっと閉じた。 |
|
・・・・・・。 | |
・・・・・・。 |
|
私に銃を教えてありがとう。 さようなら。 |
|
女銃鹿は男銃鹿の血で汚れた手を眺(なが)めながら静かにつぶやいた。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 同時刻。 老人ホームフタツメ園のリビング。 老人ホームのリビングは銃撃で穴だらけになっていた。 崩れた壁から産まれた粉塵(ふんじん)が空気を汚している。 |
|
・・・・・・。 | |
男銃鹿の銃撃で右腕を貫かれた鬼頭剛(きとうつよし)は気を失っていた。 ・・・・ ・・ |
|
刑事さん! 刑事さん! |
|
ん・・・ | |
・・・・ ・・ |
|
つ よ し ! |
|
うぉ! | |
母親の大声を聞いた鬼頭剛(きとうつよし)が目を覚ました。 |
|
刑事さん! | |
刑事さん攻撃が止みましたよ! |
|
ホントか!? | |
目を覚ました鬼頭剛(きとうつよし)は右拳(みぎこぶし)を振りあげ喜ぼうとした… |
|
つぅ!? | |
右腕に激痛が走る。 鬼頭剛は男銃鹿の銃撃で負傷していた。 |
|
右腕は応急処置がしてあるわ。 | |
右腕の傷口にはハンカチが当てられ、三角巾 (さんかくきん)が巻かれていた。 |
|
止血してある。 | |
傷口に当てられたハンカチは… ・・・・ ・・ カーちゃんのハンカチ? |
|
あなたのお母さんがハンカチと三角巾で的確に止血してくれたのよ。 | |
止血しなかったら危険だったわ。 |
|
ボケたかーちゃんがハンカチで止血!? マジかよ!? |
|
だから言ってるでしょ! |
|
ハンカチは必要! ハンカチは絶対に持って来なさい! |
|
ああ……そうだな…… カーちゃんの言うとおりだ…… |
|
ハンカチは絶対にいる。 鬼頭剛は詰め寄る母親を静止しながら、謝罪した。 |
|
剛(つよし)君完敗よ。 お母さんに1本取られたわね。 |
|
はっ♪ | |
ははははははははははっ♪ 鬼頭剛はデコを手でつかみながら大げさに笑った。 |
|
まさかボケたカーちゃんに助けられるとはな♪ | |
カーちゃんを守っているつもりだったが 守られてたのは俺だったんだな。 |
|
あら、あなたのお母さんは今までずっとあなたを守ってきたじゃないの。 | |
だよな。 なんで気づかなかったんだろうな。 |
|
ありがとよカーちゃん。 |
|
そんな事はどうでもいい! ハンカチをいつも持ちなさい! |
|
これからは毎日5枚ぐらい持っていく。 | |
ハンカチは絶対に必要だよな。 |
|
うん。 分かればよし。 |
|
鬼頭剛は母親に笑顔を向けた。 母親は鬼頭剛に微笑み返した。 |
|
(母親に本物の笑顔を向け合ったのは小学生以来か) | |
まったく俺ときたら… 鬼頭剛は小さく苦笑いした。 |
|
刑事さん! | |
うちの老人ホームはみんな生き残りましたよ! 刑事さんのおかげです! |
|
そっか。 なんとかなったな。 |
|
うちはなんとかなったけど、外はとんでもない事になってるわよ。 |
|
そうか… | |
鬼頭剛はゆっくり立ち上がり… 神妙そうな顔で窓の外を見た。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ 同時刻。 東京。 東京は老人の虐殺でパニックになっていた。 パトカーやサイレンが鳴り響き… 命の危険を感じた人々が店で買いだめをして、東京から脱出しようとしていた。 メス、女銃鹿、60Gはその様子をブロックがしきつめられた広場から眺(なが)めていた。 |
|
騒ぎが大きくなってるね! | |
男銃鹿ちゃんの死体を隠ぺいしてからトンズラするよ。 |
|
死体を隠ぺい… まるで犯罪者です… |
|
お姉ちゃんは死体遺棄を少なくとも3度以上やってるよね。 | |
まぁ… そうですけど… |
|
なあなあ。 ちょっといいか。 |
|
今さら言うのもなんだが、気になる事がある。 質問していいか? |
|
何ですか? | |
何かなー? 何かな―? |
|
男銃鹿の∞加速って… | |
因果関係をブチ抜くスピードって言われてたよな? |
|
はい。 | |
因果関係をブチ抜くスピードってけっきょくなんなんだ? | |
最後まで分からなかったぞ。 |
|
あーそれねー。 | |
メスは説明をはじめる。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ |
|
・・・・・・。 | |
メス達の30m後ろで無傷の男銃鹿が無言で立っていた。 |
|
(メスの考えは人として正しい) | |
だが、その考えでは… 少子高齢化問題は解決しない。 |
|
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