第50話 | |
メス「自殺はしません! 安心して下さい!……ってお姉ちゃん言ってたの!」 |
女銃鹿が廃村で気絶してから3日後。 |
ここは? |
ここは…とあるビジネスホテルの一室。 「ホテルの一室」 女銃鹿はベッドの上で寝ていた。 |
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お姉ちゃんが目を覚ましたの! | |
女銃鹿大丈夫か? | |
メスと三号は女銃鹿の看病をしていた。 「メス」 「三号」 |
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あの……ここは? |
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ここは愛知県にあるビジネスホテルだよ。 | |
最近パパが買い取ったビジネスホテルなの。 「パパ=なゐの神衣」 |
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なゐの神衣さんは、勝ち組のお金持ちさまですか? | |
パパは土建屋の裏番長だからお金持ちだねー。 | |
「なゐの神衣は土建屋の裏番長?」 |
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土建屋の裏番長? どういうポジションだ? |
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あの…… | |
私はどうなったのですか? |
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女銃鹿は3日前に蜻蛉斬りに捕まってどこかに消えた。 | |
「蜻蛉斬り(とんぼきり)」 |
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そして…… | |
3日前に捨てられ、廃村で気絶してるお姉ちゃんを発見したの。 「女銃鹿は捨てられた廃村で気絶していた」 |
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その後、女銃鹿を愛知県のビジネスホテルまで運んだんだ。 | |
そう… ですか… |
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蜻蛉斬りさんとのやりとりは現実だったんですね。 「蜻蛉斬りさんのやりとり」 |
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蜻蛉斬りさんに酷いことされたのかな? | |
拷問されました。 | |
無茶苦茶な拷問でしたよ。 厨二病患者が考えた無茶苦茶な設定を見ている気分でした。 |
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無茶苦茶なのは蜻蛉斬りさんの過剰な演出だね! | |
蜻蛉斬りさんは嘘のピンチで人を追いつめるのが得意なの! |
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大丈夫なのか? | |
洗脳されました。 | |
おそらく私は警察に自首できない体になったと思います。 「女銃鹿は警察に自首できない体に」 |
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やばい拷問だったんだね。 | |
・・・・・。 | |
女銃鹿はベッドの上の毛布をにぎり震えながらうつむいた。 |
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女銃鹿? | |
拷問を喰らっている時は死ぬほどつらかったです。 | |
でも… そんな拷問よりも…… 体がバラバラになるような 拷問よりも…… |
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拷問よりも何かな? | |
100の拷問よりも…… | |
私が ・・・・ ・・ 無実のお父さんを殺した事実のほうがつらかった! |
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無実を!? | |
殺した!? |
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島乃守! いやお父さんは…… |
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無実でした! 「島乃守(しまのまもり)」 無実で善良なお父さんを…… 優しいお父さんを…… |
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私 が 殺 し た ! |
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女銃鹿は自分の髪をひきちぎるような勢いでつかみ… 号泣した。 |
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ああああああああああああああああああああああああああぁぁ! | |
喉から血がでるような大号泣だった。 |
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・・・・・。 | |
・・・・・。 | |
メスと三号はひたすら沈黙した。 かける言葉が見つからなかった。 |
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ああああああああああああああぁ! | |
女銃鹿はひたすら号泣した。 女銃鹿の鳴き声は、ビジネスホテル中に響き渡る。 |
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(俺が何も考えない空気キャラだから、女銃鹿を救えなかった) |
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(私がお姉ちゃんの行動に手を出さなかったから、こうなったの) |
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お父さんを殺した! あんないい人を私が殺した! |
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私はお父さん子で…… お父さんが…… ・・・・ ・・ 好きでした! 「お父さんが好きでした」
20分後。 同ビジネスホテルの一室。 涙が枯れるまで泣いた女銃鹿は、うつむいたままベッドの上で硬直していた。 |
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しばらく一人にさせて下さい。 | |
女銃鹿は消え入りそうな声でつぶやいた。 |
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お……おう。 | |
女銃鹿の髪は乱れ…… 顔からは生気が消えている。 女銃鹿は棺桶に入った死者のようだった。 |
