第44話 | |
男銃鹿「島乃守が死んでから一週間。あいつは何をして何を感じていたんだ?」 |
女銃鹿(めじゅうか)が島乃守(しまのまもり)を殺害してから7日後。 |
・・・・・。 |
「夜の田んぼ」 夜の11時。 蜻蛉斬り(とんぼきり)と一人のグノーシャが、苗が植わっていない田んぼの中央にいた。 「蜻蛉斬り(とんぼきり)」 「一人のグノーシャ」 |
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ぐぷっ… 介錯を… |
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一人のグノーシャは両ヒザをついて切腹をしていた。 グノーシャの腹は一文字に裂け…… 腹から血があふれ出た。 |
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ジ――――――ッ。 | |
早く介錯を! | |
蜻蛉斬り(とんぼきり)の手には日本刀が握られている。 蜻蛉斬りは切腹の介錯を勤めていた。 |
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早く介錯を! 早く介錯を! |
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切腹したグノーシャは血の涙を流していた。 切腹したグノーシャ生まれた小鹿のように震えていた。 切腹したグノーシャは後ろを振り向き、蜻蛉斬りの顔を凝視した。 |
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見た事がある。 | |
? | |
蜻蛉斬りは静かにつぶやいた。 |
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やはり、この目はどこかで見た。 | |
1563年。 三河で一向一揆がおきた時に見た…気がする。 |
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何を……? | |
切腹したグノーシャは、蜻蛉斬りが何を言っているのか理解できない。 |
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どこで見た? どこで見た? |
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蜻蛉斬り(とんぼきり)は昔を思い出していた。 遠い昔。 1本の槍だった頃の思い出を…… ・・・・・・ ・・・・ ・・ 【三河一向一揆】 1563年 三河。 三河で一向宗による大規模な一揆がおきていた。 「三河」 三河でおきた一向宗の一揆は徳川家康公三大危機の1つと言われ、徳川家康を大いに苦しめた。 |
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行くぞぉぉ! 蜻蛉切! |
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了解。 レッツバスタード。 |
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ここは針崎の大混戦地帯! 「大混戦地帯」 徳川家康の配下、本多忠勝(当時16才)は蜻蛉切(とんぼきり)という槍を使い、一揆衆と戦っていた。 「本多忠勝(ほんだただかつ)」 「蜻蛉切(とんぼきり)」 |
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混戦になりました。 デンジャーデンジャー。 |
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一向専念無量寿仏。 一向専念無量寿仏。 |
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一向専念無量寿仏。 一向専念無量寿仏。 |
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一揆に参加した農民たちは鎌(かま)や鍬(くわ)で武装していた。 農民達が馬上の本多忠勝に襲いかかる。 「馬上の本多忠勝」 |
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はっ! | |
攻撃判定成功! クリティカルヒット! |
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本多忠勝が蜻蛉切で農民をなぎ払う! なぎ払われた4人の農民はキュウリのように輪切りとなりバラバラになった! |
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一向専念無量寿仏。 一向専念無量寿仏。 |
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一向専念無量寿仏。 一向専念無量寿仏。 |
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ゲリラ農民エンカウント。 ゲリラ農民エンカウント。 |
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キリがありません。 家康様のガードを推奨します。 |
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農民たちは文字通り死ぬ気で戦っておるわ! | |
一向宗という宗教が彼らを強くした? | |
奴らはアホなほど純粋だ。 | |
正しい戦いをしておるつもりなのだろう。 死ぬまで正しいことをして、菩薩様の所にいくつもりだ。 |
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あ… ヤバ… |
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なんじゃ? | |
家康様に…… | |
銃弾が2発命中! 「家康様 大ピーンチ!」 |
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なにぃ!! | |
忠勝様は超無傷! でも家康様に銃弾が2発命中! |
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忠勝様は超無傷! でも家康様に銃弾が2発命中! |
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なぜ2度も言う? | |
本気で家康さまをガードしてますか? | |
ちゃんと殿を守ってるよ…… ごにょごにょ…… |
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そうですか失礼しました。 | |
そういえば渡辺守綱(わたなべもりつな)が接近中です。 魅惑の鉄壁ボディで家康さまをガードして下さい。 |
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殿を裏切った渡辺守綱だと? | |
激戦やばい。 混戦やばい。 |
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でも忠勝様は超無傷。 ダメージ0。 イモータル本田(不死身の本田)と呼んでいい? 「イモータル本田」 |
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お主のいってる事がさっぱりわからんわ! | |
本多忠勝が蜻蛉切(とんぼきり)を農民の顔面に投げつけた。 |
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最強の槍スキル投げっぱなしジャべリンが炸裂! | |
農民をオーバーキルしました! 農民は吹き飛び…… 苗を植えていない春の田んぼに落ちた。 |
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ぎひぃぃぃぃ! | |
温かで優しい春の陽気の中、人間は天の下で殺し合いを続ける。 春のツクシも血に染まっていた。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ |
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1563年の出来事。 蜻蛉切(とんぼきり)と言われた私の原風景。 |
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蜻蛉斬りは切腹をしたグノーシャを見下ろしながら、過去を思い出していた。 「夜の田んぼ」 |
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な……なにを……ごぷ…… 早く首をはね…… |
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蜻蛉斬りはいつまでたっても介錯をしない。 切腹をしたグノーシャは焦っていた。 |
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了解。 すぐ楽にする。 |
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蜻蛉斬りは切腹をしたグノーシャが苦しむ姿を確認し…… ゆっくりと日本刀を振りあげた。 刀は月明かりに照らされ鈍く光る。 月明かりが切腹したグノーシャと蜻蛉斬りを明るく照らした。 ・・・・・・ ・・・・ ・・ |
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これで全てが終わる | |
私は死んで詫びなければならない。 |
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きぇああぁぁぁ!! | |
!? | |
切腹したグノーシャの名は女銃鹿! 「切腹したグノーシャの名は女銃鹿」 蜻蛉斬りの刀が… 女銃鹿の首に叩き つけられた! |
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【新宿の高層ビル】 同時刻。 新宿の一等地にある高層ビル。 高層ビルのオフィスで2人のグノーシャが会話をしていた。 「高層ビルのオフィス」 |
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女銃鹿は死んで詫びる道を選んだか。 相変わらず気の早い女だ。 |
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死んでわびる……か…… | |
グノーシャの1人はなゐの神衣。 「なゐの神衣(ないのかむい)」 もう1人は男銃鹿(おじゅうか)と言う名前のグノーシャだった。 男銃鹿は先日ブラジルから帰国したばかりで、詳しい事情を知らない。 「男銃鹿(おじゅうか)」 |
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あまりに早いな。 | |
早い? | |
島乃守が死んでわずか一週間だ。 あまりに早すぎる。 |
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島乃守が死んでから一週間。 あいつは何をして何を感じていたんだ? 「女銃鹿は何をして何を感じていたんだ」 そしてなぜ切腹を選んだ? |
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聞くだけ無駄な話だ。 | |
それでも聞きたいか? |
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聞かせろ。 一応は俺の弟子だ。 |
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手短に話そう。 | |
なゐの神衣は静かに口を開いた。 ・・・・・・・ ・・・・ ・・ そう… あれは… 島乃守が死んだ翌日の出来事だ。 「女銃鹿の自宅」 |
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・・・・・・。 | |
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