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・・・・・。 | |
お姉ちゃん。 | |
今から部屋の外に出るけど1つ約束だよ。 |
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・・・・・。 | |
自殺はダメだよ! | |
私はお姉ちゃんに生きてて欲しい。 お姉ちゃんが悪人でもかまわないの。 とにかく生き続けて欲しいの。 |
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・・・・・。 | |
いろんな考え方があると思うけど、死んだら全てお終いなんだよ。 | |
・・・・・。 | |
女銃鹿。 | |
自殺はしません… 安心して下さい… |
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女銃鹿は蚊の鳴き声よりも小さな声で返答した。 |
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約束だよ。 | |
女銃鹿信じてるぞ。 | |
メスと三号は名残惜しそうな顔で部屋の外に出た。 部屋にはベッドの上で座っている女銃鹿だけが残された。 |
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・・・・・。 | |
女銃鹿は2人が部屋の外に出たのを確認し… ・・・・ ・・ 懐から素早く拳銃を取り出した! |
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死んで詫びよう。 | |
女銃鹿は銃口を口の中に素早くいれる。 |
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嘘をついてごめんなさい。 | |
さようならメス。 さようなら三号君。 女銃鹿の震える指先がトリガーを…… ひ…く… ・・・・ ・・ |
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待って下さい! | |
女銃鹿の心が制止した。 |
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駄目です! 死んで詫びます! |
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本当にいいのですか? | |
銃で楽に死んでいいのですか? |
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え? | |
蜻蛉斬りさんの拷問に比べたら楽な苦痛です。 | |
私は善人の父親を殺しました。 親殺しの重罪が、この程度の罰でいいのですか? |
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そ……それは…… | |
私はもっと苦しんで死ぬべきだ。 | |
自分の罪を恥じ潔く死ぬべきだ |
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どう死ねと? | |
答えは簡単です。 | |
・・・・ ・・ 腹を切りましょう |
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切腹? 今時切腹ですか? |
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切腹という言葉は、今の日本でも日常的に使われています。 | |
不祥事を起こしたアイドルに切腹しろ! ……とアイドルファンは要求します。 ミスをしたサッカーの監督に切腹しろ! ……とサポーターは要求します。 |
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・・・・・。 | |
問題を起こした政治家に切腹しろ! | |
……と有権者は要求します。 |
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本当に腹を切って責任をとる人はいませんよ! | |
切腹を求められる人間の罪が軽い事例がほとんどですからね。 | |
罪が軽ければ切腹する必要はありません。 |
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でも私は違う! | |
私は最愛の父親を殺した! 無実の父親を殺した! 「私は無実の父親を殺した」 |
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・・・・・。 | |
私は最悪の問題を起こした。 | |
腹を切って苦しんで死ぬべきだ。 |
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・・・・・。 | |
・・・・・。 | |
女銃鹿は決意を決めたような目で天井を見た。 その視線は気持ち悪いぐらい真っ直ぐだった。 |
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私は! | |
腹を斬ります! 女銃鹿は一人で切腹を決意した。 同時刻。 ホテルの廊下でメスと三号が話をしていた。 「ホテルの廊下」 |
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女銃鹿大丈夫か? 嫌な予感しかしないぞ。 |
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女銃鹿の銃は弾丸が全部抜いてあるから銃の自殺はできないと思うが…… それでも不安だ。 「女銃鹿の銃は弾丸が全部抜いてあった」 |
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もし女銃鹿が自殺したら…… | |
俺は! 俺は! 三号は泣きそうな顔で動揺した。 |
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自殺はしません! 安心して下さい! |
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……ってお姉ちゃん言ってたの! 「お姉ちゃん」 |
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・・・・・。 | |
今までお姉ちゃんが私に嘘をついたことはなかったよ。 | |
・・・・・。 | |
私はお姉ちゃんの言葉を信じるよ! |
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俺も信じる! | |
お姉ちゃんの問題は時間をかけて、ゆっくり解決しようと思うの。 | |
お姉ちゃんが生き続けるなら、なんとかなるよ。 |
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なんとかなるよな! | |
絶対に大丈夫なの! | |
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